©2019 Looking Glass Factory
取材・文:6PAC
米国でのクラウドファンディングで、支援者の30%が日本人
Looking Glass Factory社の社員たち。今回話を聞かせてくれたNikki Chan氏は3列目、右から2番目の女性。
©2019 Looking Glass Factory
2018年にアメリカの大手クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で、1億円近い資金調達に成功したホログラムディスプレイが「Looking Glass」だ。今年2月には日本の大手クラウドファンディングサイト「Makuake」でもプロジェクトをスタートさせ、500万円の目標金額に対し、記事執筆時点で約3800万円もの金額を集めることに成功している。
Looking Glassは、VR/ARでよく用いられるヘッドセット無しに、3Dの動画・静止画を複数人で同時に見ることができるホログラムディスプレイ。Kickstarterのプロジェクトでも、支援者の30%が日本人だったという。日本からの支援者が多かったことに対し、「興奮はしましたが、それほど驚きではありませんでした。日本のクリエイターさんたちは3Dディスプレイのファンが多いことを知っていましたし、VRやARテクノロジーに関する大規模な開発者コミュニティが存在していることも知っていましたから」と語るのは、今回話を聞かせてくれたLooking Glass Factory社(以下、LGF社)プロダクトマネージャーのNikki Chan氏だ。
日本人コミュニティの層の厚さに衝撃を受けて来日
©2019 Looking Glass Factory
Kickstarterでのプロジェクトを開始した際、日本からの支援もある程度期待していたそうだが、支援者の30%を占めるほどになることは想定していなかったそうだ。それ以上に驚かされたのは、「日本のLooking Glassクリエイターコミュニティーから、Twitterを中心に出てくるコンテンツの量」だとして、公式アカウントによるモーメントも作成した。Looking GlassクラブというグループがLGF社のサポート無しに、独自で大きなイベントを2回も開催したことには、さらに驚かされたとChan氏は語る。
2月に東京で開催された勉強会には、LGF社CEOのShawn Frayne氏およびビジネス開発担当VP(ヴァイスプレジデント)のNitin Bhargava氏が、本社のあるブルックリンから参加した。また3月に東京で初めて開催されたハッカソンでは、40人のクリエイターが集まり、36時間で四季をテーマにした8つのプロジェクトを制作した。この成果は、「私たちの想像を遥かに超えていました」とChan氏は言う。さらにLooking GlassのワードでTwitter内検索をかけると、イベントの無い時期でも続々と新たな作品が投稿されていることがわかる。
Kickstarterに加えて、Makuakeでプロジェクトをスタートさせた目的は、製品開発のための資金調達ではなかったそうだ。「最適なパートナーと共に日本市場にインパクトを与えること」が一番の目的だったと話す。結果として、クリエイターコミュニティへのアクセスが可能となった。日本語を話せる同社のコミュニティサポート担当者が、プロジェクト開始時点からあらゆるレベルで連絡を取り合っているという。Makuakeでは、目標額の7倍以上となる資金調達に成功したわけだが、そのほとんどは日本のコミュニティをサポートするために使う予定だ。
日本のクリエイターたちに何を期待しているかと問うと、「ありとあらゆるクレイジーなもの!」と興奮気味に話すChan氏。「日本の人達はとりわけ、ソフトウエアロボット(定型的な事務作業を自動化できるAI)を作ることと、Looking Glassでコミュニケーションがとれるキャラクターを作ることに、一番興味・関心があるのではと予測しています」とのこと。
単に眺めてるだけじゃない!広がる無限の可能性
日本人クリエイターたちに対する同社の期待を良い意味で裏切ったのが、StereoPhoto Makerの開発で知られる日本人クリエイター、Masuji Suto(須藤益司)氏だ。Suto氏は、LGF社が提供する、3Dコンテンツを制作するためのholoplay.js(three.js)ライブラリを使って、コンテンツをLooking Glassに無料で送信できるウェブアプリケーションを作成した。
LGF社の社員たちを驚かせたのは、Suto氏(および協力クリエイターたち)が、「LGF社の提供するHoloPlay Unity SDKを使わずにLooking Glassへコンテンツを送る革新的な方法を見つけ出していること」だという。同氏によれば、「これはLooking Glassを動かすのに、パワフルなコンピューターが不要となるかもしれないところまで近づいている」という意味だそうだ。ライブビデオの録画やウェブ上の会話にも、このフォーマットが使える可能性があるためか、「可能性は本当に無限大です」と興奮を隠しきれない。
ここまで紹介してきたクリエイターたちの作品を見てもわかる通り、単にディスプレイに人物やキャラクターを表示させるだけでなく、本体を傾けるとディスプレイ内のアイテムも一緒に傾いたり、モーションセンサーとの連携でキャラクターに触れられたりと、インタラクティブな楽しみ方も今後増えてきそうだ。