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「オミクロンはただの風邪だろ!」「病床逼迫してるんだよ!」の罵り合いをせず早期に経済再開するために必要なこと【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(28)
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  • 2022.02.17
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「オミクロンはただの風邪だろ!」「病床逼迫してるんだよ!」の罵り合いをせず早期に経済再開するために必要なこと【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(28)

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年生まれ。京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感。その探求のため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、カルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働く、社会の「上から下まで全部見る」フィールドワークの後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングで『10年で150万円平均給与を上げる』などの成果をだす一方、文通を通じた「個人の人生戦略コンサルティング」の中で幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。著書に『日本人のための議論と対話の教科書(ワニブックスPLUS新書)』『みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか(アマゾンKDP)』など多数。

新規感染者数が徐々にピークアウトしはじめる中、一刻も早い経済・社会再開を望む声が高まっています。一方で、医療関係者を中心に慎重な声も根強い。

この記事は、その辺りの議論のスレ違いを整理して、日本国ができるだけ早く経済・社会の平常化に向かっていくために考えるべきことは何なのかを提示する目的で書きます。

私は医療関係者でなく経営コンサルタントなのですが、「PCR検査が増えない理由の考察(2020年4月)」、「反ワクチン派への向き合い方(21年7月)」など、コロナ禍において社会的に混乱している議論を整理するための記事を何度か書いて、医療関係者の方から「専門外の人でここまでわかってくれている記事はなかなかない」などと言っていただけたことがありました。

今回も、ウェブメディア・FINDERSから「もう一度現時点でのコロナ関係の議論を整理する記事を書けませんか?」と依頼されたので書きます。

一部の医療関係者には「部外者が口を出すな」と言われそうですが、しかしコロナ関係の議論を、「医療関係者内だけ」でなく国家・社会運営レベルでスムーズに行うために必要なことは、まさに「経営コンサルタントの専門分野」的な要素があるはずです。

特に「日本人の集まりである会社や組織」のコンサルティングをしてきた経験から言うと、

「改革派(今回の場合経済再開派)」が無理に押し込もうとすればするほど、逆に意固地になって最も保守的な見積もりに引きこもってしまう

…ようなことがよくある。

マンガっぽく表現すると、以下のような感じになるのが「日本社会あるある」なんですね。

日本社会を生き抜いてきた読者の方なら、このマンガ↑のような情勢になっている場面にしょっちゅう遭遇してきたことでしょう。

過去30年ぐらいの日本は、こんな感じの相互不信が募る結果として、罵り合いだけがヒートアップして結局何も変わらない閉塞感が続く…という事を繰り返してきたのではないでしょうか。

この「日本社会あるある的硬直状態」のまま長い時間が経ち、他の国から半年遅れぐらいでやっと経済再開ができる…というようなことはぜひとも避けたいので、経済再開派の方も、あるいは慎重派の方も、医療関係者の方も、一度冷静になって読んでいただければと思います。

1:日本が欧米のようにノーガード戦法へ移行できないワケ

とりあえず普通に生きている非・医療関係者の気持ちで言えば、「英米などが完全に“ノーガード戦法”に移行しつつあるのになんで日本は!」というのは自然な不満だと思います。一刻も早く日本もそうなっていきたいですね。

ただ、「慎重派」の意見を聞いてみれば、英米などのようには今すぐにはできない理由も現時点ではあるんですね。まずはそれを整理してみましょう。

上記はOur World in Dataというサイトに掲載された、ワクチンブースター接種の人口100人あたり接種数ですが、英国や北欧など「完全ノーガード戦法」に移行した国は軒並み非常に高い接種数となっています。日本は急激に追い上げてはいますが、もう少しかかりそうです。

「オミクロン株にはワクチンが効かないと聞いたけど?」というような話も出回っているのですが、その辺りについては感染症専門医の忽那賢志氏による記事「結局、オミクロン株に新型コロナワクチンは効くのか?ファイザーとモデルナで効果や副反応に違いは?」が参考になります。

忽那氏の記事で、「経済再開問題」に関連して重要な点をざっくり要約すると以下の2点です。

・オミクロン株でもワクチンの「重症化予防効果」は結構残っているが「感染予防効果」は かなり落ちている。

・特に接種後長い時間(半年以上)経った人の「感染予防効果」がほとんど期待できなくなってしまう点が大問題!(ただし重症化予防効果は依然として残るので接種した意味はある)

上記の点が今の日本でどういう意味を持つかというと、2021年の早い段階で接種を終え、3回目接種が終わっていない高齢者層が、今まさに「ワクチン的には完全ノーガード状態」に置かれてしまっていることになるわけです。東京新聞の2月16日の記事「ワクチン3回目接種「月内ほぼ完了」は絶望的 1日100万回ペースでも計画の半数達せず」や各地の地方紙の記事を見ても、3回目接種が終わっていない高齢者が今はまだ大半であることがわかります。

結果として、確かに「感染者数↓」はピークアウトしつつあるように見えますが…

NHKの新型コロナウイルス特設サイトより、国内の感染者数まとめ(2月16日時点)

一方で、対策病床の使用率は以下のようにほぼ全国で真っ黒に逼迫しており、医療関係者は日々搬送先の決まらない患者と向き合う日々を送っている。

新型コロナウイルス対策ダッシュボードより、新型コロナウイルス対策病床数の使用率(2月17日スクリーンショット撮影)

オミクロンは一部の若い層には本当に「ただの風邪」的な要素があるわけですが、それで日本中あちこちにウィルスがいる状態になってしまうと、「ノーガード状態」になっている高齢者層に次々と感染し、いくらデルタよりは弱毒性だといっても感染者数が増えすぎると重症者用の病床が溢れてしまうことになる。

特に今は、若者経由で広がった感染が高齢者施設の集団感染などを引き起こしていて、感染者数の増減傾向に遅れて重症者数が急激に増える段階になってしまっている。

今後の経済社会の完全再開に向けては、少なくとも「高リスク群の高齢者へのワクチンブースター接種が進むこと」は必須だと思います。

とはいえこれだけだと、「また老人を守るために若者の貴重な人生の時間を奪うのか!」という問題になりますね。先日、また修学旅行などのイベントが中止されて嘆き悲しむ高校生の動画を見て私も胸が痛くなりました。

ではどうすればいいのでしょうか?

次ページ 2:対策をする・しないの「極端な二者択一」に意味はない

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