「共有する価値があることだと思ったんです」
フェリペさんは、自分の行動を誰かに見てほしい、気づいてほしいと期待したわけではなかった。ただ、兄のガブリエルさんは撮影した動画をSNSにアップし、「私は普段投稿することはめったにありません。ただ、これは共有する価値があることだと思ったんです」と綴った。この動画は多くの人の心をとらえ、大きな話題となった。
その後、帰り道に再び駅に戻ってきた際、2人は犬を家に連れて帰ろうと探したが見つからなかったという。野良犬は、きっとフェリペさんのシャツと愛情で温かさを手に入れどこかに行ってしまったのだろう。
フェリペさんはあの時、Tシャツを着せてあげることしかできなかったことを後悔しているが、自分の行動が誰かが困っているときに手を差し伸べるきっかけになってくれたらと、思っているという。「世界を変える方法はありませんが、自分の手の届く物事については変えることができます」とガブリエルさん。
大きなことはできなくても、一人ひとりが身近なところから行動に移していけば、きっと社会全体が優しさに包まれていく。そう思わせてくれるエピソードだ。