文:岩見旦
周囲の迷惑を顧みないSNS投稿の写真撮影が、世界中で問題になっている。
肥大化した承認欲求は、ついにまともな判断を狂わせる危険な領域に足を踏み入れてしまったようだ。
アウシュビッツ博物館、自撮り観光客に苦言
第二次世界大戦時、ナチスドイツによって100万人以上のユダヤ人などが虐殺された、ポーランドのアウシュビッツ収容所。人類にとって最大の「負の世界遺産」として、毎年200万人もの観光客が足を運んでいる。
この収容所の跡地に立つアウシュビッツ博物館が公式Twitterで20日、観光客に向け異例の忠告を行った。
「アウシュビッツ収容所は100万人以上が殺された場所であることを忘れないでください。彼らの記憶に敬意を払ってください。何十万人が死に至った象徴の場所であり、平均台を学ぶのであればより良い場所があります」
アウシュビッツ収容所では近年、観光客が線路の上でポーズを取って写真を撮影し、InstagramなどのSNSにアップする行為が急増しているという。しかし、この線路はホロコーストで使用され、多くの犠牲者を運んできたものだ。インスタ映えスポットでは決してない。
さらに、同博物館は「難しいことではありません。敬意を払ってください」とツイートした。
アウシュビッツの犠牲者の記憶と尊厳を守る
同博物館の広報は、海外メディアに「私たちの使命はアウシュビッツの犠牲者の記憶と尊厳を守ることです」と答えている。
今月15日には「南京もアウシュビッツも捏造だと思う」と持論を展開した高須クリニックの高須克弥院長に対し、同博物館は「アウシュビッツは世界中の人々の心に絶えず忠告する史実です。ナチス・ドイツによって造られたその強制・絶滅収容所の史跡は、人類史上最大の悲劇を象徴しています」と日本語で訴えたことでも話題にあがった。
終戦から74年が経ち、戦争を経験した生存者が年々減る中、次世代へ戦争の記憶をどのように継承していくのかが課題だ。