文:佐郷顕
来年に東京パラリンピックを控え、公共機関や交通機関のバリアフリー化が進んでいる。しかし、多くの障害者にとって初めて訪れる街での移動は大きな困難が伴うだろう。
そんな中、目の不自由な人のためのスマート白杖「WeWALK」が注目を集めている。この白杖は、彼らの生活にどのような恩恵を与えてくれるのだろうか。
スマホと連携して必要な情報を教えてくれる魔法の杖
WeWALKは一見普通の白杖のように見えるが、Bluetoothを通じてスマホアプリと接続することで、Googleマップと連動しナビ(道案内)機能や検索機能を利用することができる最先端のプロダクトだ。
入力はタッチパッドの他に音声入力も可能なので、利用者が行きたい場所をWeWALKに向かって話しかければ、内蔵のスピーカーから発せられる音声でその目的地まで案内してくれる。わざわざスマホを取り出して両手を塞いだ状態にならなくて済むのだ。また、近くにあるお店や公共交通機関などの情報についても教えてくれる。
さらに高機能のセンサーを搭載し、歩行の障害物が近づいたときに、バイブレーションで利用者に危険を知らせてくれる機能も搭載しており、目が不自由な人に大きな頼りになる。
「必要は発明の母」58万いいねの反響
このWeWALKを開発したトルコ人エンジニアのクルサット・セイランさんは、トルコの非営利団体ヤング・グールー・アカデミーの代表取締役であり共同創業者のメンバー。セイランさんも目が不自由であり、自身の知識や経験を開発に活かしたという。
「”空飛ぶ車”についてみんなが話し合っている中で、私たちはシンプルな杖を使い続けてきました」と『CNN』の取材で語るセイランさん。「目が不自由だと、地下鉄の駅で降りた時どちらが目的地に近い出口なのかが分からないんです。近づいてくるバスがどこ行きなのかも、周りにあるのが何のお店なのかもわかりません。しかし、WeWALKがそのような問題を解決してくれます」とも。
WeWALKを取り上げた『BoredPanda』の記事は、58万件以上の「いいね」を集め、大きな反響を呼んだ。「素晴らしい商品だ!」「目の不自由な人々の生活を劇的に良くする可能性がある」「必要は発明の母とはこのことだ」など、数多くの感動の声が寄せられている。
商品の価格は499ドル(約5万4000円)。公式サイトから購入でき、スマホアプリはiOSとAndroid共に対応。現時点での対応言語は英語・トルコ語の2言語のみだが、システムはオープンソースであるため、今後は開発者たちによる多言語への対応や新機能の追加などが期待できる。
視覚からの情報を補ってくれる魔法のようなスマート白杖「WeWALK」。日本で普及し、目が不自由な人が移動に困らない社会が来るのもそう遠い話ではないのかもしれない。