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昔ガイナックス、今は奈良で「ホトケ女子」なフリーランサー、安達えみ氏|幸せに生きるためのおカネと働き方のリアル
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  • 2018.12.19
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昔ガイナックス、今は奈良で「ホトケ女子」なフリーランサー、安達えみ氏|幸せに生きるためのおカネと働き方のリアル

毎年3月1日から14日まで東大寺の二月堂で行われる伝統行事「修二会(しゅにえ)」で用いられる、巨大な「お松明」と一緒に。
(C) Emi Adachi

日本のメディアは何事も十把一絡げにくくったレッテルを貼るのが大好きだ。片方の親が日本人のタレントはおしなべて“ハーフタレント”にひとまとめにされ、男性であれば“〇〇系男子”でカテゴリー分けされてしまう。〇〇女子や〇〇ガールといった呼称も良く耳にする。

巷にはさまざまな〇〇女子や〇〇ガールが溢れかえっているが、“ホトケ女子”なる呼称を聞いたことがある方はどれほどいるだろうか。「エヴァンゲリオン」を産んだアニメ制作会社ガイナックスでのキャリアを捨て、お寺や仏像が好きすぎて奈良に移住し、フリーランスという立場でさまざまな活動を展開している“ホトケ女子”が今回の取材対象となった安達えみ氏だ。

「他にも名乗られている方がいらっしゃるかわかりませんが、“ホトケ女子”は芸名とか活動名だと思っています」という同氏に色々と訊いてみた。

取材・文:6PAC

安達えみ

東京造形大学卒業後、株式会社ガイナックスの代表的アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」すら観たことがないにもかかわらず同社に入社。2014年、諸事情により同社を退社し、奈良へと移住。大好きな仏像や奈良をPRするため、「塗仏観光商店」という屋号でフリーランスとして活動中。現在、デザイナー、イラストレーター、イベントプランナー、ガイド、ホトケ女子と多用な肩書を持ち、”肩書が多い人というのは総じて怪しい人”という定説通りになりつつある。
塗仏観光商店公式サイト
http://nuribotokeshoten.tumblr.com/

「好きな場所で暮らしたい」というシンプルな理由から奈良へと移住

安達えみ氏

「(東京で勤めていた)ガイナックスとは今でも仲良くさせていただいています。社長や役員のオジサマたちとは、たまに会って飲むこともありますし、仕事のお手伝いをすることもあります。(2018年12月時点で)福島ガイナックスの社長のマネージャーを私がしているので、福島の仕事を手伝うこともあります」という同氏は、「好きな場所で暮らしたい」というシンプルな理由から奈良へと移住した。

奈良でさまざまな人とのつながりが増えるにつれ、仕事も増えていくようになり、「塗仏観光商店」という屋号でフリーランスとして活動するようになった。仕事はデザイン、イラスト、ツアーガイド、イベント企画など多岐にわたり、加えて現在間借りしている事務所の手伝いをして固定報酬を得ているともいう。

塗仏観光商店のWORKSページ。観光マップやリーフレット、グッズのイラスト制作やデザイン、お寺参りイベントの開催など様々な活動をしている。

また近鉄ケーブルネットワークでは、『ホトケ女子のぶらりまいり』という冠番組を任されており、19年1月には近畿日本ツーリストグループのクラブツーリズムで、『ホトケ女子 安達えみさんと新春奈良さんぽへ 憧れの奈良ホテルで優雅な“いちごビュッフェ”』という日帰りツアーを企画している。

近鉄ケーブルネットワークでの紹介ページ

今の仕事や活動をしているのは「大好きな奈良に恩返ししたい」という気持ちがあるからだという。東京から奈良に旅行で訪れていた時から移住した現在まで、数多くの奈良の人に良くしてもらったそうだ。「奈良という土地そのものにも随分救われている」とも言う。奈良に対して何かお礼をしたいのだけど自分にできることはなんだろうと自問自答し、自分にできることは何でもやっていくというスタイルに落ち着いた。何かしらの確固たる最終目標があるわけではなく、「今自分に出来ること、奈良が必要としていることを、必要に応じて柔軟に対応していくことができればと思っています」と語る。

仕事をする上で大切にしているのは、「時間をうまく使えること」。時は金なりと言うが、飲み会に例えてこんな話をしてくれた。「 フリーランスでいると“仕事をする時間を飲み会に充てている”という感覚になることがあります。会社員と違ってアウトプット(デザイン・イベント・ガイドなど)を出さないと請求書が書けないので、飲み会に行かないで仕事をしていた方が収入は上がるわけです。むしろ出費にもなるわけですし。とはいえ、飲み会ではいろんな方と出会えるし、お話も伺えて刺激になることが多いので、仕事より飲み会を優先することも多くあります。飲み会を例にとりましたが、そんな感じで時間の使い方を一つ一つ吟味して、その時の自分自身にとって最善の選択をしてこうとする姿勢は必要かもしれません」。

フリーランスという立場で仕事を自己管理する上で気をつけていることはあるかと訊くと、「自分自身に甘いので、自分で自分をマネジメントできているかといえばそうではないような気がしますね。朝もしょっちゅう二度寝してますし、お酒を飲んだ翌日は二日酔いで死んでいますし。むしろ、“自己管理しなきゃいけない”と思っていない=そこにプレッシャーを感じないが故にやっていられるのかもしれません」とホトケ女子らしく、説法のような答えが返ってきた。

