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『エルデンリング』はなぜ1200万本売れたのか。「難しさ」もシェアするSNS時代のゲーム論【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(13)
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  • 2022.03.19
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『エルデンリング』はなぜ1200万本売れたのか。「難しさ」もシェアするSNS時代のゲーム論【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(13)

Jini

ゲームジャーナリスト

note「ゲームゼミ」を中心に、カルチャー視点からビデオゲームを読み解く批評を展開。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」準レギュラー、2020年5月に著書『好きなものを「推す」だけ。』(KADOKAWA)を上梓。
ゲームゼミ
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フロムソフトウェアらが開発し、2月25日に発売されたアクションRPG『エルデンリング』が好調だ。世界出荷本数は1200万本、国内だけでも100万本を超え、ディレクターの宮崎英高は「とても驚いている」とコメント。世界的にも1000万本を超える作品は極めて稀で、あの任天堂の『リングフィット・アドベンチャー』(1353万本)にも匹敵する。

フロムソフトウェアは決して大きな企業ではない。本社は笹塚の中規模オフィスビル内にあり、従業員数も2021年6月時点で332名。もちろん共同開発のバンダイナムコを含め、本作にはフロム以外にも様々な企業が携わっているといえ、カプコン(3152名)任天堂(2621名)といった誰もが知る大企業の約10分の1規模の会社が、1000万本を売り上げる作品を完成させたのは、衝撃的だ(なお、フロムが中小企業かどうかについては、GCC'18「複数タイトルの開発を維持しつつ大規模化に適応した中小企業エンジニアの取り組み」より引用)。

さらに『エルデンリング』は万人受けするようなタイトルではない。『氷と炎の歌』などで有名なジョージ・R・R・マーティンが参加した本格的なダーク・ファンタジーの世界を舞台に、過酷極まる戦いが繰り広げられる。決して簡単なゲームではなく、筆者自身もプレイしていて何度もゲームオーバーを迎えた。

そんな中規模のスタジオが作り上げた、硬派なダークファンタジーのゲーム『エルデンリング』は、一体どうして1200万本も売れたのか。

「本作が純粋に面白い、優れた作品だから売れた」それは紛れもない事実だ。本作の魅力については、すでに多くのメディアで論じられている。しかし、「良いものだから、売れる」なんて単純な市場はどこにもない。ゲーム業界においても同様で、だからこそ『エルデンリング』が「売れる」には、マーケットやコミュニティと関連した大きなポイントがあったと考えるべきだろう。それは一体何だろうか。

マーケティングの限界とSNSへの挑戦

ゲームの「売り方」、つまりプロモーションにはさまざまなアプローチが存在する。メディア等に出稿される広告の量であったりとか、ゲームシリーズ(IP)のブランド力、また「Metacritic」などのレビューサイトに反映されるゲームメディアによる事前の評価などだ。

この点『エルデンリング』は、プロモーションの規模は十分だったと言えるだろう。特に共同開発のバンダイナムコによるれば、独自の海外ネットワークを駆使したマーケティング能力を活かし、「14言語の同時展開」や「発売前のネットワークテスト」を実現。さらにフロムには『DARK SOULS』などの実績があり、『エルデンリング』に関してもMetacriticで100点中96点(2022年3月、PS5版)を記録するなど、一般的なゲームファンには十分認知されるタイトルだった。

とはいえ、単純に人気作品の続編を大量の広告で宣伝すれば売れるのかといえば、そこまで単純でもない。従来どおりのマーケティングではよくて数百万本が限界であり、1000万本の大台にはどんな大企業ですら中々届かない。1000万本に到達するにはただのマーケティングでは届かない層、つまりユーザーが自発的にSNSで話題を拡散する必要があった。

インターネットの口コミからゲームが「売れた」例は少なくない。典型的な例は、2020年に発売され3000万本以上も売り上げた『あつまれ どうぶつの森』だ。穏やかな無人島で自由気ままにすごす平穏な内容ながら、マイデザインやファッション、インテリアなど自分のオリジナルを作れる要素が多く、InstagramなどSNSで自分だけの島や家を共有する遊び方が作品のヒットを後押しした。

また、2018年発売の『Among Us』も口コミから大きく広がった作品だ。インディーゲーム規模の予算からほとんど広告などなく、従ってリリース当初は全く話題にならなかったものの、徐々にそのアートの秀逸さやお手軽さがSNSで話題となり、更にYouTubeやTwitchなどの配信サイトでインフルエンサーがプレイすると人気が爆発。2020年には2億ダウンロードを突破した。

全ての作品がそうと限らないが、現代のゲームのセールスにはSNSでの話題性が強く影響する。実際、PS4のコントローラーから導入された画面を撮影できる「SHAREボタン」や、多くのゲームソフトにはユーザーが自由にゲームの世界を撮影できる「フォトモード」が存在するなど、ゲームハードやソフトメーカーがユーザーにSNSで共有してもらおうと腐心しているのがその証左だ。

次ページ:「難しいゲーム」と「情報共有」のシナジー

 

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