M. L. Kunz et al., 2021/American Antiquityより
文:山田山太
学校の授業で習う歴史は、決して揺るがぬ事実であるとつい考えてしまいがちではないだろうか。しかしその実態は正反対であり、多くの研究によって日々歴史は刷新され続けている。
コロンブスは1492年にヨーロッパ大陸からアメリカ大陸に渡った初めての人物として知られているが、最近の研究によって、コロンブスよりも数十年先にアメリカ大陸へと渡った新たな痕跡が発見され、話題となっている。
ヨーロッパ人の知らなかった大陸に上陸していたイタリア製ビーズ
アラスカ大学フェアバンクス校にて考古学の研究を行うマイケル・L・クンツ博士らが考古学誌の『American Antiquity』にて発表した研究によると、アメリカ・アラスカのブルックス山脈にある3つの先史時代の遺跡から、イタリア・ヴェネチアで作られたガラスの「トレード・ビーズ」が発見された。このビーズは、16世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパの貿易商たちの間で使用されたとされる。ただこのビーズ自体は以前にも北米やカリブ海、中央アメリカの東海岸で発見されており、使用された年代は1550年〜1750年の間だった。
ところが今回発見されたトレード・ビーズは、一緒に柳の樹皮と思われる有機物で作られた紐が入っていた。そして、この紐を放射性炭素年代測定と呼ばれる方法で計測した結果、なんと1440年〜1480年の間に使用されたものだということが判明。コロンブスがアメリカにたどり着いた1492年から遡ること数十年前には、イタリアで作られたビーズがヨーロッパ人の知らなかった大陸に上陸していたのだ。
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