EVENT | 2020/12/03

「ビジネスとクリエイティブ」の最適な融合を目指して。クリエイティブスタジオ「Whatever」のつくり方【前編】

「Whatever(なんでも、どんなことでも)」という社名を持つ、気鋭のクリエイター集団をご存知だろうか? その名のごと...

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クリエイティブスタジオに「ビジネスデザイン」が必要なワケ

Whatever Corporate Development Director 井上裕太氏

富永:最近はビジネスを考えたりとか、出資してそこのクリエイティブやテック面をやらせてもらったりすることも増えているので、インベストメントディレクター的な立ち位置で井上裕太も入っています。では、井上裕太とは何者かというところを本人から話してもらいましょう。

井上:元々は経営コンサルタントとしてマッキンゼーという会社にいました。その後も企業の組織変革や経営改革といった仕事をやってきた人間です。直近は、quantumというスタートアップスタジオを立ち上げ、様々な会社と組んで事業をつくり続けてきました。quantumが最終的に博報堂の子会社となったこともあり、少しずつクリエイティブとテクノロジーとビジネスの隣接点で仕事をしだして、その可能性を感じていたこともありWhateverに参加しました。

Whateverが持っているクリエイティブパワーを活かして、例えば新しい事業をつくるであるとか、会社を変革するであるとか、あるいは新しいお金の儲け方を生み出す、といったことをこのメンバーで考えながら仕事を進めています。

川村:クリエイティブとテックとビジネスをつなぐ領域で活動していく上で、我々のようなつくる側のクリエイティブスキルとは少し別の、ビジネス側のクリエイティブスキルをちゃんと持っているメンバーが少なかったので、そういう意味では井上がジョインしてくれて、すごくありがたい。彼の加入によってビジネス面にもちゃんとアイデアを持って取り組めるようになったし、会社自体のかじ取りももちろん一緒にやってくれているし、クリエイティビティとビジネスを新しい方法で繋げたいと思った時に、抜群に活躍してくれている感じです。

彼はGO FundやKESIKI(kesiki.jp)というデザインスタジオなどにも参画しているんですが、うちの会社の面白いのは、そういう複属も全然ウェルカムなところ。優秀なメンバーは、逆にむしろいろいろなところに属して、広くそのパワーを発揮してほしいと思っています。

―― 井上さんはどの部分で仕事をすることが多いんですか?

井上:投資や共同事業のビジネスデザインがメインです。他にもクリエイティブのプロジェクトを仕掛けるタイミングで、どういうビジネスモデルや座組みを組んだら、もっとクリエイティブパワーを活かせるか、世の中にインパクトを生み出せるかを考えるといったこともしています。

一方で、例えば今年リリースしたアプリ「らくがきAR」はビジネスのことを考えずに出したら、すさまじく世の中に広まりました。そうすると、例えば複数の海外企業から提携の話が来たりとか、他にもっとこの体験を広めるための方法はないのかと考えたりと、プロダクトができあがってから考えるケースもあります。

Whateverの独自プロダクト①テレワーカー用部屋着「WFH Jammies」

―― 直近のプロジェクトにはどんなものがあるのでしょうか?

川村:これも自社プロジェクトですが、オンライン会議専用パジャマの「WFH(Work From Home) Jammies」というのをつくりました。zoom越しに見ると、一見真面目なシャツを着ているように見えるんですけど、画面外まで引いて見るとパジャマになっている。これもすごい話題になって、ちょうど第二弾のデザインも発表したところです。

富永:でも、いくら売れても金額的にはたかが知れている。Tシャツで家が建つことはないですし、井上のような人材を切望していたのは、うちの会社は、放っておくとまったく儲からないモノばかりつくるからです(笑)。その代わりにインサイトを形にするのが得意で、WFH Jammies自体もみんなでオンライン飲み会をした時に、うちのデザイナーの奥さんがIT企業に勤めていて、家にいるのにわざわざ着替えて化粧してオンライン会議に出ていて面倒くさそうだしかわいそうだから、パジャマのまま出られないか? というアイデアが出てきて、じゃあつくろうかと言った1週間後にはプロトタイプがもうできていました。

川村:弊社に全身着ぐるみとかをつくってるデザイナーがいて、彼女がプロトタイプを作ってくれたんですが、縫製にもこだわったクオリティの高いものに仕上げようと、知り合いのLOKITHOというブランドのデザイナーの人に声をかけて入ってもらいました。

よく広告賞とかでみるような、1個だけサンプルをつくってバイラルビデオを撮影して「はい終わり!」という世の中への出し方だったらお金も時間もかからなかったんですけど、それだと僕ら的には全然面白くなくて。

誰かの元に届いて誰かに着てもらって役に立つところまで実際に作ってこそこのアイデアは完成すると決めていました。だから真剣にプロダクトのクオリティも上げるし、コスト計算もして、赤字にはならないようなプラスポイントをきめて、それを最終的にクラウドファンディングでゴール達成するようにプロジェクト全体を設計しました。

Whateverの独自プロダクト②ロボットを操作し自宅で美術館を楽しめる「ROBOT VIEWING」

富永:次は、ROBOT VIEWINGを紹介しましょうか。これは、東京藝大美術館の「あるがまま展(あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち) 」という美術展のためにつくりました。美術館がなかなか人を呼び込めないから、何かしら人が来なくても見られるようなシステムをつくれないだろうかという相談を受けて、自走型のロボットを自分でコントロールしながら美術展を見て周れるシステムをつくったんです。

これはDoubleという遠隔地からロボットを操作できる自走型のビデオ会議システムをベースに、美術鑑賞用にソフトウェアとUIを独自に開発したものです。特徴としては、5人まで同時ログインができ、ロボットの操作を交代できたり、乗り物に乗るような感じで、みんなで会話を楽しみながら見て回れる設計になっています。

川村:充電予備含めて4台稼働させていました。

富永:展示自体は、実際に足を運ぶこともできたんですが三密を避けるために人数制限されていたので、そこにロボットも稼働して実際の来客とロボットが一緒に展示を見る展示スタイルになっていました。ロボット同士がすれ違ったり出会うと、すごくエモいんです。「どうも!」みたいな。

こういう仕組み自体は新しくはないんですけど、なかなかロボットと人が共生する社会はすぐには実現しないんですよね。美術館みたいな公共の施設で言うとITリテラシーとか回線の問題で、平等性が保てないといったことが障壁になって通常なら導入できないんですけど、今みたいなある種の非常事態の時は、社会を変革する仕組みがすごく導入しやすいんです。なので、今回の「あるがままのアート」展ではスムーズに物事が進みました。で次も、別の所で導入してみようという動きもあります。それこそ、Whateverのオフィスがある「WHEREVER」の1階のお店「New Stand Tokyo」でも、どうしても遠隔でしかお店には行けないという人向けに、遠隔ショッピングを楽しめるような仕組みを導入予定だったり。

ウェブサイトで簡単に予約できるように設計しているのでいろいろなところでの導入が可能になっています。

川村:このプロジェクトは半分クライアントワーク、半分自主制作みたいな形で実現しました。、運用としては、僕らがロボットをそのまま管理しているので、今後もさまざまなイベントなどでも使っていければ嬉しいなと考えています。

―― すごくイケてると感じますが、儲かるかどうか僕も心配になってきました(笑)。

富永:儲かる仕事もやっているんですけど、むちゃくちゃ心配です。涙腺崩壊します。

一同:(笑)。


後編「外出できないコロナ禍を逆手に取り、世界でバズった珠玉のアイデアたち。」はこちら

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