CULTURE | 2020/11/12

「ついに時代が来た」千鳥。低視聴率でもオファーが絶えない理由【連載】テレビの窓から(1)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

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スタッフも視聴者も楽しい“ノブスベリ” 

「スベリ笑い」と書いたが、それを恐れずに、むしろ自ら「スベった」と言い合えるのも、彼らの強み。レギュラー番組が増え、MCを務めるレベルになると、ボケを吟味したり、あわててセルフフォローしたりなど、スベることを嫌がる芸人が多い中、千鳥はスベることを恐れず、それどころか笑いの手数を増やすために、自らスベリに行くシーンが目立つ。

とりわけ大悟にその傾向があったが、この数年間は「ノブをどうイジってスベらせるか」、ノブ自身も「どうスベりにいくか」を追求することで、さらなるブレイクにつなげた感がある。現在そんな彼らのスタンスはスタッフサイドにも浸透し、なかでもあからさまに活用しているのが「クイズ!THE違和感」。この番組ではノブがMC、大悟が解答者を務めているのだが、ノブイジリ、すなわち“ノブスベリ”が随所に見られる。

ノブはMCとして大悟を筆頭に解答者たちのボケを拾ってツッコんでいるのだが、この番組には本人以外にも、数えきれないほどのノブが登場。有名人にAI技術でノブの顔をかぶせたクイズ「ノブ違和感」、歴史的映像の中に散りばめたノブを数えるクイズ「ノブを探せ」を筆頭に、クイズの合い間に数十人の小人ノブ、「北斗の拳」ケンシロウのコスプレをしたノブ、CGのちびノブくんなどが次々に登場する。

そのたびに爆笑というより失笑が巻き起こり、まさに“ノブスベリ”状態。しかし、「スタッフと視聴者に自分がスベったことを共有してもらい、楽しんでもらおう」という点でノブの懐の深さを感じてしまう。「スベってつまらなかった」で終わらせるのではなく、「スベったことを笑いにつなげられる」芸人は強いし、ノブだけでなく大悟もそれができる。

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