EVENT | 2022/01/14

日本が誇る「世界一のプラごみリサイクル率」に暗雲!?輸出・焼却にストップがかかり注目されるケミカルリサイクル【連載】ウィズコロナの地方自治(3)

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谷畑 英吾
前滋賀県湖南市長。前全国市長会相談役。...

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谷畑 英吾

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前滋賀県湖南市長。前全国市長会相談役。京都大学大学院法学研究科修士課程修了、修士(法学)。滋賀県職員から36歳で旧甲西町長、38歳で合併後の初代湖南市長(4期)。湖南市の発達支援システムがそのまま発達障害者支援法に。多文化共生のまちづくりや地域自然エネルギーを地域固有の資源とする条例を制定。糸賀一雄の発達保障の思想を社会・経済・環境に実装する取組で令和2年度SDGs未来都市に選定。

44年前の『未来少年コナン』で描かれたプラスチックのリサイクル

「西暦2008年7月、人類は絶滅の危機に直面していた。核兵器をはるかに超える超磁力兵器が世界の半分を一瞬にして消滅させてしまった。地球は大地殻変動に襲われ、地軸はねじ曲がり、5つの大陸はことごとく引き裂かれ海に沈んでしまった」

これは、1978年4月から10月まで放送されたアニメ『未来少年コナン』第1話冒頭のナレーションである。同作品はNHK初の国産アニメシリーズであり、宮崎駿監督の実質的な監督デビュー作だ。

同作品が放送された1978年は、第二次戦略核兵器制限交渉が難航し、多弾頭弾道ミサイルが配備されることで米ソ核戦争の現実味が世相に重苦しくのしかかる、「不確実性の時代」が流行語となった時代であり、超磁力兵器を使用した世界最終戦争というモチーフはリアルを感じさせるものだった。

本稿は『未来少年コナン』論でも当時の政治経済を振り返るものでもなく、2022年の現代日本がいま直面する環境問題を取り上げるものだが、もう少しだけ同作品の説明をお読みいただきたい。

第3話「はじめての仲間」で、プラスチップ島の浜辺に入港した機帆船バラクーダ号の船長ダイスは、集まってきたボロをまとう島民たちに豊富な物資を掲げて演説をする。

「どうだ、素晴らしいだろう。欲しけりゃな、いくらでもやるぞ。ただし、よく働いた奴にだ。どうだ、欲しいか、欲しいか。ほうれ、今回はタバタバ(タバコ)もいっぱい持ってきた。酒もあるぞ。ようし、こいつが欲しい奴は、オレの船をプラスチップでいっぱいにするんだ、わかったか!」

バラクーダ号の水夫長であるドンゴロスは、ダイスの指示を受けて万能土木作業用ロボット・ロボノイドを操縦し、海岸近くの崖に向かう。生気のない島民たちもその後に連なるが、このプラスチップ島は大変動前にはごみ捨て場だったとされ、崖を掘れば大量のごみが発掘されるのだ。島民たちはロボノイドが掘り出したごみの山を分別している。

巡回するダイスは、ごみの山から底の抜けたプラバケツを取り上げて、「こういうのをじゃんじゃん掘るんだ!」と島民たちにハッパをかける。目も虚ろな島民がフライパンや空き瓶を抱えてくると、「ああ、ダメだダメだ。こんなものは再生しても石油にはならねえんだよ。まだわかんねえのかい。いいか、必要なのはプラスチップ!プラスチップ!」と怒鳴りつける。そして、ごみの山に上がって島民たちを睥睨し、「みんな聞けい。ようく働く者にのみお恵みがあるんだぞ、わかったか!」と一段と声を張り上げた。この一言からは商品経済を通じた明確な支配関係が垣間見える。

巨大複合プラント都市インダストリアは、寿命が尽きかけている原子炉で電力を賄っているが、エネルギーはバラクーダ号で運び込んだプラスチップを還元した石油で賄われている。第5話「インダストリア」では、インダストリアに入港したバラクーダ号が、船倉からコンベアでプラスチップスを揚陸し、埠頭に集まった額に焼印の付けられた囚人たちにプラスチップが積載されたトロッコを押させて加工施設につながるレールに乗せる。

加工施設では、ごみを分別しながら、プラスチップを石油に還元するだけでなく、パンや衣類にも加工している。施設に侵入して覗き見たコナンが「パンがどんどん出てくる。プラスチップからパンを作っているんだ」と驚くが、おそらく当時の放送を見ていた子どもたちも驚いたことだろう。何せ、プラスチックからパンを作っているのだから。

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