CULTURE | 2021/07/21

デビュー10年目の広瀬すずがアンチや「ゴリ押し」の声に負けない理由【連載】テレビの窓から(9)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

刺激にも逃げ場にもなる姉・アリス

ただ、世間の人々から「女優・広瀬すずの演技はうまい」という声はあまり聞こえてこない。それは天真爛漫に振る舞うCMのイメージがあるからかもしれないが、広瀬すずはその見た目から想像できないほど、感情を爆発させるような激しい演技を得意としている。

たとえばドラマでは、『怪盗 山猫』『anone』『なつぞら』『ネメシス』と代表作のほとんどで重い過去を持つ女性を演じ、時に激しく、時に哀しい姿を演じてきた。同世代の中にドラマでこれほど重い過去を持つ役柄を演じ続けてきた女優はおらず、CMでの天真爛漫なイメージからのギャップもあって、見る人を驚かせられるのが強みだ。

広瀬すずのアンチは、「ゴリ押しではないか」「失言が多く生意気」という先入観にとらわれてしまい、残念ながらまだその凄さに気づけていない。これから年齢を重ねるにつれて、広瀬すずの演技はクリエイターだけでなく、世間の人々にも伝わるようになり、アンチはおのずと減っていくのではないか。

そして最後にもう1つ、広瀬すずの活躍を支える絶対的な武器をあげておきたい。それは姉・広瀬アリスという心強い存在。

一般的には「妹・すずのほうが売れていて、姉・アリスが追いかけている」というイメージの人が多いようだが、これも正しいとは言えない。実際は姉・アリスのほうが先にデビューし、主演を飾り、作品出演を重ねてきたエリートで、出演数と役柄の幅広さは妹・すずをしのいでいる。

姉・アリスも、妹・すずも、ともにトップシーンを走り続けているだけに、互いの刺激にも、逃げ場にもなることも可能。立場的には主演やヒロインの座を争うライバルでもありながら、思い悩んだときは助けられる存在でもあるのだ。たとえば、いざとなれば姉・アリスは妹・すずのアンチを引き受けることだってできるだろう。

作り手から見ても、姉妹女優としてのブランド価値もあり、キャスティング会議などでも、「広瀬すずはどうか? いや、広瀬アリスはどうか?」と名前があがりやすい。トップクリエイターたちが認める資質に加えて、姉・アリスという存在もある広瀬すずの未来は今以上に明るいものになりそうだ。


prev