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バグ多発で酷評を受けた『サイバーパンク2077』。誰が騙し、誰が騙されたのか【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(3)|Jini
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  • 2021.02.05
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バグ多発で酷評を受けた『サイバーパンク2077』。誰が騙し、誰が騙されたのか【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(3)|Jini

メディアの責任

現状、多くのゲームファンはゲームを専門的に報道するメディアから、日々新作などの情報を集めている。つまり、ゲームメディアはゲーム企業とファンをつなぐ文字通りの“媒体”として機能している。

ただ、今回の『Cyberpunk 2077』をめぐり高まりすぎた期待に対して、ゲームメディアの責任がなかったと思えない。イベント等で発表される内容をあまりに楽観的に解釈し、インタビューでも全て順調だというCD Projektの姿勢に対して踏み込めなかった(筆者自身、こうした加熱しすぎる『Cyberpunk 2077』の報道を疑問視し、同作品が目玉のように扱われていた2019年の東京ゲームショウにおいて、あえてインディーゲーム等を中心に紹介した記事を掲載している)。

それどころか、発売直前にメディアが実際に実機デモやレビュー用に渡された「現実のCyberpunk」をプレイしてもなお、今ユーザーが批判しているような問題の多くを指摘しなかった。むしろ、トレイラー等でメディアが解釈した「夢」を彼ら自身、そのまま遊んでいると錯覚しているふしさえ、一部で感じた。

『Cyberpunk 2077』の問題として「PS4、Xbox One版に問題を抱えながら、配布されたレビュー用サンプルはPC版だった」ことがしばしば指摘されている。しかし、パフォーマンスこそ大した問題でないにせよ、バグの多さや、先述したナイトシティのインタラクティビティ、分岐するストーリーに、個性を反映するロールプレイなど、PC版・コンソール版に共通したゲームプレイの本質に関わる重要な問題点さえ、画期的な要素であるかのように絶賛するレビューが多く掲載された。これは私自身、自費で購入したPC版をプレイし、レビューを書いた経験から少し好意的すぎるのではないかと思われた。

パブリッシャーに偏ったゲームメディアのこのような姿勢には主に2つの原因が考えられる。まずCD Projektは日本の主要なゲームメディアの大半に、「Cyberpunk2077特集ページ」を作らせる程、海外のゲームパブリッシャーとしては異例といえる規模で広告を展開していた点が挙げられる。ゲームメディア自体も営利企業であるため、広告のクライアントに対して表立った批判的な報道をすることが難しい。(ただし、日本もごく一部メディアはユーザーからの批判等も取り上げていた。)

もう1つの原因は、ファンコミュニティに対して今のゲームメディアが怯えているためだろう。単純にビデオゲームを批判すること自体、ファンコミュニティからは「自分たちの好きなゲームを批判するあのメディアは敵だ!」というような反発を招く要因となっており、実際に『Cyberpunk 2077』を絶賛するメディアも「痛い目を見た」ケースが多々ある。筆者自身、編集者としてメディアの運営に関わることもあるが、広告スポンサーの不興を買うよりSNSでの炎上を恐れる姿勢には、同意できないにせよ同情はできてしまう。皮肉にも、ファンの期待を集める「神話」を自分たちで作った手前、ますます「引くに引けない」状況に陥ってしまったのではないかとも考えてしまう。

即ち、メディアはパブリッシャー(スポンサー)とコミュニティ両側の板挟み状態にある。本来メディアは読者のために活動するものといえ、企業の広告費なしでは運営ができず、そちらに寄れば実態とかけ離れていく。仮に作品を無思慮に批判すればファンから反感を買う可能性もある。とはいえ、今回の返金対応にまで至った前評判から販売後にファンが感じた失望に対し、ゲームメディアがパブリッシャーの作る大げさな広告をそのまま報道し、メディア主導で作品を評価するレビュー記事においても(PC版における)事前の広告内容との明らかな差異を指摘できたメディアが少なかった中、CD Projektの責任のみ追求するのはアンフェアではないだろうか。

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