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「作業着は支給されるのになぜスーツは支給されない?」大ヒットしたワークウェアスーツ、サブスク開始の狙いを社長が語る
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  • 2019.01.17
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「作業着は支給されるのになぜスーツは支給されない?」大ヒットしたワークウェアスーツ、サブスク開始の狙いを社長が語る

取材・文:6PAC

AOKIの「suitsbox」撤退発表後にサブスク参入を表明

ここ1~2年で、サブスクリプションモデル(以下、サブスク)と呼ばれる定額制サービスに関係する記事が、経済紙の紙面を飾る機会が増えた気がする。NetflixやSpotifyといったコンテンツ配信を筆頭に、飲食、ファッション、コスメ、教育、自動車とさまざまなジャンルで競うようにサブスクの新サービスが立ちあがってきている。

会社を経営したことがある人や、ビジネスモデルを構築する仕事をしている人ならば、サブスクの利点はすぐにピンとくるであろう。電気、ガス、水道、携帯電話のようなインフラビジネスのように毎月安定した収益が望めるというメリットがある。同時に、消費者サイドからしても必要な時にその都度商品やサービスを購入するより、価格的にお得であったり、ショップで購入する手間が省けて利便性が高いというメリットがある。

現代は高度成長期やバブル期の日本のように所有することに価値を見出す時代ではなく、共有することや体験することに価値を見出す時代になった。サブスクが台頭してきた背景には、こうした時代の変化に合わせなくてならない企業側の都合と、消費者側のニーズが上手く噛み合った結果ではなかろうか。

時代の変化と言えば、サラリーマンが仕事をする時の服装にもかなり変化が起きた。カジュアルな私服で勤務OKの会社が増えたことで、ビジネス用のスーツに対する需要が激減したと言われている。昨年、紳士服大手のスーツ事業が大苦戦しているというニュースを耳にした人も多いのではないか。そうした苦境を打破するためか、昨年はスーツのサブスクが始まった年でもあった。AOKIが4月に「suitsbox(スーツボックス)」を開始し、レナウンも7月に「着ルダケ」で追随した。しかし、11月には早くもAOKIが「suitsbox」からの撤退を発表するという波乱の結末となった。

年の瀬も迫った昨年12月上旬、筆者のもとにあるプレスリリースが送られてきた。送り主は株式会社オアシススタイルウェアの広報担当者。オアシススタイルウェアと言えば、スーツにしか見えない作業着「ワークウェアスーツ」がネットでバズり、知名度が上がった会社だ。今回、ワークウェアスーツの月額定額レンタルサービスを開始するという。AOKIが「suitsbox」からの撤退を発表した直後だけに「なぜ?」という疑問が頭をよぎった。

色々と聞きたいことがあったので、早速同社代表取締役の中村有沙氏に直球を投げ込んでみた。

サブスクの目的は「法人の導入ハードルを下げるため」

なぜワークウェアスーツのサブスクを始めるのか訊ねると、「現在、ワークウェアスーツは全国100社超の企業様にユニフォームとして導入いただいています。ただ、導入の際、“トライアルとして安価に導入したい”、“人員の入れ替わりがあるため注文数の決定が難しい”という声を多くいただいていました。ワークウェアスーツは2018年3月の販売開始以降、おかげさまで多くのメディアで取り上げていただいていますが、現状はまだまだ認知度と導入数を拡大していくフェーズです。まずは興味を持っていただいた企業様に気軽に導入いただくため、導入の際の一つの選択肢として、今回の月額定額レンタルサービスを開始しました」という答えが返ってきた。

定額レンタルサービスの概要。購入する場合はメンズのジャケットが1着1万6,000円(税抜)から、パンツが1万2,000円からなので、導入コストを大幅に下げられる。

