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【動画アリ】宇宙・深海・危険地帯での「ロボットによる細かい手作業」がいよいよ現実化。メルティンが21年までに量産型モデルの市場投入を目指す
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  • 2018.10.18
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【動画アリ】宇宙・深海・危険地帯での「ロボットによる細かい手作業」がいよいよ現実化。メルティンが21年までに量産型モデルの市場投入を目指す

文:神保勇揮 写真:立石愛香

最終目標は「脳さえあればあらゆる身体行動ができる」こと 

サイボーグ技術やロボットの研究開発を手がける日本のスタートアップ、株式会社メルティンMMI (以下、MELTIN)は10月17日、大日本住友製薬、SBIインベストメント、第一生命保険の3社を引受先とした第三者割当増資を実施し、シリーズBラウンドとして20.2億円の資金調達を完了したと発表。同日開催された記者会見で、同社の創業者でCEOの粕谷昌宏氏が今後の事業展開について語った。

今後、同社は独自開発のアバターロボット「MELTANT(メルタント)」シリーズの改良を進め、2020年までの実用量産モデル完成、翌21年には本格的な市場投入を目指していく。

CEOの粕谷昌宏氏。幼少期からロボット開発に興味があり、中学生時代にはすでに人工筋肉の研究を始めていたという。

MELTINは2013年に電気通信大学内のインキュベーション施設で起業。「ヒトと機械を融合させるサイボーグ技術によりヒトのさまざまな制約を突破し、人類最大の武器である創造性を100%発揮させる」ことを事業ミッションに掲げ、「最終的には、“脳さえあれば”あらゆる身体行動が可能となるサイボーグ技術の実現が目的」(粕谷氏)としている。

同社のコア技術は、人が身体を動かすために脳からの命令として伝わる「生体信号」を高速・高精度で解析し処理する技術と、人に限りなく近い動作が可能な「ロボット」の開発技術の2つ。

前者では四肢の麻痺や欠損といった障がいを抱える人のためのデバイス開発(該当箇所を動かすという生体信号を読み取り、イメージした動きが再現できる)を進めており、後者では今年3月にモーションキャプチャーによる遠隔操作型アバターロボット「MELTANT-α」を発表した。

災害現場や深海などでの導入を最優先に進める

記者会見でのMELTANT-αの操作デモンストレーションの様子。操縦者はVR用のヘッドマウントディスプレイを装着し、あたかも自分がMELTANT-αになったかのような視点で作業できる。また手に装着したモーションキャプチャー装置の下部には別途MELTANT-αの各機能を制御する(ロボットの動作を固定する)機能を有したスイッチが付いている。

昨今、大手・スタートアップを問わずさまざまな企業がロボット開発競争を繰り広げているが、MELTANT-αは小型かつ軽量でパワフルな手を持ち、1万8,900km離れた距離(ボストン-アブダビ間)でもほぼ遅延ゼロで遠隔操作できるだけでなく、「卵を割らずに掴む/任意のタイミングで割る」「ペットボトルのフタを開ける」「ジッパーを開け締めする」といった繊細な動作が可能なことが特徴だ。

そうした機能を有するMELTANTシリーズは、ヒトの指による繊細な作業が求められながらも、健康や生命の危機に晒される危険環境(災害現場や高所、汚染区域など)や、宇宙・深海といった極限環境での利用ニーズがまず見込まれ、この分野での実用化を最優先で進めていくとしている。

ちなみに宇宙での利用に関しては、JAXAとANAホールディングスが共同で進める宇宙開発・利用創出プログラム「AVATAR X (アバターエックス)」に参加しており、MELTANTの宇宙空間や月面での利用に関する研究・実験が既に進行している。

今年9月、JAXA相模原キャンパスにて月面環境を模した宇宙探査フィールドを展開し、電動ドライバーを用いて故障したローバーを臨時メンテナンスするMELTANT-αと、それを地上の管制室から遠隔操作する場面を想定したデモンストレーションが開催されている。

今回調達した20.2億円は主に次世代モデル開発のための費用として使用し、今後のクライアント向け実用モデル開発のための資金は「MELTANTシリーズの利用ニーズは各業界・各企業によって千差万別で、細かな仕様変更やオプション装備などの要求に応えていくことが重要だと考えており、少なくとも21年の本格市場投入以前には同一品を大量販売することを想定していない」(粕谷氏)として、オーダーメイドに近いようなかたちで、導入コンサルティングなども込みで賄っていく考えだ。またMELTANTシリーズの開発とは別に、医療機器メーカーと共同でアンメットメディカルニーズ(有効な治療法や機器が存在しないなど、未だ十分に対応しきれていない医療ニーズ)に対応する機器の開発も進めているという。

2つの業界横断的組織を発足

MELTINが開発する技術やロボットは、人間や社会の利便性を大幅に引き上げるだろうが、それだけに犯罪などにも利用されかねない。そこで同社はあくまでも「サイボーグ技術でより良き世界を創る」という目的のため、「国際サイボーグ推進委員会」と「国際サイボーグ倫理委員会」という、2つの業界横断的組織を発足させる。

前者の「国際サイボーグ推進委員会」は国内外の大企業を中心に、サイボーグ技術を活用した各種プロダクトの産業利用を推進し、産業の構築を主導するとしている。具体的な企業名は発表されていないが、MELTINにも投資しているベンチャーキャピタルのリアルテックファンドも参加する。

参考記事:本質的な価値を持つ「研究者」に投資し、カネでカネを生む資本主義に立ち向かう─リアルテックファンド代表・永田暁彦

後者の「国際サイボーグ倫理委員会」は、倫理、哲学、人類学、歴史学、社会学、美学、食学などさまざまな専門家の検知からサイボーグ社会の課題を議論していくことで、新たな倫理観や文化を形成していくとしている。こちらはリアルテックファンドに加えて、リアルテック特化型クリエイティブファームのKANDO(カンド)、アートサイエンスメディア「Bound Baw」を運営する一般社団法人Whole Universeの参加がアナウンスされている。

各委員会の具体的な活動予定はまだ未定だが、今後MELTANTシリーズの産業利用だけでなく、アート方面での展開も考えていきたいとしており、今後の動向が楽しみだ。


株式会社メルティンMMI

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