撮影が止まると自粛明け後も混乱が生じる
ユーロスペース内のシアター
―― 新型コロナウイルスの影響で、ミニシアターで上映される多くの洋画の買い付け機会でもあったカンヌ国際映画祭も延期になってしまいました。
北條:それに加えて今、日本映画の撮影がストップして、映画の製作が出来なくなっているんです。中長期的にコロナが収束したとしても、その間に映画の買い付けができず映画館のスクリーンで何をかけていいのか分からない、という状況がこれから起こりうると思うんです。そして配給会社や映画製作会社はこれからどうやって生きていけばいいんだという問題が起こってくる。
今の映画館の休業は映画館単体の問題ではなく、実は映画製作者たちたちや配給会社たちも共に抱えている問題なんです。
―― 今はネット配信でも映画は観られますが、ミニシアターが存在しなければいけない理由はなんだと思いますか?
北條:もしも配信でいいというような映画の作り方が増えていったとしたら……。配信で観る映画の大きさと映画館というスクリーンで映画を観る大きさは違います。パソコン・スマホで観る前提で映画を作れば小さくなってしまうし、小さな映画はお客さんを動かさないんです。
今回、映画館もそうだし、ライブハウス、演劇の劇場、美術館も休業になってしまいましたが、人が集まらないところからは文化は生まれづらいんです。人と一緒に観ればそこから会話が生まれて、顔を見ながら話せば相手の喜びやつまらなさも共有できて、そこから良いものが上澄みとして残っていく、それが文化の発展であり、生き残り方だと思うんです。それが今、この状況で出来なくなっているので、この先どうなっていくのか不安はありますよね。
そして、個人的に思うことなんですが、大作を見て映画監督になりたいと思う人ってそう多くは居ないと思うんです。だからこそミニシアターでかける世界の映画は必要だと思っています。
―― ユーロスペースは、邦画はもちろんですが洋画の製作もやっていますね。
北條:この人(監督)を応援したいなという思いから製作に入っていったんです。まずはその監督のデビュー作を観て、面白ければその作品を買い付けてみる。その監督の次回作が面白かったら2本目も配給をしてみる。そしてその監督が3本目を作るときに製作にも入っていくのが、新しい監督を世に出す方法な気がするんです。レオス・カラックス監督の『ポーラX』の製作に入ったのもそんな付き合いです。日本映画の監督作品の製作に入ったのも同じ思いです。
―― ミニシアターは支配人が作品選びを出来ることから、それぞれの映画館特有の個性が生まれます。ユーロスペースの上映作品へのこだわりはなんですか?
北條:“映画が若いこと”をいつも考えています。名画は他の劇場でも上映していますので。作家性の強いアート系でも“わかりやすく伝えていきたい”ので宣伝や配給の人と、どうすればこの映画がわかりやすく伝えられるかを話し合っています。
あとは“画が強いもの”を選んでいます。観る側が、ずっとある緊張感を求められるような、ちゃんと観ていないと自分が映画に置いていかれてしまうような感覚になる強い映画を上映していきたいです。