CULTURE | 2024/11/13

35歳以下の若手料理人478名の頂点が決定!
日本最大級の料理コンペティション「RED U-35 2024」
緊張の舞台裏を取材

ファイナリストであるゴールドエッグ5名が「自分らしさ」を表現する一皿を作り、審査員による試食審査を実施

取材・文:カトウワタル(FINDERS編集部)

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新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティション

RED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM U-35) 実行委員会は、35歳以下の若手料理人の発掘・応援を目的とした料理人コンペティション「RED U-35 2024」(主催:RED U-35実行委員会、株式会社ぐるなび) の最終審査会ならびに受賞セレモニーを2024年11月5日(火)に開催した。

本コンペティションの経過は、これまでFINDERSでも何度かお伝えしてきたが、このたび編集部の加藤が最終審査会、受賞セレモニーを取材、虎ノ門のSocial Kitchen TORANOMON・unisでの最終審査会、青山BAROOMでの受賞セレモニーの様子をお届けしたい。

今一度紹介しておくと、「RED U-35」とは、夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を発掘し、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催している料理人コンペティションで、放送作家の小山薫堂が総合プロデューサーを務め2013年よりスタートし、本年で11回目の開催となる。

本年度の審査員は、食プロデューサー・コンサルタントの狐野扶実子が引き続き審査員長を務めるほか、 Wakiya一笑美茶樓オーナーシェフの脇屋友詞、villa aidaオーナーシェフの小林寛司を新たに迎えた体制となっている。また今大会には478名の応募があり、まさに日本最大級の料理人コンペティションとして開催される。尚、グランプリには500万円の賞金が贈られるほか、各賞が設けられている。

緊張感MAXの最終審査

最終審査は、最終選考に進んだゴールドエッグ5名が順に登場し一人ずつ行われた。キッチンでの50分間の調理の後、5分間で審査室へ移動、審査員の目の前で30分間をかけて仕上げ、20分間の試食審査という合計105分間の流れだ。

錚々たる顔ぶれの揃う審査室

特に料理界の重鎮とも言える審査員の面々を前にして調理を行う仕上げの30分間と試食の20分間の緊張感は、想像するだけでも恐ろしい。実際、最終審査に登場したゴールドエッグ全員が極度の緊張感を隠しきれない様子だった。

瑠璃庵 Ruri-AN (熊本県熊本市) 料理長 丸山 祥広

最初に登場したのは、熊本県熊本市の和食 「瑠璃庵 Ruri-AN」 で料理長を務める丸山祥広 (まるやま よしひろ)。

丸山 祥広

丸山は最初に各審査員の前に自身も緊張を和らげるために香りを嗅いだというレモンマートルの葉を置き、「自分がトップバッターで皆さんに最初に食べていただくので、食欲増進につながれば…」 と話した。そんな丸山の料理は、地元熊本の郷土料理から 「からしれんこん」 をモチーフにした野菜料理。同世代の生産者たちが育てた野菜を主役に自然を感じ取って欲しいという思いを 「クマモトドッグ」 という名に込めた。

丸山 祥広 「クマモトドッグ(くまもとどっぐ)」

cenci (京都府京都市) 料理人 中川 寛大

中川 寛大

続いて登場したのは、京都府京都市の日本料理 「cenci」 の料理人 中川寛大。審査室で黙々と準備する姿が印象的だった。審査員からの質問に対し、「自分の料理は日本料理というジャンルでくくる料理ではない。」 という中川が調理したのは、琵琶湖産の本モロコを使った二種類の料理からなる「Futuro 〜繋ぐ〜(ふとぅーろ 〜つなぐ〜)」。素材をそのまま楽しめる料理と、普段からよく使っているというチーズをといった構成。

中川 寛大 「Futuro 〜繋ぐ〜(ふとぅーろ 〜つなぐ〜)」

 INA Restaurant (奈良県宇陀市) オーナーシェフ 中村 侑矢

3人目に登場したのは、今回のゴールドエッグの中では29歳と最年少となる奈良県宇陀市の 「INA Restaurant」 のオーナーシェフ中村侑矢。

中村 侑矢

中村の料理は地元奈良の魅力を伝えるために、大和野菜や地鶏など、奈良の食材を使用した「⼤和蒸し (やまとむし)」。奈良の薬膳にも使われる 「大和当帰」 を使った当帰釜に盛り付けるものだ。個人的には審査会場内でもっとも香りを感じられる料理だった。 総合プロデューサーの小山薫堂が 「もっと食べたい。」 と感想をこぼしていたのが印象的だった。

中村 侑矢「⼤和蒸し(やまとむし)」

赤坂 菊乃井 (東京都) 副料理長 町田 亮治

続いて登場したのが、今回で二度目のファイナリストとなった赤坂 菊乃井で副料理長を務める町田亮治。「この時期が一番美味しい」 というハモを見事な包丁捌きを披露しながら調理を進めた。

町田 亮治

審査員とのやりとりの中で町田は、「日本が世界にアピールできる“食”を守っていくために絶対にサボっちゃいけない。」と強く語った。そんな町田の料理名は「繋ぐ愛 未来へ (つなぐ あい みらいへ)」。さすが16年という経験と確かな技術で見事な出来映えだった。

