CULTURE | 2021/06/19

前科8犯のトホホな銀行強盗、服役中に窓口での現金取扱いが終了したことを知らず押し入り【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(26)

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月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

4日前に出所したばかりの60歳男性、カッター片手に銀行強盗

本題の前に、前回のU被告人の判決の話を。弁護人3人は着席しているのに、被告人席が空席なので、「何かあったのかな」と思っていると裁判官が入廷です。そして、

裁判官「被告人が不出頭だと聞いています…」

と、被告人が来ないので判決の言い渡しができない旨を伝えると、弁護人が勢い良く立ち上がって、

弁護人「3人とも辞任します」

と、衝撃的な発表です。この1年間は体調を理由に被告人不出頭で公判延期というのは多々あったけど、判決直前に弁護人が辞任というのは珍しいパターン。審理終わってるから今更弁護人変えても何もできないだろうし、一体何があったのやら。かなり珍しいと思うんだけど、ニュースになってないようなので、ここで報告。

さて、今回の傍聴記です。

罪名 強盗未遂、銃砲刀剣類所持取締法違反
V被告人 住居不定無職の男(60)

起訴されたのは今年3月、V被告人が東京都内のあおぞら銀行で警備員の男性(58)に刃渡り6.9cmのカッターナイフを示しながら、「金を出せ」と脅したが、取り押さえられて未遂に終わったという内容。

検察官の冒頭陳述によると、V被告人は高校を卒業後、職を転々としていたという。前科は8犯で、犯行の4日前に刑務所を出所してホテル暮らしをしていたとのこと。

お金がなくなり、空き巣をするも上手くいかず、コンビニでカッターを購入して目についた銀行に入って強盗を試みたというのが事件の流れになります。

取り調べに対し警備員の男性は、「私は警備員兼受付なので、正面から入ってきた男に対し、『ご用件は?』と声を掛けると、男は無言でカッターを出してきた。一瞬怯んだが、『金を出せ』と言われたので抵抗してカッターを奪った」と供述しているそうです。最初はお客さんとして扱っているので、V被告人は変装してなかったんでしょうね。銀行強盗と言われると、覆面とかサングラスとかのイメージがあるけど、思いつきの犯行だけあって、素顔は丸見え。

一方、V被告人は調べに対し、「窓口ではなかったのでお金はないと思ったが、人質に取ればお金を奪えると思った」と述べているらしい。でも、あおぞら銀行って今年の1月に窓口での現金の取扱いを終了してるんですよね。刑務所にいる間に、世の中が変わってたので、そもそもお金がない銀行に強盗に入った事件ってことになります。何から何までトホホ感が漂っていますね。

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