EVENT | 2019/07/17

「指紋」や「顔」の次は「行動」で個人を特定する?続々と開発される次世代認証技術の勝者はどれだ

Photo By Shutterstock

いま、認証技術が面白い。思いもよらぬ認証方法が続々と開発されており、群...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo By Shutterstock

いま、認証技術が面白い。思いもよらぬ認証方法が続々と開発されており、群雄割拠時代を迎えているのだ。勝ち残るのはどれか、注目していきたい。

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

誰もが生体認証を当たり前に使う時代に

生体認証対応のATMやスマートフォンの普及で、指紋認証や顔認証、虹彩認証、静脈認証などを誰もが当たり前のように使うようになった。いちいち暗証番号を入力する煩わしさから解放されたと、その便利さを痛感している人も少なくないだろう。

利用時に認証を必要とするサービスやアプリ、機器が増加の一途をたどる中で、使い回しすることを避けねばならない暗証番号やパスワードによる認証方法が、すでに限界に達していたことも生体認証普及の背景にはあった。

その安全性の高さは、高度なセキュリティレベルを求められる金融機関が積極的に導入を進めていることからも分かる。

次世代の認証方法は「行動の傾向」?

生体認証技術は個人識別技術と言い換えることもできる。

現在、スマートフォンなどで広く利用されている「指紋」や「顔」による認証は、長年、犯罪捜査や不審者の警戒などに用いられてきたきた個人の識別方法でもあるのだ。

ということは、その他の犯罪捜査などに用いられている手法が、認証技術として活用されることが期待できるのではないだろうか。そこで、指紋や顔以外の個人の識別法や被疑者を絞り込む手段として利用されている方法を考えてみると……。

テレビの刑事ドラマなどでお馴染みの鑑識・科学捜査で用いられる方法には、遺伝子情報、血液型、声紋、歩き方、行動の傾向などがある。一見、どれもネット上で提供される各種のサービスや機器へのログイン時に利用する個人認証技術としては適しているとは思えないのだが、このうちの1つを認証方法に採用しようと模索するところが出てきた。

それは「行動の傾向」だ。

生体認証には、指紋や瞳の虹彩といった人間の身体的特徴の他に、癖や行動的特徴も含まれる。これを、認証に利用しようというのだ。類似の応用例としては、いつもの購買傾向と異なる買い物をした際にアラートを挙げる、クレジットカードのセキュリティシステムがある。

スマホの行動ログで個人を特定

スマートフォンを利用した人の行動ログから個人を識別する「ライフスタイル認証技術」を、決済サービスに活用するための実証実験を7月1日より開始したのは、三菱UFJニコスと三菱電機インフォメーションシステムズだ。

ライフスタイル認証とは、個人を識別するための知識・所持・身体的特徴に続く第4の手法として、個人の行動データを活用した新しい個人認証技術。2018年8月に、東大と両社を含む4社が開設した「次世代個人認証・行動分析技術社会連携講座」で実用化に向けた研究開発を進めている。スマートフォンにあらかじめインストールした専用アプリで、位置情報やWi-Fi接続状況、サービスの利用履歴などの行動ログ(2〜3週間分)を用いて個人を特定するという。

今回の実験では、セルフレジや無人店舗での決済を想定し、三菱UFJニコス本社ビル内の休憩ラウンジにお菓子の販売ボックスを設置。認証された利用者が近づくと自動的に扉が解錠され、手に取った商品をセンサーで検知する。お菓子を取って扉を閉めると、事前に専用アプリに登録したクレジットカードにて決済が行われるという仕組みだ。

心臓の鼓動から個人を特定する技術も

驚くべきことに、心臓の鼓動から個人を特定する技術も開発されつつあるようだ。同技術を開発しているのは、米国防総省内のテロ対策技術支援室(CTTSO)

「ジェットソン」と呼ばれるその装置は、赤外線レーザーを用いた「レーザー振動測定」を行うことにより、たった30秒で対象者の身元を突き止めることができる。測定した心拍を独自のアルゴリズムによって解析することで実現しているようだ。良好な環境下では、95%以上の精度があるという。

同技術では、対象者が普通の衣服を着た状態で200m離れたところから測定できるとされるが、現状では、相手が静止している必要がある、冬用コートなど厚手の衣類を着ていると測定できないなどの課題もあるようだ。

IoT機器への活用など、その応用範囲は飛躍的に拡大していくことが予想されるだけに、続々と開発される次世代認証技術の勝者がどれになるのか、その動向から目が離せない。

指紋認証など既存技術の改良も

また最近では、Appleが音響指紋技術を使用したディスプレイ内蔵指紋認証センサーの研究開発を本格化させたとの予測も出てきている。

革新的なアプローチだけではなく、既存技術の改良も今後ますます進んでいくことが期待される。