LIFE STYLE | 2018/08/29

なにげに世界で有名な日本人:世界を驚かせたバルーンアーティスト、松本壮由氏

バルーンアートと聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか? 子供が喜ぶ大道芸人のパフォーマンスや、結婚式会場の装飾品あたり...

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バルーンアートと聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか? 子供が喜ぶ大道芸人のパフォーマンスや、結婚式会場の装飾品あたりが一般的な回答ではなかろうか。中には、米風船メーカーが主催するバルーンアートのイベント「ワールドバルーンコンベンション(World Balloon Convention)」で世界中のバルーンアーティストが競って展示する、オブジェのような大型の作品もあったりする。 

そうした大型バルーンアートの世界で著名なのは米国のアーティスト、ラリー・モス(Larry Moss)氏だろう。モス氏は、バルーンアートのことをAir(空気)とOrigami(折り紙)を合体させた造語「Airigami」と呼ぶ。だが、そんなモス氏に負けないくらい英語圏で知名度が高いバルーンアーティストが日本にもいることをご存じだろうか。

取材・文:6PAC

松本壮由(まつもと・まさよし)

バルーンアーティスト

1989年11月7日生まれ。日本のみならず、アメリカ、イギリス、スペイン、オランダ、ドイツ、メキシコなど各国のメディアに取り上げられる。2008年、大学1年生の頃、所属していたジャグリングサークルでバルーンアートと出会う。以降、接着剤などは一切使わず、風船のみで作り上げることにこだわる作品づくりを続ける。特に、鳥、爬虫類、節足動物の造形には定評があり、独自の世界観が表現されている。

ツイッターのアメリカ版モーメントまでもが作品を紹介

普段はサラリーマンとして働くかたわら、趣味が高じたアート作品で日本国内のみならず海外からも注目されている20代の若きアーティストがいる。千葉県の私鉄沿線に暮らし、化学メーカーの研究員としてサラリーマンをやっている松本壮由氏がその人だ。

松本壮由氏

同氏の作品は見栄えがすることからウェブメディアが飛びついたのを始め、日本国内ではテレビ朝日の「Design code」や日本テレビの「NEWS ZERO」などに出演歴がある。海外ではBBCハフポストといったメジャーなメディアが同氏の作品を取り上げ、米NBCが毎朝放送する情報番組「Today」でも紹介されたことがあるほどだ。最近ではツイッターのアメリカ版モーメントまでもが同氏の作品を紹介した。

「リアル、シンプル、バルーン」だけという3つのこだわり

2008年にバルーンアートを始めた同氏だが、きっかけは大学時に所属していたジャグリングサークルで先輩がやっているのを見て、興味を持ったことからだという。以降バルーンアートを10年にわたって継続しているわけだが、その理由は単純明快で「楽しいからです」とのこと。

「小さいころから昆虫・動物が好きだった」という同氏の作品は、そうしたモチーフの作品が多い。バルーンアーティストとしてのこだわりについて質問すると、「リアルテイストで作ること」、「なるべくシンプルに、無駄なパーツが無くなるようにすること」、「接着剤・シール・ペン等を使わず、すべてバルーンのみで作ること」の3つを挙げてくれた。どのメディアも彼の作品を「リアルだ」と表現しているが、同氏のこだわりが作品を見た人にきちんと伝わっていることがうかがえる。

バルーンアーティストは日本だけでも結構な数の人が存在するが、同氏がなぜこれほどまでに国内外から注目されているのかについて自己分析をお願いしてみると、「バルーンアーティストさんや大道芸人さんの多くは、デフォルメした動物など可愛い作品を作りますが、僕はウケるかどうか、儲かるかどうかを考えず、好きなものを作っていたら結果的に差別化につながったのではないかと考えています。リアルな昆虫を作るのが楽しくても、それに需要があるとは思っていませんでしたし」との返答。

