アイスホッケー日本代表としても活躍し、日本人として初めてのNHL (National Hockey League)フォワード選手を目指す三浦優希選手が、新しい応援のカタチとして、トークン(暗号通貨)を発行することを発表し、話題を呼んでいる。
トークンを購入すると、様々な特典があり、三浦選手に会えたり、投票企画に参加できたり、今後、三浦選手がさらに活躍しトークンが売れると、トークンの価値があがり、値段が高騰すると、初期からの保有者は売って儲けることもできる。
つい最近では、FCバルセロナからパリ・サンジェルマンへ移籍したサッカー選手、メッシが、ファントークンを発行したことも報じられた。
いったい、トークンとは何で、双方にどういうメリットがあり、何が新しいのだろう。三浦選手の遍歴も聞きながら、なぜトークンを導入したのか伺った。
三浦優希
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1996年生まれ。東京都東大和市出身。プロ選手だった父の影響で3歳からアイスホッケーを始める。高校は早稲田実業学校高等部に入学。高校2年生の時の一時留学がきっかけとなり、その後早実を自主退学してチェコに移住。U20リーグ得点王、シニアチーム試合出場等を経て、アメリカに挑戦。日本人アイスホッケー選手初となる、NCAA D1に所属するレイクスペリア州立大学に入学し、4年生時にはカンファレンス優勝、ナショナルトーナメント出場に貢献。2021年秋より、北米プロリーグへ挑戦。アイスホッケー日本代表としても、世界選手権、平昌五輪最終予選に出場経験あり。
聞き手:米田智彦 文:神田桂一
父親が長野オリンピックの日本代表だった
―― 三浦さんがアイスホッケーを始めたきっかけは何だったんですか?
三浦:父親がプロアイスホッケー選手で西武鉄道のチームでプレーしていたんです。それが一番大きいきっかけです。98年の長野オリンピックでもアイスホッケー日本代表のディフェンスとして活躍しました。だから、僕も物心着く前、3歳くらいの頃にはアイスホッケーを始めていました。
―― 3歳から始められて、小学生ぐらいからクラブチームに入るわけですか?
三浦:そうですね、年長から地元の東大和ジュニアアイスホッケークラブという都内にあるチームに所属させてもらい、そこで小学校・中学校時代を過ごしました。
―― 他の選手と比べて自身の実力はいかがでしたか?
三浦:僕はずば抜けて上手い選手ではなかったと思います。もちろんホッケー人口自体が少ない、東京都内にもチームが少ないなどの理由で、小学生の選抜にはずっと入れさせていただいていて、東京都選抜の選手としても活動させていただいてたんですけど、全国的にずば抜けた選手だったかというと、そうでもなかったと思います。でも、中学校での成績、プレーが評価されて早稲田実業高校のスポーツ推薦で進学しました。
―― 高校時代の成績はいかがでしたか?
三浦:早実自体がホッケー部が強い学校かと言われると、そうでもなくて、部員の半分以上が高校からアイスホッケーを始める選手たちで、部員の2~3割だけが経験者として部に入る、決してホッケーの上達に良い環境というわけではなかったんです。実際に全国大会でもベスト16で負けることが多かったんですけど、一番の転機となったのが高校2年生の時の夏の全国選抜大会で、苫小牧工業という強豪校相手に大金星をあげることが出来て、かつ自分も全得点に絡む活躍することが出来たんです。その後にU22 U20の日本代表でU18から飛び級で、唯一呼んでもらえたきっかけになったので、高校2年生というのは色んな意味でも大きい転機になったのかなと思います。
―― では、いつからプロになる意識が芽生えたんでしょうか?
三浦:プロを目指したいという思いは小さい頃からずっと持っていて、父親がオリンピックに出たことが自分の中ですごく大きいものだったんです。小さい頃から海外に行ってプレーをすることや、オリンピックに出るということはずっと目標にしていました。それがやはり現実的になったのは高校2年生で早実を自主退学し、海外(チェコ)に渡ったタイミングかなという風には思います。
―― NHL(ナショナルホッケーリーグ)を狙おうとは思わなかった?
三浦: NHLでプレー出来た日本人というのが今時点だと、福藤豊さんという日光アイスバックスというチームでプレーされているゴールキーパーの方だけで、フィールドプレーヤーでは日本人は一人もNHL選手が出ていない状態が続いているんです。自分はその歴史を変えたい。今、その夢に向かってチャレンジしている最中です。
チェコからアメリカに渡った年は1年間アメリカのU20リーグでプレーをして、そこで活躍を認めてもらえて、大学からオファーをいただいて進学しました。大学の4年間はものすごく多くの経験をさせていただいて自分の人生の中でも濃い時間でした。それは上手くいったことばかりだけじゃなくてむしろ挫折経験の方が多かった。試合に出られない経験をしたり、ケガをしたり、チームの控え選手の立場を経験したり、逆に主力を経験したり。また4年生の時にはリーグ優勝を達成することが出来て念願の全国大会に出場することが出来たり。
アメリカでの孤独な生活が心を鍛えさせてくれた
――アメリカにひとりで住むということは、メンタル的にホッケーに集中する以前の問題で、結構ハードだと思うんですけど。チェコに留学したことで乗り越えられた、慣れていたということもあるんですか。
三浦:あると思います。海外に出てからの方が明らかに図太くなれました。海外に行くと何が起こるかというと、失敗体験の連続になるので、上手くいかないことが前提になります。そうすると、自分と向き合い、自省することがすごく増えていくんです。それが、心を律するための方法になっているのかなと思います。
――今は大学を経て、日本代表としてプレーされているということなんでしょうか?
