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文:山田山太
90年代末期から00年代初頭にかけて、いわゆる「脱法ドラッグ」として流行したマジックマッシュルーム。当時、マジックマッシュルームによる中毒や事故が報道され、日本では2002年に規制対象となった。
ところが、最新の研究によって、そんなマジックマッシュルームに隠された驚きの効力が明らかとなった。
最初の投与から1日以内に効果
ジョンズ・ホプキンス大学、オハイオ州立大学などで教員として勤めるアラン・デイビス博士ら研究チームが12月4日に『JAMA Psychiatry』に発表した研究結果によると、マジックマッシュルームに含まれる、幻覚作用の元ともなる成分「シロシビン」が、うつ病の治療に極めて有効であることがわかった。従来の抗うつ薬と比べ、4倍以上もの効果を発揮するとのことだ。
元々は、シロシビンががん患者のうつ病の不安を和らげる効果があるという、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームによる2016年の研究発表があり、今回の研究では、がん患者ではない一般的なうつ病患者に対しても有効であるか検証した。
今回の研究では、うつ病患者にシロシビンを2日間に分けて投与。およそ11時間の心理療法も受けてもらい、落ち着ける家庭的な環境に置いた。そして目隠しと音楽の流れるヘッドフォンを装着してもらい、できるだけシロシビンによる作用を感じてもらうため、気持ちを自身の内側に向けてもらうように促した。
すると、シロシビンを与えられた参加者は、うつ病が有意に減少。「最初の投与から1日以内に効果が現れ、2回目から1カ月の診察にわたってうつ病レベルが減少した」とデイビス博士は語った。
ピッツバーグ大学医学部精神医学名誉教授のチャールズ・F・レイノルズIII世博士は、今回の研究について、科学的厳密さを持っており注目に値すると『NPR』に語った。「特に慢性的なうつ病を治療するためのアプローチとしてかなり有望だと思う」と評価。その一方で、参加者の薬に対する期待値も影響した可能性があると言及した。昨年には、米国食品医薬品局(FDA)が、レクリエーションドラッグとして知られていた「ケタミン」という麻酔薬を、うつ病の治療に有効な抗うつ薬として承認したという事例もあることから、ケタミンやシロシビンを用いた治療法の出現は、うつ病治療に新たな時代が到来したことを告げるものかもしれない、とレイノルズ博士はつけ加えた。
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