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大麻は「地方自治を本気で考えるきっかけ」か「統治者に都合の良いツール」か 宮台真司さんと語る【連載】大麻で町おこし?大麻博物館のとちぎ創生奮闘記(2)
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  • 2022.04.14
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大麻は「地方自治を本気で考えるきっかけ」か「統治者に都合の良いツール」か 宮台真司さんと語る【連載】大麻で町おこし?大麻博物館のとちぎ創生奮闘記(2)

去る3月19日・20日、渋谷ストリームホールにて開催された日本最大級のサステイナブルのお祭り「めぐりわひろば」に大麻博物館も出展してきました。さまざまなイベントやワークショップなどが開催される中、私たちは社会学者の宮台真司さんとのトークを開催。この連載のテーマである「大麻による地方創生」について考えるヒントが盛りだくさんだったため、抜粋記事を掲載します。

宮台真司

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。東京都立大学教授。東京大学大学院(旧)社会学研究科博士課程修了。社会学博士。「14歳からの社会学」(筑摩書房)、「日本の難点」(幻冬舎)、「崩壊を加速させよ」(blueprint)など著書多数。
http://www.miyadai.com

大麻博物館

日本人の衣食住を支えてきた「農作物としての大麻」に関する私設の小さな博物館。2001年栃木県那須に開館し、2020年一般社団法人化。資料や遺物の収集、様々な形での情報発信を行うほか、各地で講演、麻糸産み後継者養成講座などのワークショップを開催している。著作に「日本人のための大麻の教科書」(イーストプレス)「大麻という農作物 日本人の営みを支えてきた植物とその危機」「麻の葉模様 なぜ、このデザインは、八〇〇年もの間、日本人の感性に訴え続けているのか?」。日本民俗学会員。
https://twitter.com/taimahak
https://www.facebook.com/taimamuseum/
https://www.instagram.com/taima_cannabis_museum

「大麻取締法改正」で少し見えた希望と新たな懸念

大麻博物館:近年、大麻というテーマを取り囲む状況は激変しています。海外を見れば「グリーンラッシュ(*)」が大きな流れとなり、日本でも大麻取締法の改正が決定しました。

私たちは、「日本人の衣食住を支えてきた農作物」という民俗学的な領域をメインに活動しているものの、「麻」や「ヘンプ(*)」といったワードではなく「大麻」というワードを掲げていることもあり、こういったオープンな場で話すことはこれまで少なかったです。今回声をかけてもらったことも含め、近年少しずつ、何かが変わってきたのかなとも思っています。ざっくりとした質問で恐縮ですが、日本の現状についてどのような印象をお持ちでしょうか?

グリーンラッシュ:北米を中心とした、大麻合法化によって加速する大麻ビジネス。すでに多くの雇用、莫大な税収を産み出している
ヘンプ:産業用大麻の別称。酩酊作用がほとんどない品種で、生育時に環境負荷が少ないバイオマス(生物資源)として、広く注目を集めている

宮台:僕は数年前、TBSラジオの番組で「大麻解禁」を唱えました。大手メディアではまだ真正面から解禁論を唱える人がいなかったので、当時のプロデューサーがとても慌てていたのを覚えています。それも一つのきっかけだったかもしれませんが、その後に大麻の解禁を促すような方向での記事が、さまざまなメディアに出たのはいい流れだったと思います。

ただし当時の記事は海外の翻訳物を含めて、グリーンメディカル的あるいは民間療法的なものとして伝統のある大麻の使い方が、日本で許容されないのはおかしいのではないかというものでした。僕もその線で、いくつかの番組で日本の大麻行政がいかにデタラメなのかという主張をしてきました。

中には、科警研系の御用学者が出演して「大麻を使うと脳に穴が開く」と発言するなど、横にいた僕が腰を抜かすような、海外に恥を晒す番組もありました。さすがに厚労省もこの恥さらし状況はヤバいとして「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を去年から作って法改正を検討中です。

大麻博物館:早ければ今年の春に改正法案が施行されると聞いていましたが、コロナ対応で厚労省が忙しくなってしまい、延期されているようです。

宮台:いずれにしても、医療用の大麻製剤(*)を解禁する代わりに、バーター取引的なかたちで、今度は所持罪だけじゃなくて使用罪(*)も創設し、法的な枠外に出た場合には厳罰という形になろうとしています。行政官僚の「規制権益」と「無謬信仰」という、ありがちな光景です。日本社会の伝統的な劣等性のなせるわざです。

ところが、今年3月17日、ケミカル(化学合成)で組成を変質させた改造版THC(*)であるHHC(*)が、ようやく規制されることになりました。HHCは法的に規制されていなかったので、インターネットで堂々と売られていました。規制に至るまでの数週間、各所で投げ売り状態でしたよね。

これはまずい流れです。「大麻解禁」を唱えていた多くの方々も困惑しているでしょう。グリーンメディカル的あるいは民間療法的な大麻というイメージが、急速に変質しつつあることがまずいんです。HHCは規制されましたが、今後もどんどんケミカルに加工された強化版THCが出てくると思います。

大麻製剤:大麻に含まれる成分、カンナビノイドから製造されるいわゆる医薬品。G7諸国において、日本のみ承認されていなかった
使用罪:現行法では大麻の所持と栽培を禁じており、使用に関する罰則はない
THC:テトラヒドロカンナビノール。カンナビノイドの一種で精神作用をもたらす
HHC:ヘキサヒドロカンナビノール。こちらもカンナビノイドの一種で精神作用をもたらす

大麻を、企業のカネ儲けや政府や自治体の税収増という「カネの問題」として考える人たちが、世界中に山のようにいます。カナダは嗜好用大麻を解禁しましたが、基本的には「資本の論理」プラス、税収増と統治コスト減という「統治の論理」です。HHCの投げ売り問題も文化や価値観と関係なく、「今なら売れるぞ!」と色めき立ったもの。情けないです。

長らく文化や価値観の問題として語ってきたのに、どうすればカネを儲けられるかという話に収斂しつつあります。「大麻合法化の医療用から嗜好用への拡大があってもいいのでは」と語ってきた側にとって有害な展開です。例えば、ひと口に「大麻」といっても、CBD(*)なのか、THCなのか、HHCなのか、ヘンプなのかがぐちゃぐちゃになりつつある。

民間療法的な部分を後押しする流れで長い間議論してきたのに、儲けたい人たちによるケミカルな大麻加工が進み、それに規制当局が神経をとがらせる状況が広がっています。だから、「大麻解禁」を言うだけでは駄目で、何を解禁してほしいのかをはっきりさせないといけなくなった。そのぶん説得コストがかかるという意味で、面倒くさいことになりました。

CBD:カンナビジオール。カンナビノイドの一種だが精神作用をもたらさない。日本でも流通しており、近年では100社以上が参入するほどの人気となっている

次ページ:嗜好用大麻・ベーシックインカム・娯楽デバイスからなる「新しい統治」

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