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木村花さん自殺でも止まらないネットの誹謗中傷。我々は今、凶器を手にしている【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(22)
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  • 2021.04.01
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木村花さん自殺でも止まらないネットの誹謗中傷。我々は今、凶器を手にしている【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(22)

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中川淳一郎

ウェブ編集者、PRプランナー

1997年に博報堂に入社し、CC局(コーポレートコミュニケーション局=現PR戦略局)に配属され企業のPR業務を担当。2001年に退社した後、無職、フリーライターや『TV Bros.』のフリー編集者、企業のPR業務下請け業などを経てウェブ編集者に。『NEWSポストセブン』などをはじめ、さまざまなネットニュースサイトの編集に携わる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)など。

被告の出廷しない木村花さん裁判

恋愛リアリティショー『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演していたプロレスラー・木村花さんが亡くなってから約10カ月。死後もネットで誹謗中傷する人物を突き止めた木村さんの母親・木村響子さんは同氏を相手に裁判を行っている。ただし、被告は出廷していない。テレビの取材に対し、母親は娘が亡くなったというのに、誹謗中傷をするコメントを一つ一つ保存する作業がつらかったと語っていた。

木村さんの死に対しては、哀悼の意と罵詈雑言を浴びせた者たちへの批判が多数書き込まれたが、「SNSの書き込みなんて無視すればいいのに」といった意見もあった。だが、本人にとっては向けられる言葉の一つ一つが鋭い凶器のようなものだった。プロレスの場合、受け身を取ることによりダメージを抑えることはできるが、それができない状態だったのだろう。

批判の理由は、『テラスハウス』で同居する登場人物にキツい言葉を浴びせた、というものらしい。「恋愛リアリティショー」を銘打っているものの、実際は芝居である。木村さんのような激しい性格の役柄もあってこそ作品は面白くなるわけで、演じた役柄に本気で怒るというのはもう「お前らバカか」としか思えない。こうした単純過ぎる人々は刑事ドラマに出演する殺人者にも同様に怒りを覚え、誹謗中傷を浴びせかねない。

そして、死後番組は打ち切られたが、その後も木村さんに対しては「お前のせいで楽しみにしていた番組が終わってしまった」といった書き込みが登場した。なんという低い民度であろうか!

「ネットの誹謗中傷と著名人の自殺」という件では、韓国では2000年代から発生していた。2007年に歌手のユニさんや女優のチョン・ダビンさんがネットの誹謗中傷を苦にして自殺したと報じられた。最近でもKARAのク・ハラさんも自殺した。

日本の著名人はネットの書き込みを苦に自殺した、という件はこれまでなかっただけに韓国との比較で「日本の芸能人メンタル強過ぎ!」などと書かれていた。私が見た分析では、「韓国語は罵詈雑言のバリエーションに富んでおり、心を完全にへし折るが、日本語はバリエーションに富んでおらずそこまで傷つかない」というものがあった。だが、木村さんも自殺しただけに、この説では説明がつかないだろう。

次ページ:軽い気持ちでは済まされない。ネットの誹謗中傷に法整備を

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