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「日本の25年落ち軽トラ」がアメリカで大活躍!?熱心なコレクターまで現れる理由【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(28)
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  • 2022.01.29
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「日本の25年落ち軽トラ」がアメリカで大活躍!?熱心なコレクターまで現れる理由【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(28)

「(軽トラのメーカーはそれぞれに良さがあって選択に迷うが)色はブルーと白しかない」と笑うA氏

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott

エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者

兵庫県生まれ。多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に新潮社刊)を発表。『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)など著書多数。翻訳書には糸井重里氏監修の『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経ビジネス人文庫)、レベッカ・ソルニット著『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)など。最新刊は『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)。
連載:Cakes(ケイクス)ニューズウィーク日本版
洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者。

「なぜ日本の軽トラが人気に?」の謎に答えてくれた実業家のA氏

A氏はコマツのファンでもある。ビジネスでどんなに忙しくても、自分で大きな機械を動かして作業をするのが楽しくてたまらないという

数年前からアメリカで日本の軽トラックを見かけることが増えた。しかも、日本の商店の名前が残っているような古いものだ。これらがどこから来て、誰が所有しているのか不思議に思っていたが、持ち主に訊ねる機会がなくてそのまま忘れていた。

最近になってニューイングランド地方(本人の希望で州を特定表記しない)で日本の軽トラックを数多く持っている実業家と知り合った。アメリカでの軽トラ人気について調べる良い機会なのでいろいろと質問したところ、「実際にお見せして説明しますよ」と招待してくれた。ちなみに、アメリカで軽トラは「mini truck」あるいは「Kei-truck (K truck)」と呼ばれている。Keiの日本語での読みがわからず、「キートラック」と呼ぶ人もいる。

軽トラを数多く所有しているA氏は、歯科医としてキャリアをスタートしたが、ビジネスへの興味や情熱の方が強かったために直接の治療からは引退して、複数の歯科医院を経営するようになった。自分が思い描く理想的な歯科医院を建設するために、みずからデザインするようになり、次は理想的な治療環境を達成するために診療用チェアーなどの装具も製造するようになった。思いついたら実現せずにはいられなくなるタイプのA氏の会社は、現在では歯科医院のデザインにおいてアメリカで指折りの大手企業になっている。

実業家として多忙なA氏は農場主でもある。人生で初めてクレジットカードを得た20代の時にニューイングランド地方に古くからある漁村に行き、「誰も買わない大きな土地があったらそれを買いたい」と不動産エージェントにもちかけた。そして、カードで借りられる最高額の5000ドルを頭金にして「のんだくれ」として知られる農場主が放置している約200エーカー(東京ドーム約17個分)の荒れ果てた土地を購入した。

そのままでは使えない岩だらけの土地である。頭金だけでは足りないので、友人4人に「それぞれに広い土地つきの家を建ててあげる」と約束して資金を調達し、実際にそれを実現しただけでなく、合計11の家を建てて販売するという不動産業まで手がけた。残りの土地を少しずつ自分で開墾して農地にし、牧草を育てて羊や鶏を飼うようになった。牧草の収穫時にはアルバイトを雇うが、それ以外の作業はほぼ自分ひとりでこなしているという超人的な人物だ。医師として40年近くフルタイムで働きながら子育てもやりとげたA氏の妻、Jさんは料理の達人でもある。

A夫妻は非常に裕福なパワーカップルなのだが、2人ともまったく飾り気がなく、「温厚でフレンドリーな農家の夫婦」の雰囲気だ。大きな豪邸を建てる財力があるのに、小さな家で暮らしている。小さいけれども絵本にしたくなるようなキュートな家を(アメリカのニューイングランド地方では栽培が難しい)椿や欅、笹で囲んでいる。A氏が軽トラを愛するのには、彼らのこういった価値観が反映しているのかもしれないと思った。

A氏の敷地内にある「私道」

A氏は軽トラを農場の移動用に愛用しているのだが、使うだけでなく日本のディーラーから直接輸入しているのだ。しかも、何度か輸送コンテナ1台分に入るだけ詰めてもらって。

次ページ:輸入が困難で価格も高いのに軽トラが愛されるワケ

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