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「バズ」をつくる男、福田淳のつくりかた【後編】
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  • 2018.04.12
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「バズ」をつくる男、福田淳のつくりかた【後編】

(前編より続く)

いつのころからか、「好きなことで生きていく」が、さもこれからのあるべき働き方であるように叫ばれている。が、日本を代表するカリスママーケッターの答えは、ちょっと違う。

「アニマックス」「AXN」といった衛星放送チャンネルを立ち上げ日本のコンテンツ産業の隆盛に一役買い、社長を務めたソニー・デジタルエンタテインメントでは『The World of GOLDEN EGGS』をはじめとするデジタルコンテンツを生み出した福田淳氏。

貴重なハリウッド映画に魅せられ映画監督を目指した少年期から、偉大なビジネスリーダーから薫陶を受けた東北新社時代までを聞いたインタビュー前編に続き、後編では、2017年の退職を経た今、福田氏が何を考え何をしようとしているのかに迫る。「人生100年時代」の、あたらしい働き方のヒント。


聞き手・文:米田智彦 写真:神保勇揮 構成:年吉聡太

絶頂期に辞めないと意味がない

2017年12月、小学館から刊行となった『SNSで儲けようと思ってないですよね? 世の中を動かすSNSのバズり方』は福田氏の1冊目の著作。カバーには女優・のんが登場している。

−− ソニー・デジタルエンタテインメントでは10年以上、さまざまなコンテンツをつくり続けてこられた。でも、2017年、辞任されちゃったわけですよね。

福田:そうなんです。後付けだけど、安室奈美恵的な引退。絶頂期に辞めないと、バリューが残りませんから。

−− バリュー、ですか。

福田:もっと早く辞めたかったくらいですよ。リンダ・グラットンの『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)でも書かれていますが、いまや人は100年生きるといわれている時代です。それなのに、これまでの“人生70年”のビジネスモデルが残ってしまっているんですよね。

−− 今のこの社会が、このまま成り立つはずはありませんよね。

福田:みんな老後を不安に思っているけれど、本に書かれている通りなら、働く期間はすごく長くなっていくわけですよ。そんななかで、50代のいいときにスパンと辞めて次の道筋を示すことで、こういうやり方もあるよと言いたかったんです。「自分がロールモデルを見せる!」というのは言い過ぎかもしれませんけれど。

−− なるほど。

福田:自分が関西人なのも関係しているかも(笑)。もう一度、自分を崖っぷちに持っていかなきゃダメだと思ったんですよね。もっとも、辞めるときにもセルフブランディングを考えていますから、辞めた次の日に本(『SNSで儲けようと思ってないですよね? 世の中を動かすSNSのバズり方』〈小学館より2017年12月に刊行〉)を出したんです。

−− そうだったんですね。

福田:辞める一環で、出版パーティもやりました。本を出したくらいでいちいちパーティなんかって話もあるかもしれませんが、会社を辞めても自分には集客力があるということを世の中に見せようとしたんです。

−− 僕もパーティには参加させていただきましたが、そういう意図があったんですね。やはりブランディングは重要ですね。

福田:今、仕事が殺到していて、人生で一番働いています。「みんな働いてばっかりで趣味ないのかねぇ」と言ってたのに、自分がそうなっちゃってます(笑)。

ブランドコンサルタントとしての今後

「いまの僕の仕事は、ブランドコンサルティング。企業のストーリーづくりを担う仕事は楽しいです」

−− 現在は具体的には何をされているですか?

福田:企業のブランドコンサルタントです。会社経営者だったころとは2つ、大きく変わりましたね。まず、経営者の立場だったときは、いただいた依頼を解決するための能力を社内で育てなきゃいけなかったんです。組織を率いる社長だからしょうがないのですが、これって無茶苦茶しんどい。だけど、今のコンサルタントという立場だと誰とでも組めて、たとえばチームラボと組もうなんて動き方もできる。

−− もうひとつ、というのは?