町田 亮治  「繋ぐ愛 未来へ (つなぐ あい みらいへ)」

La Credenza (イタリア トリノ) 料理人 加藤 正寛

最後に登場したのが、今回のゴールドエッグ5名中4名が日本料理のところ唯一のイタリア料理、しかも普段は本国イタリアのLa Credenzaで働いており、今回RED U-35のために2週間の休みを取って来日したという加藤正寛。

加藤 正寛

料理人になる前は食品メーカーの営業職として4年間働いていたといい、料理人となった今でもその4年間も無駄ではなかったという意味を込めた料理名 「人生に無駄はない (じんせいにむだはない)」 を作り上げた。食材については、営業職として務めていた四国の食材を使い、スプーンの上に載せた料理を審査員に同時に口に運んでもらい、口の中を実況しながら料理の説明をするというユニークなスタイルを取った。

加藤 正寛 「人生に無駄はない(じんせいにむだはない)」

こうして5名のゴールドエッグ、ファイナリストたちによる熱気溢れる審査会は終了となった。

料理人コンペティションということで、料理の味はもちろん重要だが、審査員の脇屋友詞がリクエストしていたように、審査室全体を自らのステージとして、客 (審査員) と一体となるような雰囲気づくりも非常に重要であるように見受けられた。また今回審査室での仕上げでは、辻調理師専門学校の学生たちがアシスタントとして起用されていて、彼らへの指示の出し方やふるまいなどにも個性や日頃の仕事ぶりが映し出されているようにも思えた。

イタリア料理から初の“レッドエッグ”が誕生!

最終審査会終了後は、会場を東京・青山のBAROOMに移し受賞セレモニーが行われた。オープニングではフラメンコギターデュオ 徳永兄弟がパフォーマンスを披露し、華やかな雰囲気での幕開けとなり各賞の発表が行われた。

そして今回「RED U-35 2024」 478名の頂点、グランプリである「レッドエッグ」には、加藤正寛(イタリア料理「La Credenza」イタリア)が選ばれた。イタリア料理から「レッドエッグ」が誕生したのは11回目にして初となった。

見事 「レッドエッグ」 に輝いた加藤正寛

この結果を受け、審査員長を務めた狐野扶実子は、「最終審査では、皆さん素晴らしい結果を出していただき、なかなか一人に決められないような大変な審査でしたが、加藤さんご自身の “自分らしさ” を遺憾なく発揮してもらえました。」 と講評を述べた。

レッドエッグを受賞した加藤正寛も以下のようなコメントを残した。

「自分の中では最終審査を終えてもまだ課題があり、次に向けて頑張りたいと思っていたところです。レッドエッグを目指していましたが、受賞できたことに驚いています。今回の一番の勝因は、自分だけのオリジナルな経験とストーリーを皆さまに伝えることができたことだと思います。
今回の大会に向けて多くの方々が準備をしてくださり、また審査員の皆さまもご多忙な中、審査をしていただいたことに感謝しています。」

また、準グランプリには、中村侑矢(日本料理 「INA restaurant」 奈良県)が選ばれた。準グランプリ発表に際し、悔しそうな表情を浮かべていた中村だが、「審査を終えてやりきったと感じており、まったく後悔は無いです。今回準グランプリに選んでいただいたことだけで終わらせずに、ここで得た経験を活かして、今後はもっと広い世界で活躍できるような料理人を目指して精進してまいります。」 とコメントを残しつつ、早くも来年への意欲を見せていた。

その他受賞セレモニーでは、RED U-35発起人である故・岸朝子が食生活ジャーナリストとして日本の食の発展に寄与された功績を讃え最上位の女性料理人に贈る「岸朝子賞」に、デザート 「BAMBAKUN」のシェフ 高江洲悠紀が、同じくRED U-35の発起人で株式会社ぐるなび取締役会長・創業者の滝久雄が、料理人としての領域を超えた活躍や、これからの食の発展へ貢献することを期待して贈る「滝久雄賞」が、料理教室「シェフクリエイト横浜スタジオ」の辻岡靖明に贈られた。

審査員長総評:狐野扶実子 食プロデューサー・コンサルタント

今回の大会では「自分らしさ」をテーマとしましたが、どれひとつとして同じものはなく、ひとつひとつ本当に尊くて豊かだなと思いながら、審査員一同大変興味深く作品を拝見させていただきました。最終的には一人を選ばないといけないので、「自分らしさ」をどのように料理に反映させたのかをポイントに評価させていただきました。

総じて言えることは、個性的な料理が増えたこと、また皆さんが自由に表現されているなと感じました。今までの環境、生い立ち、経験は大切な「自分らしさ」のひとつですが、それに縛られすぎるのではなく、培ってきたものを土台に、これからの未来に向かって新しい挑戦に怖じけずに、「自分らしさ」にさらなる磨きをかけてほしいと思います。

最後に、総合プロデューサーの小山薫堂から、来年度の「RED U-35 2025」のファイナルが「大阪・関西万博」で開催されること、そして4年連続で審査員長を務める狐野扶実子をはじめ、新たな審査員団も発表された。

来年の万博後、「レッドエッグ」受賞者が世界からどのような注目を浴びるのか、今から楽しみでしかない。


RED U-35 2024 公式サイト
https://www.redu35.jp/