CULTURE | 2021/03/15

「超本気のSDGs対応」に必要なこれだけの難問。ファッション業界の場合【連載】オランダ発スロージャーナリズム(33)

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新型コロナが世界を襲って、丸1年超。筆者も日本に帰国できなくなって1年以上...

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新型コロナが世界を襲って、丸1年超。筆者も日本に帰国できなくなって1年以上が経過しています。偶然か必然か、この間に日本でもすっかり定着しつつあるのが「SDGs」。コロナと同じスピード感で広がったような感じもしています。

今ではウェブの記事でも、オンラインのセミナーでも、雑誌でも、そして情報拡散経路においては、レイトマジョリティになっている感のあるTVでさえも取り上げられるようになり、もうすっかりお馴染みになったかのようです。それどころか、最近ではClubHouseでも連日のようにこの手の話がされています。

ところが、海外、少なくともヨーロッパ、特にサステナブル関連の取り組みが進んでいると言われている北ヨーロッパにおいてはSDGsというワードをあまり聞きません。

そして、最近、弊社に良く持ち込まれる相談が「SDGsが大切なのは分かったのですが、では実際何をすれば良いのでしょうか?」「うちの会社は、何ができるのでしょうか?」という相談です。確かに、SDGsは17の目標と169の個別項目があって包括する範囲も広いし、どこから手をつけていいのかわかりづらい。また、それをビジネスドメインにするとなるとさらに分かりにくい。ところが、北ヨーロッパではここがビジネスの真ん中に置かれて久しいのです。

そこで今回はヨーロッパのサステナブルの現状、特に今回は初めのとっかかりとしてファッションの分野に絞ってお伝えしたいと思います。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

「サステナブルファッション」かどうかを判断する11の質問

さて、みなさんが今、着ている服は、果たしてサステナブルなブランドでしょうか?

う〜ん…ちょっとこれでは質問が漠然としすぎていますよね。では、以下の11の質問に答えられるか試してみてください。

(1)今、あなたが着ている服は、どこで、どうやって、誰によって作られたものですか?

(2)原材料はどこからきて、何が使われていますか?

(3)その原材料はオーガニックでしょうか? 

(4)それとも化学薬品を使用して作られたものでしょうか? 

(5)製造過程において、水はどのくらい使用されたか分かりますか? 

(6)あ、そうそう素材には、プラスチックは使われていませんか? 

(7)もし使われているとしたら、何%使われていますか? 

(8)染色もやっぱり化学薬品が使われているものでしょうか? 

(9)その時の排水はどこで、どうやって行われたか分かりますか? 

(10)その服の原材料はどの国のもので、製造はどこの国で行われて、どんな流通経路を経て日本に来たものでしょうか? 

(11)もしかしたら、あなたが行ったことのない国の原料を使って、行ったことのない国で製造されて、日本に入ってきたかもしれませんね。だとすると、その流通経路において、どのくらいの二酸化炭素が排出されたか分かりますか? 

いかがでしょうか。おそらく、これらの質問にすべて正確に答えられる人はいないはずです。でも、安心して下さい。なぜならその服を着ているみなさんはもちろん、原材料を栽培した人も、服をデザインした人も、縫製した人も、売っている人も、輸送した人も、誰も把握できていないことが大半です。

あ、そういえば、昨年の大晦日に、もう流行りじゃなくなって着なくなった服を、ここぞとばかりバッサリと断捨離した人も多いかと思います。その断捨離された服は、ゴミとして焼却されたんでしょうか? 焼却された後は、どうなったのか? あるいはリサイクルに出した? となると、そのリサイクルに出された服は、どこかで売られていますか? 誰かが買って大事に着てくれていると良いのですが、そもそも流行りじゃなくなってしばらく着てなかったので、リサイクルショップに持っていっても値段はつきませんでしたよね? あの服、気に入ってくれる人がいるといいのですが…。

世界には「古着の墓場」と言われる場所がいくつもあります。中国、中東、東南アジア、アフリカ、南米。もちろん、日本にも山のような古着が溢れかえっています。その数は、もしかしたら本当の山よりも高いのではないか? というほどの量でもあります。

さて、これらがいわゆるファッション業界の日陰にあると言われる問題です。いや、もしかしたら、ここに挙げた以上の問題がまだまだあり、それらをすべて把握している人はいないかもしれません。メーカーサイド、ユーザーサイド、ともに「そもそも情報がオープンになっていない」ということ自体が最大の問題かもしれません。

こうした課題に取り組んでいるのがサステナブルファッションです。もちろん、日本でもだいぶ前からこうした問題に取り組んでいるブランドも数多くあり、エシカルファッションなどと呼ばれています。

完璧なサステナブルファッションブランドはまだない

アムステルダムのデニムブランド「MUD JEANDS」のHPより

おそらく、これらの問題をすべて完璧に解決しているブランドは、世界中で1社も存在していないと思います。それほど超難問なのです。少しずつ、できる範囲でこうした問題解決に取り組んでいるのがヨーロッパの現状で、その過程で「こうした問題が存在する」ということ自体が徐々に知れ渡ってきています。

Pumaはかなり早くから、こうした問題に取り組んでいます。シューズの梱包を無くしてみたり、バイオ染色に取り組んでみたり。ただし彼らは、自分たちのことをサステイブルブランドとは言いません。なぜなら、こうした取り組みはまだまだ道半ばであり、まだ何も実現していないからだ、と言っています。

アムステルダムのMUD JEANDSは、デニムのリサイクルや、サブスクリプションモデルを導入するなどして、新品デニムを購入させないという試みにチャレンジしています。

同じくアムステルダムのgoatは、自らを「ヴィーガンファッション」と称して、動物性の素材を使用しないことはもちろん、徹底的にオーガニックにこだわり、製造スタッフの労働環境の改善にも力を入れています。

goatのHPより

スペイン発のECOALFは、海の廃棄プラスチックゴミから繊維を作り、その繊維で服を作っているサーキュラーファッションブランドで、日本でも三陽商会が取り扱っています。残念ながら、ヨーロッパにおける最大のアピールポイントがあまりきちんとアピールされていないようにも思えるものの、ヨーロッパではとても評価されているブランドです。

ECOALFのHPより

こうして挙げてみるとキリがないのですが、日本での取り組みも紹介したいと思います。

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