ワークウェアスーツのサブスクは、個人ではなく法人を対象としている理由については、「これまでご購入いただいたお客様にヒアリングをしたところ、個人・法人ともに、実際に仕事着として何日か着ていただくと製品の良さをわかっていただけるようで、“こんなに良いと思わなかった”、“購入時の想定以上に気に入っている”というお声を多くいただいています。一方で、試着だけではデザイン性や着心地の良さ・動きやすさ、毎日洗える心地よさなどが伝わりづらいことが課題として挙がっていました。この課題に対し、個人のお客様には“30日間完全返品保証”として、何度着ても汚れてもどんな理由でも返品OKのサービスを提供しています。お客様はしばらく着て過ごしていただいた上で、気に入らなければどんな理由でも返品することができます。法人のお客様にも、より気軽に導入できるサービスを提供したいと考えて始めたのが当サービスです」とのことで、法人客に対する入口のハードルを下げる手段としての側面があることも伺える。同時に、ワークウェアスーツ販売開始当初は法人向けをメインと想定していたものの、蓋を開けてみれば個人向けの売上が法人向けの売上の1.5倍となっていることから、法人向けの販売をもう少しテコ入れしたいという本音も見えてくる。それでも売上そのものは当初目標の5倍以上と好調なわけだが。

「営業職のスーツはなぜ会社から支給されないのか」

オアシススタイルウェア代表取締役の中村有沙氏

プレスリリースに記載されていた「自前のスーツで働く営業などのオフィスワーカーでもユニフォームでなら非課税の支給となるため、幅広い業種にお使いいただけます。また、技術員や営業が混同する会社では、作業員にはユニフォームが支給されるのに、営業のスーツは自前で割に合わないという問題への解決策にもなります」という文言は競合との差別化を特別意識したものではないそうだ。

中村氏いわく、「私たちがこのような状況にあったというのが大きいです。弊社はグループに水道工事事業を手がける会社があり、営業から施工まで行っています。以前社内で“作業着は会社から支給されるのに、スーツは自前で不公平だ”という意見があったことが、技術職・営業職問わず支給できるスーツ型作業着を開発したきっかけでした。以前の弊社と同様の問題が生じている会社が他にもあるのではないかと考え、プレスリリースに記載しました」とのこと。

レナウンの「着ルダケ」は一定の契約期間の縛りがあるが、ワークウェアスーツは1カ月単位で解約可能で、レンタルしたウェアを買い取ることもでき、利用期間に応じた割引もある。競合と比較した際の優位性については、「そもそも“作業着”として想定している製品なので、スーツのサブスクサービスが直接競合になるとは考えていません。それでも契約解除に関する期間の縛りがない点は大きな違いです。製品に自信があるからこそ、最短契約期間の縛りを設けていません。一度試していただければ製品の良さをわかっていただけると考えています」という。

ワークウェアスーツのサブスクは、業種・規模問わず今期100社での導入を目標としている。また、ワークウェアスーツのデザイナーズモデルであり、よりビジネスシーンやオフィスワークにマッチしたデザインの「YZO(ワイゾー)」ブランドの製品もレンタル対象となっているため、営業職へのスーツ支給という新たな需要を掘り起こすことも期待しているという。

サブスクはあくまで選択肢の一つ

昨年11月から販売を開始した新ライン「YZO」。ワークウェアスーツの機能性はそのまま、プライベートでもカジュアルに着こなせる高いデザイン性を実現している。

AOKIが「suitsbox」から撤退した背景には、20~30代男性をターゲットとしていたものの、実際の利用者は40代で、結果的にこれまでスーツを購入していた層がサブスクに移行し需要を食い合ってしまったためだと伝えられている。ワークウェアスーツがサブスク事業から撤退せずに継続できるであろうと確信している根拠はどこにあるのかと訊ねると、「これまでワークウェアスーツ導入に至らなかったお客様にヒアリングをした結果、当サービスが生まれています。加えて、弊社としては“購入”でも“月額レンタル”でも、お客様ごとに導入しやすい方法を選んでいただければ構わないと考えています。ワークウェアスーツをご購入いただいたお客様が、月額レンタルに移行しても構わないということです。どのような形であっても、一度試していただければ製品の良さを感じていただけて継続的にご使用いただける自信があるため、このように考えています」と、製品に対する圧倒的な自信に満ちた答えが返ってきた。

旧態依然としたビジネスを象徴するような“スーツ”という領域は行き詰っているのかもしれないが、ワークマンの業績好調を支えるような「値ごろ感ある高機能ウェア」という領域はまだまだ開拓の余地はありそうだ。その意味では、ワークウェアスーツはスーツにも作業着にもなる“高機能ビジネスウェア”というポジショニングに成功しているのかもしれない。


ワークウェアスーツ

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