EVENT | 2019/05/08

世界最大級のダークウェブサイト「The Wall Street Market」が摘発され閉鎖。サイト運営者や違法薬物の売り手を逮捕

Europolのサイトより
Europol(欧州刑事警察機構:European Police Office)は5月3日...

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Europolのサイトより

Europol(欧州刑事警察機構:European Police Office)は5月3日、米捜査当局などと連携し世界第2位の規模とされるダークウェブ「The Wall Street Market」を摘発・閉鎖したことを発表した。

同サイトの闇市場では、薬物やマルウェア、盗難データ、偽造書類など6万3000件以上の商品が販売されており、115万のアカウントが登録されていたという。

伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

薬物売買やテロなど違法行為の温床となるダークウェブ

ダークウェブとは、「Tor(The Onion Router)」や「I2P(Invisible Internet Project)」などの暗号化技術を用いたネットワーク「ダークネット」を介してのみアクセスできるウェブサイトで、ユーザーの匿名性は階層化暗号化システムによって保証されている。

ユーザー間の通信は高度に暗号化されており、ユーザーは会話やブログ、ファイル共有などを秘密裏に実施できる。そのため、違法取引やテロリストなどの活動にも用いられていることも多く、各国の捜査当局は連携して捜査・摘発に努めていた。

2013年10月にも、当時最大規模のオンライン闇市場として、麻薬売買や殺人依頼など違法行為の温床となっていたダークウェブ「Silk Road」の所有者をFBIが逮捕しサイトを閉鎖している。同サイトは「違法物品のAmazon」と呼ばれることもあった。

Silk Roadの登録ユーザー数は、2013年7月時点で95万7000人以上。951万9664Bitcoinの売上があったとされる。匿名性を保つために、当時から取引にはBitcoinが用いられていた。

捜査当局は検挙のために、おとり捜査を実施し、100件以上の違法物質の購入を行ったという。

FBIが提出した法廷文書によれば、カーネギーメロン大学の研究者の協力を得てTorのクラックに成功し、信頼できるIPアドレスを提出している。しかし、その後もTorを利用したダークネットの利用は続いていることから、Torの秘匿性は現在も保たれているようだ。

約115万人が利用していた「The Wall Street Market」

Europolが5月3日に発表したプレスリリース

今回摘発されたThe Wall Street Marketは世界最大級のダークウェブで、約5400人が売り手として登録し、約115万人が利用していたとされる。取り扱い商品は、薬物やマルウェア、盗難データ、偽造書類など6万3000件以上。サイト運営者は、取引額の2〜6%をサイト利用料として徴収していたようだ。

捜査当局が逮捕したのは5名。うち3名はサイトの運営に関わっていた容疑でドイツ当局が、2名は大量の薬物を販売した容疑で米当局が逮捕している。

The Next Webによれば、摘発時には55万ユーロを超える現金のほか、多額の仮想通貨(BitcoinやMonero)、車両、コンピュータなどが押収された模様だ。

世界最大級のダークウェブの閉鎖という大きな成果を挙げた今回の摘発だが、実際に逮捕された違法取引の実行者は2名のみ。改めて匿名化ネットワーク上の違法行為を取り締まることの難しさが露呈したともいえるだろう。

違法物品のやり取りだけでなく、独裁政権からの言論弾圧や監視社会化などに対抗する「自由」を守る仕組みとしての側面もある匿名化ネットワーク。各国の捜査機関が進めるダークウェブ撲滅への動きは、自由の砦としての匿名性の終焉にも繋がるだけに、「犯罪抑止になるから良い」というのは一面的な見方にすぎない。悩ましい問題だ。