CULTURE | 2020/11/12

「ついに時代が来た」千鳥。低視聴率でもオファーが絶えない理由【連載】テレビの窓から(1)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

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ボケとツッコミの境目が薄れはじめた

彼らの笑いから、ここで敢えて「スベリ笑い」をフィーチャーしたのは、「千鳥がさまざまな角度から笑いを生み出せる」ことを伝えたかったから。芸人は「売れ続ける期間が長くなるほど、ボケとツッコミの境目がなくなり、両方がボケでありツッコミのように見える」と言われるが、千鳥はすでにその境地に入っているのではないか。

互いにボケ、ツッコミ、フォローができ、もちろんイジリ合い、スベリ合うこともできる。だから「千鳥が出ている番組は、どんな内容であれ、ハズレは少ない」と言われるのだろう。

では、なぜ千鳥の番組は「1桁台中盤に終わることが多い」と言われるように視聴率が獲れないのか。

その答えは単純で、「リアルタイム視聴のみを対象にした視聴率という指標では、彼らの面白さは測れない」から。最も視聴率が獲れるのは、スポーツのビッグイベントや大晦日の「NHK紅白歌合戦」など、多くの人々が同時に楽しむライブコンテンツと言われている。

その点、ゆるいムードで「見ても見なくてもいい」と思わせる千鳥の番組は真逆のコンテンツ。千鳥の番組が好きな人は、好きなタイミングで、好きなデバイスで、彼らの番組を楽しみ、笑いたいのであって、それはリアルタイム視聴ではなく、録画視聴かネット視聴。そもそも視聴率が獲れるわけがないのだ。

「視聴率をベースにした広告収入」というマネタイズをなかなか変えられないテレビ局にとって千鳥の番組は必ずしも好ましいものではないだろう。それでも視聴率には表れない多くのファンをガッチリつかみ、その中にはスポンサーウケのいい若年層が多いから、キャスティングされているのだ。


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