福田:デジタルではない問題解決を求められることが増えましたね。それこそ、社長が出すステートメントの内容から、どういうネクタイをすればマスコミ映えするか、なんてことまで。

−− それも、いわゆる「ブランディング」ですね。

福田:そういった現場で、いろんな社長の悩みを聞くことになるんです。たとえば「この企業を買収したいんだけど、どう思う?」って。そうすると、僕はその経営者のカウンターパートになって「なぜこの企業を欲しいと思うんですか?」と返す。そのうち、プロジェクトのオーガナイザーやアドバイザーーとして自分で手を加えていけるようになるんです。

−− 福田さんにお仕事をお願いしようとすると、どういう契約になるんですか?

福田:大きくは二つあって、チームで対応するコンサルと、わたしが経営者のワン・オン・ワンで行うコンサル契約があります。チーム対応は、企業の中にはいって新規事業の戦略を練り、必要施策を一定の時間をかけてかいけつしていきます。ワンオンワンは、クライアントの社長の対外的なストートメント赤入れから、SNSの炎上処理まで、経営で困ったことを自分の人脈とデジタルを駆使したアイデアで解決するのが得意ですね。コンサル料金は値引きなしの高めです(笑)。基本的には質を守りたいので、断る案件が多いです。

−− 勇気がありますね。

福田:自分の人生の時間を切り売りするって、そういうことですから。その分、それだけの高い値段で頼んでくださっているクライアントにはきめ細かく、それこそ「24時間対応」します。

−− どんなお仕事があるのか、具体的に教えていただけますか?

福田:マル秘が多いので、ざくっとだけ言うと、「どうやったら新卒社員をたくさん集められるか」というミッションがあると、オフィス改革(既存のオフィスを外部にシェア)を提案して、今いる社員にも刺激がある形で、外部の新しい人材とも交流できるようなアイデアを実行させようとか。そうすると、働き方改革にもなっていくんですね。それ自体が企業にとってブランディングになるし、そこでつくられる新たなコミュニティから若い人たちを採用できる可能性にもつながる。今、コミュニティをどうつくるかに取り組んでいる人は多いですが、僕がやっているブランドコンサルティングは、まさにそのストーリーづくりを担う仕事なんですね。楽しいです。

好きな仕事より好きな人を見つけろ!

−− 4月ということで、ぜひ新入社員向けの話もお聞きしたいのですが、たとえば今行ってみたいと思う場所や都市はありますか?

福田:いっぱいありますよ。これから行く予定なのがエストニア。アフリカのケニアにも興味あります。イノベーションが起きそうな場所には嗅覚を働かせています。

−− 本当に世界中を飛び回られているんですね。

福田:一方で、生まれた土地に対する愛着が根強くあることも実感します。僕は世界中を旅しているし、中にはぶっ飛んだ発想の人がいて「タンザニアを活性化させよう」と思う人もいますけれど、みんながみんな“トラベラー”ってわけではないですよね。そういう人はそういう人で、自分が日々生活しているところを少しでもよくしようと考えていけばいい。まずは、自分の言語と生活圏があるところから始めたら、楽しくなるんじゃないかな。なにせ自分がよく知っているわけですからね。

−− 楽しいと思うことは大事ですね。

福田:僕はよく、「好きなことを見つけて、好きなことをやろう」って言っています。

−− 若い人からは、これから新しく好きなことを見つけるのは難しい、という声も出てきそうです。

福田:好きなことを見つけるには、アンテナを広げればいいんです。今の自分がちょっとでも気になることがあれば、それがこれから「好きなこと」になるかもしれませんから。

−− 好きかどうかで、仕事のしかたも変わってきますよね。

福田:中年にもなってくると、「あの仕事が楽しかった」というより「あの人と働いて楽しかった」って感じることが多くなってきます。だから、好きな会社に入れたとしても先輩や同僚と合わなかったら、辞めてもいいんです。好きな人と一緒にいたほうが学びも多いし、刺激になるはずです。自分の人生だから、好きなことや好きな仕事よりも好きな人を見つけてほしいですね。

−− ご自身のお仕事については、どのように思われますか?

