文:岩見旦
2015年、米国シアトルで決済代行会社Gravity Paymentsを経営するダン・プライス氏は、従業員の最低年収を7万ドル(約770万円)にし、自身の110万ドル(約1億2000万円)の年収を90%カットすると発表し、大きな話題を集めた。それから6年後、会社は収益が3倍増加し、従業員数は70%アップ。顧客の数は2倍にアップするなど、急成長を遂げた。
ダン氏は一体なぜ、このような驚くべき施策を実行したのだろうか。先月30日、ダン氏は自身のTwitterにこの大胆な決断を下した経緯を綴った。
女性社員のデスクの上にマクドナルドのスタッフマニュアル
ダン氏は「私は酷いCEOでした」と当時を振り返る。7年前、ダン氏は女性社員のロジータさんのデスクの上に、マクドナルドのスタッフマニュアルが置いてあるのを目にした。ロジータさんは大卒だが、年収は3万ドル(約330万円)。この会社の給料だけでは生活できず、17時に仕事を切り上げた後、17時半から23時までマクドナルドで働く生活を1年半送っていたのだ。
副業がバレて、解雇されると思ったロジータさん。ダン氏は「私は何という社風を作ってしまったのだ。恐ろしいことです」と悔いたという。
ロジータさんはダン氏に、副業を辞めるためには1万ドル(約110万円)の昇給が必要だと伝えた。ダン氏はロジータさんに追加の業務を引き受けるならばと、その昇給を承諾。すると、ロジータさんは粗末なアパートから引っ越し、空いた時間で友人と会うようになった。さらに精神的な健康状態は改善され、仕事のパフォーマンスも向上。その後まもなく、ロジータさんは昇進を果たしたのだ。
このことがきっかけとなり、ダン氏は会社の全体像を考えるように。そして従業員の最低年収を約770万円にアップさせる決断へとつながったのだという。
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