2人の人柄と芸風に時代が追いついた
彼らの熱心なファンなら、結成当初のコンビ名が「親不孝」「銭と拳」だったことを知っているのではないか。現在の好感度からは考えられないダークなコンビ名であり、時に「ヤクザとモンスター」にたとえられる見た目の怖さもあって、20代のころは実力以前の問題を抱えていた。
その後30代に入ってようやくチラホラとテレビ出演を果たし、33歳のときに『M-1グランプリ2007』で優勝。「敗者復活からの優勝は史上初」というインパクトは強烈だったが、「小さな事務所に所属」「コワモテの風貌」「トークで前に出る芸風ではない」などの理由から、さほど出演番組は増えなかった。
実際、サンドウィッチマンが全国ネットのゴールデンタイムで放送されている番組にレギュラー出演しはじめたのはここ3年程度に過ぎない。『M-1グランプリ2007』優勝から実に10年超もの時間を要していたのだ。
では、なぜ現在のポジションに登り詰められたのか? 笑いの実力はすでに認められていた以上、最大の理由は「2人の人柄と芸風に時代が追いついてきたから」だろう。2011年に東日本大震災が起きたあと、世間の人々はエンタメや芸能人に「安心」や「癒し」を求める傾向が強くなった。たとえば、仲の良さがにじみ出る嵐が国民的アイドルとなったように、仲良しコンビのサンドウィッチマンにとって追い風になったことは間違いない。
また、彼らが「被災地の宮城県仙台市出身」で「震災発生時に地元番組のロケで気仙沼市にいた」という運命のめぐり合わせと、「継続的な復興支援をしている」という真摯な活動が彼らの好感度を決定づけた。それまで業界関係者も一般の人々も、「芸人の才能と狂気は紙一重」「いい人キャラは芸人として面白くない」という見方をしていたが、サンドウィッチマンの出現以降、「面白いのにいい人」という新たな芸人像が確立されたのだ。言わば、「実力者である上に人格者が、ついに第一人者となった」というイメージではないか。
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