周りに話す人がいないことがツライが飲み会で発散

浜松市博物館で開催された特別展「遠江の木喰仏」でのトークイベント「ホトケ女子とまわる”ゆるゆる”ギャラリートーク」の模様。
(C) Emi Adachi

フリーランスになって一番ツライのは、「周りに話す人がいないこと」だという。「今の仕事場は知り合いの事務所を間借りさせてもらっているのですが、そこの唯一のスタッフさんも日中は大学の先生をしているため職場におらず、ただただ私一人で仕事をしています。たまにそのスタッフさんの帰りを待って、愚痴や悩みを言ってから帰ることもあります(笑)。あとは、友人たちに“ちょっと話聞いてー”ってLINEして、飲み会することで発散させたりしています」と、飲み会が好きなホトケ女子として自分なりの解決方法は見つかっているようだ。

会社員時代と今を比較すると何を得て何を失ったのかという問いに対しては、「会社員時代と今を比べてみて、特に失ったものはないですね。会社員時代も得るものはたくさんありましたし、職種はまったく違いますが前職の経験を活かして今の仕事をしていると思っています。よく“会社員は月給制だから安定している”と聞きますが、ガイナックスという会社が安定していると思ったことはないですし(笑)。不安定だけれどもやたらとオモロイ会社でいろいろやった経験が、今の自分をタフにさせていると思います」と語ってくれた。

会社員ではない働き方をしている人に共通する悩みでもある収入面だが、ご多分に漏れず「月の収入は全く安定していません」とのこと。今はまだ定期的に毎月やっている仕事があるので、そこからの安定収入は確保できている。しかし、それ以外の仕事は「あったり、なかったり」だという。前述のように、デザインやイラストの仕事は、アウトプットを納品しない限り入金はされないので、仕事はしているものの収入が無い月もあるそうだ。それでも、お金が足りないといった感覚になることはないので、会社員時代と同程度の生活水準は維持できている。毎月のバランスシートは厳密に計算したことがないが、お金が不足した月は、おとなしく貯金を切り崩して生活すると腹を括っている。「仕事があまりない月は勉強や人との繋がりを作る時間に充てるようにしている」とポジティブに構えている一方で「精神的には不安になります」と正直な心情を吐露する。

ホトケ女子というフリーの立場で仕事をするメリットを聞くと、

・24時間365日、自由にどこへでも動き回れることです。極端な話、旅先で電話打ち合わせしてもいいわけですし、実家から帰ってきた後にそのまま職場に入って朝方まで仕事することもできます。時間や場所に縛られることがないのが自分にすごく合っていると思います。

という回答。逆にデメリットは?と聞くと、

・所属がないというか、後ろ盾がないことでしょうか。女性でフリーランスということもあり、対外的にたまに不利に感じることがあります。また何かあった時に全責任を一人で負う必要があるので、そこがわかりやすくもありしんどいところでもあります。

と答えてくれた。

この先どっちに行くかわからない人生の方が楽しい

(C) Emi Adachi

どういった人生の設計図を描いているのかと訊ねてみると、「友人にも聞かれたことあるのですが、人生設計はまったく考えていません。考えたところで自分にとってはあまり意味のないものだと思ってますし、計画した人生を歩むことに面白さを感じません。なんでしょうね、安定より面白さを取っちゃってるんでしょうね(笑)。自分の価値は他人の評価で決まると思っているので、周りの人が“安達にこれをやらせたら面白いんじゃないか”と無茶振りしてくださることで自分の可能性が広がり、その上で自分の進む道が整備されていく気がしています。他力本願ですと言えばそうなりますが、他人に評価や判断を委ねた人生の方が、この先どっち行くかわからなくて楽しいですよ。自分はその都度、精いっぱい仕事をするだけです」と語ってくれた。

幸せに関する意識については、「幸せ…なんでしょうね(笑)。あまり考えたことないです。とりあえず今は幸せだと感じています。自分が大好きな場所に住めて、周りの方々にとても良くしていただいて、それだけで十分ですし、今こういう環境にいられることが奇跡のようで、ただただありがたいです」とのこと。

会社員ではない働き方を模索している人達へ安達えみ氏からのメッセージ

「会社員であっても意外と自由にのびのびと仕事をされている方はいらっしゃると思います。なので、“会社員かそうでないか”というのが重要なのではなく、自分自身が何に重点を置いて仕事をするのか、それをはっきり決めた方が気は楽になるのではないでしょうか。給料第一なのか、やりがい第一なのか、休日第一なのか。なんでもいいですが、あれもこれも望みどおりにするのは難しいので、1つだけでも“これは譲れない”というものを決めればいいと思います」

安達えみ氏の平均的な一日のスケジュール
08:30 起床(といいつつゴロゴロ)
10:00 出勤・仕事
12:30 お昼(お腹が空いたら食べる)
13:00 仕事再開
22:00 帰宅・夕飯(21時前に帰宅することはほぼない)
23:00 風呂
24:00 読書
25:00 就寝

「もともと趣味であった社寺巡りが仕事のようになってきたので、社寺にお参りに行く、というのが休日なのか仕事なのかわからなくなっています。毎日仕事しているようでもあり趣味を楽しんでいるようでもあり、日々変化があって楽しいです」


塗仏観光商店

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