ウェブサイト、ECサイト、アプリなどの顧客体験を分析するサービスを提供するContentsquare(コンテンツスクエア)は、デジタル顧客体験(CX)の最適化に取り組む実践者たちが登壇するカンファレンス「CX Cicrle Tokyo 2022」を2022年11月に開催。「デジタル世界の接点において、どうすれば顧客に愛される素晴らしい体験を提供できるのか」をテーマに、業界の識者たちが講演やパネルディスカッションを行った。
今回はContentsquare Japanから記事提供をいただくかたちで、同カンファレンスの書き起こし記事を掲載する(全6回中の3回目)。
本記事ではオーストラリア発のマットレスブランド「コアラマットレス」を手がけるコアラスリープジャパンのマーケティングディレクター・アダム翔太氏、デジタルプロデューサー・後藤めぐみ氏が、コアラ流マーケティングの舞台裏を語った。
なお、コンテンツスクエアは2023年6月28日(水)に神田明神ホールにて「CX Circle Tokyo 2023」を開催する。キューサイ、三井住友カード、freeeなど各業界のデジタルリーダーが登壇し、顧客を満足させるための戦略や施策を共有。参加者同士がつながるためのアフターパーティも予定している。(参加登録はこちら)
コアラスリープジャパンが目指す世界
まず最初に講演を行ったのは、コアラスリープジャパンのマーケティングディレクターを務め、日本拠点の初期メンバーであるアダム翔太氏だ。
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コアラスリープジャパンはマットレスを中心とするBtoCのブランドベンチャーで、主力商品はコアラマットレスです。2015年にオーストラリアのシドニーで立ち上げ、2年後の2017年10月にコアラスリープジャパンとして日本法人を開設しました。
コアラスリープジャパンはマットレスを主力商品として展開しており「頑張らない睡眠」を目指しています。もっと手軽に睡眠関連の商品を届けられる世界をつくるべく、活動を続けています。睡眠だけでなく、サステナビリティやコアラの保護プログラムにも参加しており、一言で表現すると「健康で幸せな世界」を目指している会社です。
顧客体験のハードルを下げるための「オンラインで完結する」戦略
「マットレスを選ぶ」という顧客体験は、実は想像以上に大変なものです。新しいマットレスを買いに行きたいと思っていても、平日は仕事があるため、わざわざ週末に外出してマットレスを試しに行かなければなりません。この手間を、コアラスリープジャパンでは無駄の一つと考えていました。
また、マットレスは衛生商品なので、一度購入すると基本的には返品できません。しかしながら、実際に店舗に足を運び、さまざまなマットレスをわずか10分程度の短い時間で試してみても、どの商品が自分に合うかを見極めるのは困難です。本来なら一晩眠ってみる程度でも不十分で、1週間以上、あるいは1カ月程度使ってみてようやく自分に合うかどうかがわかるのがマットレスです。
このような事実を前提として、お店で注文してから、実際に家に届くまで数週間から1カ月以上かかるという点も、顧客体験のハードルをさらに高くしています。
選ぶのに時間も手間もかかる上、届くまでに待つ時間が長く、万が一自分に合わなくても返品できない。おおよそ10万円以上という高額な代金を支払ってしまった後で返品できないというリスクは大きく、顧客は非常に不安を感じる点といえます。
コアラスリープジャパンのコアラマットレスは、このような顧客の不安を解消するため、店で体験せずにオンライン上で気軽に購入できる体制を整えています。
また、自宅への直接配送が可能で、例えば東京に住んでいる人なら、今日買えば翌日には到着するというスピード感も兼ね備えています。ちなみに本国のオーストラリアであれば、注文から4時間で届きます。さらに、120日間の返品保証が付帯しており、自宅で使ってみて合わなかった場合は、いつでも返品できるというビジネスモデルを用意することで、顧客のリスク軽減を図っています。
商品の良さを一目で伝えるための動画マーケティング
購入体験を向上させても、商品の良さが伝わらなければ販売にはつながりません。実は、2017年に日本法人を立ち上げてから、すぐにコアラマットレスの売上が伸びたわけではありませんでした。そこで、単にメッセージを伝えるだけではなく、顧客の目に留まるような施策を展開する必要があると考え、新たなマーケティングを開始しました。
日本に参入する前に、既に日本国内に競合があったため、コアラスリープジャパンを目立たせることが最も大きなチャレンジでした。
そこで動画マーケティングに着目しました。グラスにワインを注いでコアラマットレスの上に置き、そのまま近くで人が飛び跳ねても、グラスが倒れないということを示す動画を制作しました。
コアラマットレスには「振動吸収性」があります。例えばパートナーが先に眠っていて、夜遅くにもう1人がベッドに入ってきたとしても、マットレスが衝撃を吸収するため、先に眠っていた人が目を覚ますことはありません。
この動画が多くの人の目に留まり、コアラマットレスの認知度を高めるとともに、商品の購入を促進することに成功しました。さまざまな施策を展開しましたが、この動画が最も高い成果を上げています。
商品の良さをクリアに面白くコミュニケートできたことが、この動画が成功した要因の一つだといえます。「何層構造になっているか」や「体圧分散が素晴らしい」といった科学的な話ではなく、体感的にマットレスの良さを伝えられたことで、多くの人に興味を持ってもらえたのです。
