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阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。
卓球日本代表の水谷隼さんを恐喝した大学生
東京オリンピックの開催日まで半年を切ったということもあって、今回はコチラの話を。
罪名 恐喝未遂
H被告人 男子大学生(20)
I被告人 男子大学生(20)
人定質問を終えると、検察官の起訴状の朗読前に、
裁判官「共犯者のプライバシーは明かさないように進行していくと決定してますので」
検察官「はい。“A”と読み換えます」
というやり取り。被害者の名前などを明かさない被害者特定事項の秘匿決定はあるけど、被告人たちの共犯者を秘匿する裁判もあるんですね。なかなか珍しい。
そして、起訴状の内容です。
去年の7月24日午後10時14分、卓球日本代表の水谷隼さんがAとLINEのやりとりをしていることを理由に、H被告人とI被告人がAの交際相手を名乗って、「翌日15時までに連絡がなければ、週刊誌に連絡します。家族もいてお子さんもいるので、載ると思います」と水谷さんにLINEを送信。翌7月25日午前11時28分、水谷さんの代理人に対し、H被告人が電話で「親密な関係についてすぐリークできる立場にある」と伝え、金銭を要求したが、警察への通報により未遂に終わったという内容です。
共犯者は匿名で、被害者は実名という不条理。多分、検察官が法廷で名前を出すか否かと訊いてると思うので、被害者本人の意志かと思います。大きく報じられた事件ってこともあるだろうけど、堂々とした姿勢にスポーツマンシップを感じます。
逮捕当時のニュースではH被告人が否認していると伝えられていましたけど、罪状認否では2人とも罪を認めていました。
週刊文春にリークするぞと300万円を請求
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検察官の冒頭陳述によると、2人は高校の頃から面識はあったが、大学に入って親しくなったという。I被告人は、H被告人からAを紹介されて交際スタート。2018年7月からはI被告人とA は同棲するようになっていたとのこと。
そして、Aは2019年5月に飲食店で働くようになったという。I被告人は、Aから被害者とお店の外で会ったと聞き、有名人なので脅せると考えたらしい。
被害者は調べに対し「5月中旬、Aの接客を受け、LINEの交換をした。7月24日、Aから“私には彼がいて、親しくしているのがバレた”“週刊誌にツテがあって、連絡するって言ってる”というLINEが届いた。その日の夜、Aの彼氏から“明日の15時までに週刊文春の知人に伝える”とLINEが来たので、弁護士に相談した。それで、文春とつながっている人の連絡先を聞くと、H被告人と教えられた。7月30日には黒い車にずっとつけられ、信号無視をしてついてくるので、身の危険を感じ、被害届を出した」と述べているらしい。
代理人である弁護士は調べに「7月25日午前11時28分、H被告人から電話があり、“お金を払ってほしいと思います”と言われた。金額はハッキリ覚えていないが、200~300万円だったと思う。脅迫か恐喝になることも伝えた。さらに被害者とAは関係はなく、仮に関係があったとしても彼氏にそんな権利はないとも伝えた」と述べているとのこと。
一方、加害者は取り調べで何を述べていたのか。Aは「H被告人の紹介で2019年5月から飲食店で働くようになった。そして、H被告人から、口止め料として金をとる方法があると提案された。しかし、相談に乗ってくれたら水谷さんを騙すのはよくないと思って、最初は断っていたが、最終的に承諾した」とのこと。
H被告人は「7月上旬、水谷さんとAのことで相談を受けた。自分は、元アナウンサーの知り合いがいて、週刊文春とつながっていて、7月21日の時点でリークの口止め料を請求する流れになっていた。代理人には示談金300万円と発言した記憶がある」と供述しているそうな。
I被告人は「Aから水谷さんが店に来て、接客したと言われた。その後、店外で会うと言われて面白くないと思っていた。H被告人に相談すると週刊文春とつながりがあると言われ、リークするより金が取れる方がいいと思った」と供述していると。
H被告人が文春砲を匂わせ、口止め料でお金を得ようと思いつき、I被告人とAも話にのったという感じでしょうか。ちなみに、Aの告白記事が掲載されたのは女性セブンでしたけどね。
共犯者は匿名のはずが、裁判中に名前を口走る残念っぷり
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法廷には、H被告人の母親とI被告人の母親が情状証人として出廷。2人ともに今後の監督を約束していました。
そして、被告人質問です。まずはH被告人へ弁護人からの質問。
弁護人「こんなことをしたきっかけは?」
H被告人「Iさんから、Aさんと水谷さんが付き合っているかもしれないと」
弁護人「それを聞いて、Iさんには何て言ったんですか?」
H被告人「Aさんは何度も会ったので、別れればいいんじゃない? 同棲解消したらいいんじゃない?って。よくあるアドバイスって感じでした」
弁護人「Iさんは悩んでたんですか?」
H被告人「ホテルに行ったとか、具体的な話をしてて、それで懲らしめたいと」
どうやら、Aさんは仕事の都合なのかI被告人以外の男性と外で会うことが多かったみたいですね。それで、I被告人は嫉妬していたって感じでしょうか。で、今回の相手は有名人だという話になったと想像できますね。
弁護人「週刊誌の知り合いは本当にいるんですか?」
H被告人「はい。報道関係の知り合いがいます」
弁護人「なんで、水谷さんにお金要求したの?」
H被告人「私がリークを止めるか口止め料を貰うかときいたら、始めは〇〇〇さんも嫌がってたんですけど、どうせならお金になる方がいいという話になって、〇〇〇さんが口止め料…あ!〇〇〇さん…」
と、3回もAの苗字を口走ってしまうH被告人。ずーーっと、Aで統一してたのに。弁護人も焦りながら、
弁護人「Aさんね!」
と注意です。
H被告人「あ、はい、Aさん…」
もう、法廷中が、言っちゃったーって雰囲気。
弁護人「では、水谷さんの代理人との電話の件ですけど、お金に関してどんなことを言われました?」
H被告人「いくら望んでいるのかと。相場がわからなかったので、300万円とかじゃないかと」
弁護人「(I被告人とAと)分配の話は?」
H被告人「してません。そこまで具体的じゃなかったので」
弁護人「振り返って、何がよくなかった?」
H被告人「力になりたいと思い、首を突っ込んでしまったことです」
弁護人「今後再犯しないためにどうしますか?」
H被告人「関係ないトラブルには関わらないようにします」
始めは力になりたいと思ってたみたいですね。
弁護人「今、大学の方は?」
H被告人「復帰させていただいております」
弁護人「お母さんが法廷まで来てくれましたけど、実家に住むんでしょ?遠いですよね」
H被告人「でも通います」
と、退学にはならなかったようで、今は学業一筋だと。
この後、被害者への謝罪と反省の気持ちを述べて質問終了。
次は検察官からの質問です。なんと、いきなり事件とは関係ない衝撃的な第一声から始まったのです。
検察官「弁護人からの質問中、ニヤニヤしてたのはなぜですか?」
え? ニヤついてたの? 傍聴席からは背中しか見えないからなぁ。この返答は次回。