CULTURE | 2020/12/07

お笑い第7世代「どこが面白い?」分かりづらさと本当の評判【連載】テレビの窓から(2)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

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出演ラッシュだからこそ今が正念場

しかし、第7世代はテレビマンや芸能事務所関係者たちも一目置く強みを持っている。

それはSNSやYouTubeなどネット活用のうまさ。彼らはさまざまな動画コンテンツを考え、テレビの枠にとらわれることなく、自分が面白いと思ったものを発信していける積極性がある。

むしろ、「テレビから干されてもこちらで稼いでいけばいい」というスタンスを漂わせていることが差別化となっているのではないか。一方のベテラン・中堅芸人たちは、これがうまくない人が多いだけにアドバンテージとなっている。また、テレビマンたちにとっては「SNSをフル活用して番組を宣伝してもらえる」という目算もあるようだ。

さらに、もう1つ見逃せない強みは、彼らの醸し出す牧歌的なムードが時代にフィットしていること。かつて芸人と言えば、「どちらが面白いか」「どちらの視聴率が高いか」を競うバチバチのライバル関係を押し出し、さまざまな共演NGが噂されるほどだったが、第7世代たちにはそんなムードがまったくない。それどころか、周囲をほめ、ねぎらい、助ける様子を発信している。

不況、事件、天災などの不安にコロナ禍が加わり、閉塞感が増す中、第7世代が醸し出す牧歌的なムードに癒されている同年代は多い。そういう人たちは「面白い」の定義に「いい人であること」が含まれているため、おのずと第7世代を支持していくのだろう。

前述した視聴率調査のリニューアルにともなう若年層重視の制作方針は、『有吉の壁』(日本テレビ系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)のレギュラー放送化につながり、大型ネタ特番も数倍に増えている。

ただ、「活躍の場が広がっている」という2020年の現状は、第7世代にとっての正念場。第7世代というフレーズ自体は一過性のものであり、そう遠くないうちに消えていくはずだ。現在の出演ラッシュは、「単独でベテラン・中堅を凌駕できる若手芸人が一刻も早く現れてほしい」というテレビマンたちの願いによるものであり、彼らが争う気がなくても、争わなければいけないという段階に入っている。


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