コンテンツスクエアの導入によってPDCAサイクルを回せるようになった
しかし、前述の動画マーケティングが成功したことで、同様の取り組みを同時多発的に繰り返してしまったことは失敗だったといえます。
「ワインチャレンジ」と称してインフルエンサーと何度もコラボレーションを行ったものの、さまざまなマーケティングを同時進行しすぎたために、十分な効果検証やトラッキングができませんでした。
この失敗を活かして、コンテンツスクエアに乗り換えたという経緯があります。コアラスリープジャパンでは、2年ほど前からデータドリブンマーケティングを開始しました。
これまでは行き当たりばったりで新たな施策を展開するばかりでしたが、コンテンツスクエアを導入してからは、PDCAサイクルを回せるようになりました。PDCAサイクルを回せる点は、コンテンツスクエアのメリットだと感じているそうです。
Webサイトのレイアウト調整や最適な広告配信など「いま何に注力しなければならないのか」が明確になりました。
コアラスリープジャパンでは、適切なデータドリブンマーケティングを行うためには、3つのポイントが重要と考えています。まず、最も大切なことは「正しいツール」を選ぶことです。この観点においては、コンテンツスクエアを強く推奨しています。
2つ目のポイントは、データを分析した上で、実際にアクションにつなげることです。社内にグラフィックデザイナーやコピーライターなど編集のスペシャリストを配置して、顧客から具体的なインサイトがあればすぐに行動できる体制を整えました。
3つ目は、データを余すことなくアクションにつなげることです。蓄積したデータを分析しながら、過去のデータから学び、さらなるコアラマットレスの成長に反映させていくことが重要だと考えています。
データの可視化とセキュリティの高さが両立している
続いてコアラスリープジャパンでデジタルプロデューサーを務める後藤めぐみ氏による講演。後藤氏はテックチームでWebサイトの管理を担当しており、コンテンツスクエアを使ったデータ分析や、ABテストを行っている。
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実際にコンテンツスクエアを利用していて気に入っているポイントは3つあります。1つ目は「データビジュアライゼーション(データの可視化)ができること」 、2つ目は「幅広いデータを提供しているだけでなく、個人情報の保護がしっかりしていて安心であること」です。また、3つ目のポイントとして、臨機応変に手厚いサポートを受けられる点も気に入っています。
データビジュアライゼーションに関しては、一目で「この数字が何を意味しているのか」がすっと頭に入ってきて理解しやすく、社内でデータの取り扱いが苦手な人にも、比較的短時間で理解してもらえるため、議論の活性化につながっています。
例えばヒートマップ分析を見ると、主力商品のマットレスが画面上に赤く表示され、一目でコアラマットレスがコアラスリープジャパンにおける人気商品だということがわかります。
もう一つ便利な点としては、手間なく資料化ができるということです。Excelのピボットテーブルを使って生データを加工するなどの作業が必要ないので、資料作成にかかっていた時間を短縮できるようになりました。浮いた時間を「分析データをどのように活用できるか」という検討に割り当てられるようになり、助かっています。
また、個人情報保護の観点からは、コンテンツスクエア上で不審なIPアドレスがあれば、確認した上で3日以内に削除の対応が取られるというスピード感に安心しています。
手厚いサポートに関しては、カスタマーサクセスマネージャーやソリューション・エキスパートに、いつも臨機応変に対応してもらっているとの評価でした。
「ツールを扱うのは人間」という点を意識したマーケティングが重要
コンテンツスクエアを活用してWebサイトを改善した、コアラスリープジャパンのブランドストーリーページの事例をご紹介します。
ブランドストーリーのページは、商品ページのように直接的に売上に結びつくページではありません。しかし、ほとんど顧客からのリアクションがなく、改善しなければならないポイントの一つでした。そこで、コンテンツの内容を「企業のストーリー紹介→商品ページ」という構成に組み替えたところ、以前よりもリアクション数が増加しました。
また、コンテンツスクエアを利用し始めてから、ABテストの重要性も実感しました。コンテンツスクエアのように高品質なツールを導入しても、結局のところ、データを分析して解釈するのは人間です。分析力の重要性を認識して、ツールの効果的な活用方法を見出していく必要があるのではないでしょうか。「このように変更したらうまくいくだろう」という感覚があったとしても、あくまでもそれは仮説に過ぎません。ABテストをしっかり実施して、仮説が事実かどうかを検証する必要があるのだと強く実感しています。
【お知らせ】
コンテンツスクエアは、2023年6月28日(水)に「CX Circle Tokyo 2023」を開催します。「和」×「デジタルの未来」をテーマに、神田明神ホールにて各業界のリーダーがリブランディング戦略や顧客体験向上に成功した施策を語ります。アフターパーティーでは和を感じられる演出、フィンガーフードと屋台メニュー、ここでしか配らないお土産などで参加者の皆さまをもてなします。
顧客戦略に携わるブランド運営企業の方は、ご同僚をお誘いの上、ぜひこちらからご参加登録ください。
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