秋田刑務所を出た後、東京に来た理由
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そして、被告人質問。まずは弁護人から。
弁護人「強盗はなぜ犯罪になるんだと思いますか?」
V被告人「脅して威嚇してお金を奪うんですから、当然ですよね」
弁護人「人の物を盗るのはなぜ悪いんでしょう?」
V被告人「自分で稼いだお金じゃないのに勝手に盗るんですから、それは悪いでしょう」
弁護人「脅すのはなぜ悪いんでしょう?」
V被告人「力によって人をねじ伏せるのは悪いと思います」
弁護人「みんながそんなことをやるようになったらどうなりますか?」
V被告人「社会が悪くなります」
事件に関する質問じゃなく、道徳の授業のようななぜ悪いのかという質問です。
そんな事件についての質問。
弁護人「未遂ではありますけど、銀行に対してはどんな被害を与えましたか?」
V被告人「業務を止めてしまったので、業務の妨害をしたと思います」
弁護人「警備員の男性に対しては?」
V被告人「たかがカッターとは言え刃物ですから怖い思いをさせたと思います」
犯人の方から“たかがカッター”とか言っちゃダメでしょう。
弁護人「再犯しないためどうしますか?」
V被告人「生活保護を申請してアパートで暮らしたいと思ってます」
弁護人「それ、前回の裁判でも言ってるみたいなんですよね。前回の約束と何が違うの?」
V被告人「今回はですね、腰のヘルニアが悪化しましたので、生活保護受けるしかないなと」
今回出所したときは申請しなかったけど、次出所した後は腰のヘルニアに誓って生活保護の申請をすると約束です。
続いて、検察官からの質問。
検察官「秋田刑務所を出て東京に来た理由は?」
V被告人「30歳の頃からずっと東京なんで、土地勘があるんです」
検察官「頼れる知人とかアテはあったんですか?」
V被告人「それは無いですね」
検察官「アテもなくて急いでもいないのに新幹線で上京したんでしょ。お金もかかるし、せめて仙台までにしようとは考えなかった?」
と、よくわからない提案。お前は仙台止まりの男だ、ということなんでしょうか。
V被告人「仙台じゃあ土地勘がね…」
と土地勘にこだわるV被告人。
検察官「取り調べで言ってましたけど、東京来て空き巣はやったんですか?」
V被告人「すみません、やろうと思ったんですけど、入らなかったです」
そこは謝罪しなくてもよさそうだけど、盗みはやっていなかったようです。
検察官「役所にも行かず、知り合いもいない。秋田刑務所に入ってるときにね、上京したらいずれ刑務所に戻るって予測できませんでした?」
V被告人「そうなるかなぁって思ってました」
予想通り、思い描いた通りの人生。だったら、もっと前向きで良い方向の生き方を思い描けばいいのに。実現する力があるんだから。
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