文:滝水瞳
シイタケやヒラタケ、マッシュルームなどを栽培
フランスに拠点を置くスタートアップ企業「Cycloponics」は、首都パリで使用されなくなった地下駐車場を有機キノコ農場に変える画期的な取り組みを行っている。9000平方メートルにも及ぶ巨大農地では、シイタケやヒラタケ、マッシュルームなどのキノコ類や、フランスの珍味「チコリ」といった日光をほとんど必要としない野菜、ミニブロッコリーのような「マイクログリーン」と呼ばれる栄養素の高い幼葉野菜など、バラエティーに富んだ食物を栽培している。
このビジネス構想は、パリ行政が後援するリノベーション計画の一環として始まった。『BBC』によると、1960~70年代に建てられた大規模マンションの多くは地下駐車場があるものの、車の所有者数が年々減少。廃墟と化した地下空間では違法行為が横行しているという。
そこで2010年代半ばにパリ市が立ち上がり、地下空間の再構築計画を発表。同計画は、デザイナーや建築家などの専門家がこの空間に手を加え、飲食や文化が楽しめる市民向けのスペースにリノベーションするというものだ。Cycloponicsは、過去にフランス北東部ストラスブールでの掩蔽(えんぺい)壕を利用した有機栽培の実績などもあり、大都市での計画に参戦。2017年からこのビジネスを行っている。
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