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『Apex Legends』も苦しむサイバー犯罪「チート」とは何か。人気ゲームを次々に衰退させる理由と問題点【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(4)|Jini
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  • 2021.03.17
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『Apex Legends』も苦しむサイバー犯罪「チート」とは何か。人気ゲームを次々に衰退させる理由と問題点【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(4)|Jini

今チートが問題視される理由

残念ながら、チートは昨日今日始まった問題ではない。PCゲームにおいては『Counter Strike』や『Quake』といった20世紀のゲームで散見されたし、Wiiの『ポケモンバトルレボリューション』でさえ、DS版の「プロアクションリプレイ」を用いた改造ポケモンが悪用されることもあった。

それでも、今改めてチートが問題となっている理由が『Apex Legends』を中心とした、いわゆる「バトロワ」というゲームジャンルの著しい流行と、コロナ禍においてeスポーツやゲーム実況といった「観る」文化の大きな成長だ。日本のライブ配信者向けのデータやツールを提供する配信技研によれば、2019~20年でゲーム関連コンテンツの視聴時間合計はほぼ2倍増加しており、2020年で最も視聴されたゲームはダントツで『Apex Legends』である。

そしてその『Apex Legends』は、数あるゲームの中で特に甚大な被害をチートにより受けている。中でも伝説的な腕前で人気のあるeスポーツチーム・Crazy Raccoon所属のRas選手が「当分の間ランクはしません チーターがとても多くて一試合に 5パーティーまで見ました。」とツイートしたことは衝撃となり、一時期トレンドに「チーター」という単語が浮上するほどだった。もちろん他の有名プロゲーマー、ストリーマーも配信内外でチートに対する苦々しい思いをこぼしており、実際にプレイせず見ているだけの人までもチートの問題性について怒りを抱いている。

もちろんゲームの運営側もまったく対策をしていないわけでない。さまざまなチートを検出するプログラムを開発するほか、ユーザーの報告に基づいてアカウント停止処分を下すなど試行錯誤しているが、どれもイタチごっこという他ない。チーターという見えない脅威に対して、圧倒的に人員が不足しており、そこに予算を割けば肝心のゲーム開発が進まないという悪循環に陥る。『Apex Legends』は基本プレイ無料でアカウントをいくらでも作れるため、チーターにとってBAN(アカウント停止)は痛手でさえないのも苦しい。

中にはRiot GamesのPCゲーム『VALORANT』のように、ゲームプレイ前に必ずチート対策プログラム「Vanguard」のインストールが求められるといったケースもあり、機関銃でいたちを射殺するような対策も取れないことはない。ただこれも相当なコストと技術力が費やされたものであり、中規模のゲームスタジオでは再現することは難しいだろう。

本格的なチート対策には、やはり国の、それも国際的な枠組みが必要不可欠ではないかと思う。先に述べたとおり、日本を含む各国においてチートはサイバー犯罪とされ、逮捕例もある。そのうえで、ゲームをeスポーツという競技の枠組みで行政が注目しているにも関わらず、チートは他スポーツにおけるドーピングに匹敵する脅威であるという認識が彼らに不足している。今やオリンピックでeスポーツを採用させたいという目標のもと日本eスポーツ連合(JeSU)が動いているが、彼らもチートに対する具体的な対策や成果も出せておらず、チートへの危機感が欠如しているのではないか。

またオンラインゲームで出会うのは同じ日本人だけとは限らず、日本であればアジアサーバーを通じて中国、韓国のチーターとも遭遇する。人気ゲーム『PUBG』のクリエイターである、ブレンダン・グリーンは「チーターの大半は中国から来ている」と発言し、人気配信者のstylishnoobも同じく「中国のサーバーは隔離すべき」という意をツイートした。2021年から中国では全オンラインゲームに実名認証を義務付ける予定のため、少しでも状況が改善されることを祈るしかない。もちろんチーターは国籍問わず存在し、日本でも嬉々としてチートを使う様子を動画で配信する者さえいる。

チートはオンラインゲーム文化において極めて重大な問題である。それはゲームの競技という本質そのものを否定するものでありながら、一度手を出した加害者はやめることができず、従って20年以上も幾多のゲームコミュニティを破壊してきた。それが今、eスポーツやゲーム実況という「観る」文化の大きな障害となっているにも関わらず、ゲーム企業や国が対策をしようにもほとんど成果が得られていない。

そもそもチートがここまで生き延びた理由は、何と言ってもその危険性や問題の深刻さが非ゲームプレイヤーにはわかりにくいことだ。ここがドーピングや麻薬と違うところで、実際にゲームをハックし、都合よく改竄することが今ひとつ想像しづらい。だからチーターへの非難はいつも小規模で、彼らへの社会的制裁も進まなかった。

チート行為とは、ある競技に真剣に挑戦する多くの人間の熱意を否定する暴力そのものである。チートを軽視することは、ゲームそのものを、ひいては競技そのものを軽視することと、何も変わりない。その本質は、仮にゲームを遊ばない人にとっても他人事でもなければ笑い事でもない。本来チートは、社会が一丸となって撲滅するべき社会悪なのだ。


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