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元サッカー日本代表が導く“腸内環境×テック”の最前線 鈴木啓太(AuB株式会社)【新連載】スタートアップ&ベンチャー 異能なる星々(01)
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  • 2021.02.26
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元サッカー日本代表が導く“腸内環境×テック”の最前線 鈴木啓太(AuB株式会社)【新連載】スタートアップ&ベンチャー 異能なる星々(01)

VUCAと呼ばれる不透明な時代のただ中で、新たな道を切り拓くため立ち上がった有志たち。彼らは何を見据え、前例のないゲームチェンジへ挑むのか。独自の発想で時代の先端へと踊り出たクリエイターに光を当てた前企画「テック&カルチャー 異能なる星々」(全17回)に続き、新進気鋭のスタートアップ&ベンチャーにファインダーを定め、そのビジョンをひも解く連載インタビュー。

元サッカー日本代表の鈴木啓太が代表を務めるヘルステック・スタートアップAuB(オーブ)。その第一歩はなんと、トップアスリートたちに「うんち(便)ちょうだい」と頼んで回ることだったーー。

“第2の脳”と言われる程、心身に大きな影響を及ぼす腸の働き。自身の経験から腸内細菌の役割に着目し、AIによるDNA解析で画期的なサービスやプロダクトを展開する。「アスリートの便には、“茶色いダイヤ”の価値がある」。果たして、その意味するところとは。

聞き手・文:深沢慶太 写真:松島徹

鈴木啓太(すずき・けいた)

AuB株式会社代表取締役、元プロサッカー選手。1981年、静岡県生まれ。2000年に東海大学付属静岡翔洋高校を卒業後、浦和レッドダイヤモンズに加入し、01年にJリーグ初出場。以後、浦和レッズでは09-12年にかけて主将を務め、Jリーグベストイレブンにも2度輝くなど、16年間に渡ってプレーする。サッカー日本代表としてもオシムジャパン(06-07年)で唯一、全試合先発出場を果たすなど活躍。15年、アスリートの腸内環境を研究するスタートアップAuBを共同設立。翌年1月に現役引退後、代表取締役に就任。元オリンピック選手の腸内環境から新種のビフィズス菌を発見するなど独自の研究成果を挙げる一方、ヘルスケア、フードテック事業を展開する。

母の言葉「自分の便を見なさい」がピンチを救った

ーー 鈴木さんはサッカー日本代表やJリーグ 浦和レッドダイヤモンズのキャプテンとして活躍後、アスリートの腸内細菌を研究するスタートアップAuB(オーブ)を設立されました。腸内細菌といえばヘルステック分野でも話題の領域の一つですが、具体的には、どのような事業を展開しているのでしょうか。

鈴木:弊社の目的はアスリートの腸内細菌を研究し、その成果を広く社会に向けて実装していくことにあります。腸内細菌にまつわる研究はここ日本でも大きく発展を遂げていますが、その中でもアスリートの腸内フローラ(※1)について研究しているベンチャーは世界的にも珍しく、国内では弊社だけだと思います。

ではなぜ、アスリートの腸内細菌なのか。アスリートは競技のレベルを上げ、ワールドカップやオリンピック出場を目指し、さらには優勝を目指すなどの努力の一環で、自分の肉体と精神のコンディショニングに何よりも力を注いでいる人々です。僕自身も蓄積してきたアスリートの知見をファンやサポーターをはじめ、一般の方々にも広く役立ててもらいたいと思い、この事業をスタートさせました。

(※1)腸内フローラ(腸内細菌叢)…ヒトの腸内には1千種類・1千兆個以上、重さにして1〜2kgもの細菌群が生息する。多種多様な菌種が腸壁を埋め尽くしている様子を花畑に例え、「腸内フローラ(flora=花畑)」という呼び名が定着した。

AuB発、腸内環境を整えるサプリ「AuB BASE」。アスリートの腸内環境を解析し、健康的な腸内細菌バランスのカギを握る酪酸菌を中心に29種の菌を独自配合している。

ーー 設立は2015年、現役選手としてプレーしながらの創業でしたが、ご自身でもお腹の状態には人一倍、気を遣っていたそうですね。

鈴木:きっかけは、調理師の母に「人間は腸が一番大事」「自分の便を見なさい」と言われて育ったことに遡ります。僕自身、理屈はわからないままにそれが習慣化して、お腹が快調だと身体全体が動きやすいと感じていました。高校生の頃には乳酸菌入りのサプリメントを飲み始め、その後もお腹を冷やさないよう、食後に暖かい緑茶を飲んだり腹巻きをして寝たり。海外遠征にも緑茶と梅干しを欠かさず持参していました。いわば、お腹でコンディションを作っていた感覚ですね。

その効果に気付かされたのは04年、アテネ五輪アジア最終予選UAEラウンドの最終戦であるUAE戦を控えた前日のこと。現地の水や食事が体に合わなかったのか、疲れやストレスが影響したのか……代表選手23名のうち18名が下痢を発症してトイレに籠もる事態になってしまいました。非常に苦しい戦いとなりましたが、僕自身は体調を崩さずに済んだのです。

最高のパフォーマンスで試合へ臨むことが求められる選手にとって、コンディションが整っていない状態は怪我と同じ位、致命的な問題です。その体調のバロメーターとして、“便”は非常にわかりやすい指標になる。これは何も特別なことではなく、みなさんだって、便秘気味だったり下痢をしたりすれば「おかしいな」と思いますよね。赤ちゃんの場合も、親はうんちを見て健康状態を察知します。古代ギリシアの医学者ヒポクラテスも「すべての病は腸から始まる」と述べている程です。

次ページ:人それぞれの“お腹の調子”をデータ化する発想

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