イラスト:IKUMA
木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎月30本超のコラムを寄稿するほか、テレビ・ウェブ・雑誌などにメディア出演し、制作現場への情報提供もしている。人間関係コンサルタントや著名人専門のインタビュアーとしても活動中。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
トップ女優の登竜門を次々にクリア
今年でデビュー10年目を迎える広瀬すず。ここまで『ミスセブンティーン2012』グランプリ受賞を皮切りに、『第93回全国高校サッカー選手権大会』応援マネージャー、『ゼクシィ』7代目CMガール、『第69回NHK紅白歌合戦』紅組司会など、トップ女優の登竜門を次々にくぐってきた。
女優業でも、是枝裕和監督の映画『海街diary』で新人賞を総なめにしたあと、若手キャストでは異例の三部作映画『ちはやふる』シリーズで主演を務め、ドラマでも『学校のカイダン』(日本テレビ系)、『anone』(日本テレビ系)、朝ドラ『なつぞら』(NHK)、『ネメシス』(日本テレビ系)で主演を務めるなど順風満帆。
主演を務めるだけでなく、『第41回日本アカデミー賞』最優秀助演女優賞を受賞したように、先輩俳優の間に入って演じられる強みもあり、今年も5月公開の映画『いのちの停車場』で吉永小百合との共演を実現させた。
昨年のCM起用社数ランキング1位に輝いたことも含め、まさに文句のつけようのない女優人生を歩んでいるのだが、ネット上に広瀬すず関連の記事が報じられると、アンチたちが批判的なコメントを書き込むのがお約束のようになっている。
これは順調な女優人生に対する「ゴリ押し」というやっかみと、17歳のときに出演したバラエティで立て続けに「失言」した影響と言われているが、23歳の若さでこれほど多くのアンチがいる女優は珍しい。
なぜ広瀬すずは「トップ女優のポジションを保ちながら、粘着質なアンチが多い」という不思議なポジションにいるのだろうか。
きっかけは2014年のCM出演ラッシュ
まずアンチの存在や批判的なコメントについてふれていくと、これには誤解がある。『Yahoo!検索大賞2015 女優部門』に輝いたように広瀬すずは、「急に出てきた」「デビューすぐに売れた」というイメージを持たれ、「ゴリ押し」と言われがちだが、デビューからこの年までは小さな役で着実に経験を積んでいた。
そして2015年の検索大賞につながったのは、2014年のCM出演ラッシュ。『大塚製薬 MATCH』『ロッテ ガーナミルクチョコレート』『ロッテ 小梅』『ソフトバンク』『ゼクシィ』『JR SKISKI』などのCMに出演し、広告関係者の間で評判の存在となった。
当時よく耳にしたのは、「自然体の雰囲気がいい」「カメラが回ると一変する」「天性のタレント性がある」などの大器を思わせる絶賛の声。言わばCM関係者をメロメロにしていたのだが、現在放送されている中では、ノリノリで踊る「AGC」のCMを見れば、それらの声にうなずけるのではないか。
ただ、これだけ出ても短い時間のCMだけでは、「かわいい子がいる」という印象に過ぎなかったのも事実。しかし、2015年の初主演ドラマ『学校のカイダン』から2年の間に、綾瀬はるかや長澤まさみと共演した映画『海街diary』、ヒロインを務めたドラマ『怪盗 山猫』(日本テレビ系)、主演映画の『ちはやふる -上の句-』『同 -下の句-』と『四月は君の嘘』、渡辺謙、妻夫木聡、松山ケンイチ、宮崎あおいらと共演した映画『怒り』と大役が続いたことで一気に女優として羽ばたいた。
つまり、CMでもドラマや映画でも、短期間の出演ラッシュが続き、そこに前述した失言騒動が重なったことで、アンチを抱え込んでしまったのだ。裏を返せば、「アンチを抱え込めるほどの出演ラッシュだった」ということであり、規格外の存在になりはじめた証とも言える。
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