江戸時代の殿様と僕たちはどちらが快適か
日本人がテクノロジー不感症だったとしても、実際はテクノロジーによって日本の生活も大きく変化しています。この50年、平均身長と平均寿命はどちらも大きく伸びています。経済成長が止まり「失われた20年」と言われる時代でも、衛生や医療は進化しています。
100年単位だとさらに大きく違います。たとえば、日本に生きているほとんどの人が、江戸時代の殿様より良い栄養状態にあり、長い健康寿命にあります。それはこれまで蓄積されてきたテクノロジーのおかげです。
移動を例にあげると、岡山城には昔の殿様が乗った駕籠が展示されていて、今では誰でもためしに乗ってみることができます。
岡山城に展示されている「大名駕籠」
自分も乗ってみて、サイズを測ってみたのですが、前後が110cm、幅84cmぐらい。ちなみに国際線のエコノミークラスの座席はは前後84cm, 左右50cmぐらいです。3列の高速バスだと前後100cmを超えます。殿様の駕籠はそれより横幅は広いですが、リクライニングもしないしクッションも薄く、上に行くと台形に狭まるし、手すりもなし。乗り心地は飛行機のエコノミークラスと同等か、もっと悪いと思われます。
バスも飛行機も、もちろん駕籠よりは揺れないので、乗り心地はいいでしょう。エンジンなどの内燃機関の他、機体やサスペンションといった機構、椅子の素材やデザイン、道路や運用の仕組みなど、積み重なった多くの発明が、現在の市民の生活を押し上げています。
安心してタクシーに乗れなかった新興国では、UberやDidiのようなシェアライドサービスで、移動が一気に快適になりました。そうした劇的な進歩は、「社会を変えるようなビジネスを成功させた人」とそうでない人の収入格差を広げますが、社会全体がアップデートされたことで、大金持ちになれなかった人も、前より良い暮らしにはなっています。
そういう劇的な進歩に触れる機会の多い新興国では、テクノロジーへの信頼が大きいのは理解できます。