福田:広告やブランディングの仕事に関っている人を総じて「マーケッター」と呼ぶことがありますが、ほとんどの「マーケッター」はマーケットを見ていないって思いますね。いつも上ばかりを見て通勤して、ビルに入って行って…。そういうことじゃないはずなんですけれどね。

−− 「カリスママーケター」と呼ばれることもある福田さんにとって、マーケターというお仕事はどういうものを指すのでしょうか?

福田:マーケッターの仕事って、コカ・コーラやカップヌードルをたくさん売るために何ができるかを考えることじゃないんですよ。「コカ・コーラを飲んでいるときになぜ笑顔になるのか?」「カップヌードルを食べるとなぜ楽しい気持ちになるのか?」。つまり、社会との接点を考えることなんです。だから、「働き方改革」も、僕たちのような業界の人間の使命だと思っていますよ。

−− 働き方改革も、ですか。

福田:人が人として豊かな気持ちを持って楽しく過ごすために何ができるか? それを考えることは、エンタメの原点ですから。なにせ、僕はずっと、自分のアイデア、クリエイティブで世の中をよくしたいと思ってきましたから。

−− 映画監督を志したときのお話ですね。

福田:小学校のとき僕はクラスのみんなを笑わせるのが好きで、『スター・ウォーズ』を初めて観て映画監督に憧れたのも、それがみんなを笑顔にするのに “効率的”だと思ったから。それはずっと変わっていなくて、iモードにしろソーシャルゲームにしろLINEのキャラクターにしろ、自分の提供したもので人の喜ぶ顔、幸せなオーラが出ればいいと思っているんですよね。

−− 映画も、人を笑顔にする手段のひとつだったわけですね。

いいことして金儲けしようぜ!

文化庁「コンテンツ調査会」委員や経済産業省「情報大航海時代の情報利用を考える研究会」委員を歴任してきた福田氏。育児する父親を支援するNPO「ファザーリング・ジャパン」では監事を務めている。

福田:でも、40歳になるまで、笑顔になる「以前」の人が世の中にこんなにいるってことを恥ずかしながら知らなかったんですよね。だからいま、NPOの活動をしているんです。

−− NPOでは何をやられているんですか?

福田:「ファザーリング・ジャパン」の監事や「タイガーマスク基金」の発起人。あとは「Homedoor」という、大阪のホームレスの人たちのサポーターをやったり……。

NPOでは、「いいことして金儲けしようぜ」とハッキリ言っています。日本のNPOの多くは、貧乏でいなきゃいけないってメンタリティが根強いようですが、僕は逆。いいものを食べておかないといいことはできないと思っています。人生の楽しみを知っている人だからこそ、それをシェアできる。食うのに困っている人には、人を助ける余裕なんてないですよ。

−− 介護問題に直面した家族が疲弊していくのも同じことかもしれません。

福田:介護は本来とてもプロフェッショナルな仕事で、プロがプロとしてやる社会にしなきゃダメですよ。で、こういうことをずっと言っていると、政治家にでもなりなよって言われます(笑)。それはガラでもないので、やめておきます。

−− 今後やろうとしていることがあれば、教えてください。

福田:今後やりたいのは、人が持っているスキルをレバレッジにして社会をよくするプラットフォームに関わっていくこと。今、応援している「ピリカ」という会社がありますが、彼らは街のゴミを解析していく仕組みをつくっています。規模は小さくとも、やろうとしていることが壮大。だから、応援したいんですよね。自分自身でも、そういうプロジェクトをどんどんジェネレートしていきたいです。ドローンなんかも、面白いですね。

−− 福田さんならドローンをどう料理しますか?

福田:単にドローンレースをやるでもいいんですが……。たとえば、女性が終電で最寄り駅に着いて、家に帰るまでの10分間、ドローンが見守りとしてついてきてくれるとか。あるいは、週休3日にしないと宅配ドライバーになりたいという人がいないんだったら全部ドローンで運んじゃうとか。

今のドローンの安全性がみんなのイノヴェーションで十分担保されたときに、有人ドローンも含めて商用化されるはずです。あったらいいなってことをテクノロジーが解決してくれて、僕たちのようなコンテンツ人間がコンテンツを加えていく。そう思ったら、20~30年でできることは、まだいっぱいあるんでしょうね。

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