「バルーンアートをさらなる高みへ持ち上げた」という表現を海外メディアは好んでいるようだが、同氏はまだまだ上を見ているようだ。最近の作品では「クロームバルーン」という、強い光沢感が特徴の新しい素材を試しているという。「今後も色々な生き物に挑戦していきたいです。特に昆虫はまだまだいろんな種類を作っていきたいですね。クロームバルーンはいわゆる玉虫色というか、構造色を持つ昆虫などに使えそうだと思っています」と、今後の展開に期待が膨らむ。

副業収入は本業の1割

冒頭でも伝えた通り、松本氏の本業はサラリーマンだ。しかし今年からは、バルーンアートで稼ぐことを少しづつ意識しているという。

バルーンアーティストとしての収入は、依頼を引き受けた際の制作料、メディア出演・取材のギャラ、自作技術書のダウンロード販売の3つがメインだそうだ。ちなみに、収入額はまだ本業の1割程度とのこと。「副業としては成り立ちつつありますが、これ一本で生きていくにはまだちょっと心もとないですね」と本音も語ってくれた。会社にもきちんと許可を取っているものの、1回の依頼ごとに書類を提出するのになかなか手間がかかってしまうそうだ。

松本氏がバルーンアートの作り方を解説した電子書籍の販売ページ

副業としてのバルーンアートに関して、同氏のもとには具体的にどういった仕事の依頼が舞い込むのか訊いてみると、「イベント会場などの装飾や展示の依頼を頂くことはあるのですが、残念ながらほとんどお断りしています。私の作品は手間がかかる上に小さい(量産できない&見栄えがしない)ため、リアルな場で使うのは向いていないためです。ただ、CDジャケットやカレンダービジュアルなど、写真で使用する形の依頼は積極的にお引き受けしています」という。「最近もBuzzFeedなど、複数のメディアから取材を受けました。また、ジャケット写真の依頼もいただいています」と引く手あまたのようだ。

下世話な話だが、FINDERSが開催しているトークイベントなどの装飾用にバルーンアートをいくつか制作して欲しいという依頼があったとしたら、見積りはどれくらいの額になるのか率直に訊ねてみた。「先述の通り、あまり大きい作品は作れないのですが、テーブルにちょこんと置くタイプの作品(高さ40㎝位)ならお引き受けできると思います。1体5000円として、合計10体と想定して5万円くらいになると思います。また、ものによっては販売もOKです。値段は一体につき5,000~1万円になると思います」という返答が返ってきた。このぐらいであれば個人でも出せそうな金額なので、子供の誕生日会などの潜在的なニーズもありそうだ。

サラリーマンという本業とバルーンアーティストという副業を両立させる上で時間の使い方や体調などのバランスをどう保っているのか訊いてみると、「特に気を付けているのは健康面です。夢中になりすぎると明け方まで制作してしまうため、ほどほどの所で切り上げるようにしています」と語ってくれた。研究員という職業も関係しているのか、それともアーティスト特有の気質なのかは不明だが、とことん突き詰めるタイプのようだ。見ていて楽しい作品ばかりなので、これからも安定して活動できるよう健康面にはぜひ留意していただきたいものだ。

刹那的な運命が待ち受けているバルーンアート作品

完成あるいは展示後のバルーンアート作品には、完成させた張本人である松本氏が自身で割るか、自然に萎んでしまうという刹那的な運命が待ち受けている。このことに関し、「量産ができないので不便だと感じることが多いですね。作品そのものを使って活動したり稼ぐスタイル(展示・装飾など)にはそうした面でも限界があるような気がします」と同氏はいう。

ただ、完成させたバルーンアート作品を写真として後世に残すことは可能だ。例えば、昆虫や動物モチーフが得意なことを活かして、図鑑系の出版社と組んでバルーンアートによる昆虫や動物図鑑を出版するということも考えられるだろう。作品を自然に溶け込ませるような形で撮影した写真集、カレンダー、広告などの需要もありそうだ。バルーンアート作品を収めた写真というデジタル素材を上手に活かして、副業を継続させられる資金源を確保しつつ、世界中の人を楽しませ続けてほしいと心から思う。


isopresso(Balloon animals)

松本氏Twitter(@isopresso)