三浦:日本代表の選手として世界選手権に行かせていただいたりとか、五輪予選に出場させていただいたこともあります。ずっと代表に入れる選手はいないので、毎回毎回トライアウトで合宿があって選考されてることがあるので、ちょうど7月26日から8月1日まで日本代表候補合宿というのが苫小牧であり、それを終えて今帰って来たところなんです。そこでの評価だったり、シーズンを通しての所属チームでの結果次第で、世界選手権、大体毎年4月、5月頃に行われるんですけど、そこに呼ばれるかどうかが決まります。これから自分が所属するチームでどれぐらい結果を残せるかどうかが評価の対象になります。僕は大学を卒業して無所属の状態で9月中旬頃に北米のプロチームのトライアウト、NHL傘下のチームのトライアウトを受けに行くんですけど、そこをしっかりパスして、そこのチームで継続的に活躍出来るようにすることが、一番求められていることかなと思っています。
僕が活躍すればするほど、トークンの価値があがる
―― 今回のトークン発行というのが、日本のアスリートではまだまだ新しい応援の仕方、取り組みだと思うんですけど、どういった経緯でトークンの発行の流れになったんですか?
三浦:大学を卒業してこれからプロにチャレンジをする段階で、自分の資金を捻出していくということもそうだし、ファンとのつながりをどういった形にしようか、ずっと考えていました。何でFiNANCiEというサービスを利用させていただくことになったかというと、いわゆる既存のクラウドファンディングは、僕が感じていたポイントとして、一つのプロジェクトやイベントが終わった後に、応援してくれた方々との交流、つながりがそのプロジェクトを境に終わってしまうことがあるなと僕は感じていたんです。
僕が実現したかったこととしては応援してくれた人たちと、継続的にコミュニティを築いていきながら自分の成長過程を届けていくことをやりたいとずっと思っていた中で、FiNANCiEというサービスに出会って、トークンを買ってくださった方はそれを保有してくださることでメリットだったり、コミュニティ内に所属していただいて、その中で僕が成長する過程を届けることが出来て、かつ僕がよりこれからもっともっと自分自身の価値が上がっていけば、それを皆さんにお返しすることが出来ると思ったんです。一アスリートとしてトークンを発行するケース自体それまでなかったかなと思ったので、自分は新しいことをやることが好きなので。
―― 例えば三浦さんがもっともっと活躍されて、NHLのどこかのチームに入ってフォワードとかになったらトークンは爆上がりするんでしょうか?
三浦:するかもしれませんね。元々トークンの発行数が限られているので、それを買う人が増えるほど1トークンの価値が上がっていくってことになっているので、自分の名前が世の中に知られれば知られていくほど、それを買ってくださる方が増えて、1トークンの価値が上がっていくことはあるかもしれないです。どういう形になるか分からないですけど、自分としてはやるべきことは変わらないので、自身が上を目指していくというところは変わらずにやっていきたいなとは思っています。
―― アイスホッケー日本代表でもあったりするじゃないですか、NHLも目指すところで、近々の冬季五輪とかもあると思うんですけど、近くの目標というのは定めていますか?
三浦:2022年の冬季オリンピック(北京)は日本男子アイスホッケー代表は予選に負けて参加出来ないので、僕の大きな目標は2026年のイタリアのミラノ・コルティナオリンピックに日本代表として参加することです。2026年ということは2024年頃にオリンピック予選が始まるので、そこに向けた準備を進めていきたいです。今は2021年でこれから1年目のプロ生活が始まるので、その予選を迎えるときには恐らくプロ3年目、4年目になっていると思うので、その段階でNHLもしくはNHL一つ下のリーグで継続的にプレーをするような選手になっていたいと思っています。
―― NHLとかアイスホッケーを五輪に持っていくとか目標があると思うんですけど、改めてFINDERSで記事を読んでくれている読者に、自分の所信表明というか、メッセージを送っていただけないでしょうか?
三浦:僕の所信表明としては、今は色んな発信だったり、トークンというものとか、競技以外の活動もさせていただいてるんですけど、アスリートとしての大きい目標はオリンピックに出ることであり、NHLに行くことなので、競技を続けられているこの期間は夢に向かってひたむきにとにかく、練習を続ける姿勢は崩したくないと思っています。これからも挫折はすると思うんですけど、その度に自分がなぜチャレンジを続けるのか、自分が持ってる夢、尊さというものを思い出してこれからも常に挑戦者として日々を過ごしていけたらと思います。この記事を読んでくださった方がこれを機にアイスホッケーや、僕自身に興味を持っていただけたら嬉しいなという風に思うので、同時に自分がやるべきことを成し遂げてこれからも行きたいなというふうに思っています。