CULTURE | 2021/04/01

木村花さん自殺でも止まらないネットの誹謗中傷。我々は今、凶器を手にしている【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(22)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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加速する「ウェブはバカと暇人のもの」

印象深い「ネット絡みの若干著名人の自殺」は、2013年の岩手県議・小泉光男氏(享年56)がある。同氏はブログが炎上し、その後テレビ局からも追い回され、後日自動車の中にて遺体で発見された。

小泉氏がブログに書いた内容は、端的にいうとこんな感じだ。

・県立病院に行き、会計の際、「241番」と呼ばれたことに対してキレた。「ここは刑務所か!」と思ったというのだ。番号ではなく名前で呼べ、と同氏は感じた。

・さらに、支払は1万5000円の上得意なのだから、担当者がこちらに来るべきだと感じた。

・その後クレーム電話を入れるも、待たされた上にエラい人が出なかった

どう考えても小泉氏の言い分はただのモンスタークレーマーなのだが、同氏は県議という立場上、同氏が考える顧客サービスの観点から県立病院の改善に繋げるべく「正義の告発」をしたと自身は感じている。

しかし、このブログ執筆後は非難が殺到。ネットニュースが取り上げるほか、テレビ局も同氏を自宅まで追い掛け回す。県庁には抗議が殺到し、同氏は後に謝罪会見をするに至った。

そして、自殺した。

これについては、「ネットが直接的な原因」とはいえないまでも、ネットを見た人々が一斉に同氏をネット&リアルで批判したことから耐えられなくなったのであろう。そうした意味では小泉氏も「ネット関連自殺」と捉えることができる。

今では「ネットいじめ」「LINEいじめ」といった言葉も登場しているが、人間は誰かをいじめなくては成り立たない存在であることは昨今のネットを見ているとしみじみと感じることである。正直、こんな世界からはさっさと撤退したいが、一応私もフリーのライターとして色々宣伝する必要があるため、ネット投稿は続けている。

私自身、ネットがあるお陰でうまいことやった人間ではあるものの、昨今の「罵詈雑言や誹謗中傷があまりにもやりやすくなった」という状況については危惧している。本来インターネットは「集合知」や「見知らぬ人との出会いをもたらし、イノベーションをもたらす」「ヘーゲルの弁証法を体現するもの」といったポジティブな文脈で捉えられていた。

だが、果たして平成の時代に私が述べた「ウェブはバカと暇人のもの」という真理はさらに加速化し、ついに日本でも木村花さんを自殺に追いやってしまった。

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