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「自民党は特権階級」「医療崩壊はウソ」社会を混乱させる陰謀論、免疫力をつけるにはどうすればいい?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(11)
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  • 2021.02.01
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「自民党は特権階級」「医療崩壊はウソ」社会を混乱させる陰謀論、免疫力をつけるにはどうすればいい?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(11)

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倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元小学校教員がはじめた塾がキャンセル待ちが続出する大盛況となるなど、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。アマゾンKDPより「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」、星海社新書より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』発売中。

陰謀論が蔓延する社会を良くするためには、何に気をつければいいのか

最近の日本という国について、日本人としてあまり「うまくいっている」と感じていない、一種の「機能不全状態」にあると感じている人が増えているように思います。

特に最近のコロナ対策の混乱ぶりや、アメリカ大統領選挙に関する陰謀論を真剣に信じ込んでいる人が、ある程度知的と見なされていた保守メディアの中にもかなりいた(さすがに完全にバイデン大統領が就任してからは少しおとなしくなったようですが)状況…などに頭を抱えている人も多いでしょう。

このFINDERSというウェブメディアの編集者と次の連載記事の相談をしていたら、

再び感染者が増加した新型コロナか、アメリカ大統領選挙の混乱についてのどちらかでお願いしたいですね

と言われたのですが、この2つの大テーマは実に「同じ問題」を抱えていますよね。

それはいわゆる「陰謀論」の問題です。

普通の「主流メディア」で扱われる世界観とは全然違う「真実」を俺は知っているぜ!と主張する人たちがインターネット上に溢れかえっていて、

「政治的立場は違えど“この程度”は事実として共有した上で話せますよね?」

といった常識を吹き飛ばしてしまう。 

新型コロナと米大統領選、どちらの「陰謀論」も、最初のうちは笑って「こういうのも自由主義社会であることのコストのひとつだろう」とか言っている人も多かったですし私もそう思っていたのですが!

しかし、コロナ対策がここまで混乱を繰り返したり、単に知る人ぞ知るネットの奇人変人だけがハマってるだけじゃなくて日本の保守系独立メディアの大半がアメリカ大統領占拠の陰謀論を真剣に論じている状態には、ちょっとさすがになんとかしないと…という気持ちになってきました。

新型コロナ対策にしろ大統領選挙についてにしろ、「現実からかけ離れた陰謀論」が蔓延している状況では、「民主主義的な決定」をすればするほどどんどん「現実からかけ離れた現状認識」に基づいて突き進んで行ってしまうわけで、こんなのならもう中国みたいな権威主義社会で「少数の賢いエリートが全権を握る社会」にするしかないんじゃないか? というような風潮にさえなってしまいます。

それでも私たち日本人があくまで民主主義社会を維持していきたいなら、

私たちの社会は「陰謀論の蔓延」とどう対峙していけばいいのか?について一度根本的なところから考え直してみる必要がある

ところまで来ていると言えるでしょう。

その「陰謀論の蔓延」に打ち勝つことで、日本社会はコロナ対策にしても、アメリカ新大統領の政策がもたらす国際社会の変化に適切に対応していくことも、スムーズに行えるようになるでしょう。

ちなみに初めての方に少し自己紹介をすると、私は20年近く前に学卒でマッキンゼーという外資系コンサルティング会社に入ったのですが、そこで行われるような「グローバル経済最前線」的な社会の運営の仕方と「日本社会の基盤的な部分」との間のギャップがあまりに大きく感じて精神を病んでしまい、

「このまま続けていたら、社会がどんどん2つの何の関わりもない集団に分断されて罵り合うようになってしまうんじゃないか?」

…という危機感を猛烈に感じ(それは結局“トランプ派とそれ以外との対立”といったかたちで世界中の大問題になるわけですが)、その「両者」を繋ぐ社会運営のあり方のビジョンを求めて、一時はわざわざカルト宗教団体に潜入してみたり、ブラック企業で働いてみたりして「日本社会のリアリティ」を体験したあとに、中小企業向けの経営コンサルタントとして生活してきました。

つまり、「グローバル資本主義の世界」も「ローカル社会における人間関係や経済活動」も両方体感しつつ、その狭間で生きてきたわけで、「分断された2つの世界を繋ぐ」のは私のライフテーマなんですね。

まさに「社会に陰謀論が生まれる源泉としての分断」の最前線で色々と模索してきた人生といえると思っていますし、おそらくこの記事を読んでいる方のように「なんでこんなに陰謀論が流行るのかそもそも体感として理解できない」という知的なキャリアの人には「なるほど、そこに気をつければいいのか!」というような視点を提供できるものにできるはずです。

1:「フクシマ」の時とは違う希望も見えてきている

最近、ワクチンに関する過剰な危険性をアピールする言論(これも陰謀論の一種だと思いますが)を安易に掲載したメディアに対して、全国の医療者や専門家などがスクラムを組んで反対し、次々と撤回させたという出来事がありました。

また、ツイッター社は公式ブログにおいて、新型コロナワクチンに関する陰謀論をSNSから排除していくポリシーを発表しています。

もちろん科学的裏付けのある、危険性の検証記事があることは必要ですし、ワクチン摂種が最終的には強制ではなく任意であるべきだという考え方にも深い意味があると思いますが、科学的に間違った恐怖心を煽り立てる事でアクセスを集めようとするような悪意に対して、社会がちゃんと「NO」とい言える体制ができつつあるのは非常にポジティブなことだと言えるでしょう。

いろいろな人が比較していますが、東日本大震災の時の原子力関係においては、放射線に関する専門家の数が医療関係者の数と比べるとあまりに少なすぎて、当時は「スクラムを組んで非科学的に煽り立てる言論を抑え込む」機能を十分に果たすことができませんでした。

結果として、原子力の活用に賛成にしろ反対にしろ、過剰なゼロリスク信仰の中で合理的な決定が混乱し続けることになってしまいましたよね。

今回は「フクシマの時」とは違う可能性が見えてきつつあるのは、非常に希望が持てます。

特に現代社会で問題なのは、「いわゆる“右や左”といった党派性」が、「現実に対する客観的な認識」を吹き飛ばしてしまう状況に陥ることですよね。

・今の日本政府は「邪悪な敵」だから、奴らがやっている政策は必ず間違っているはず、間違っているべきだ。情報を隠しているはずだ。
・サヨクどもは「邪悪な敵」だから、奴らが言っていることは必ず間違っているはず、間違っているべきだ。扇動して社会を崩壊させようとしているに違いない。

…こういう「党派性」が先にあって、それに合った「敵を全否定できる情報であればデマでもなんでもいい!」という感情を暴走させてSNSで仲間内で盛り上がり、「それみろ、やっぱり“アイツラは完全に“邪悪な存在”なんだ!”」と盛り上がる…ということを繰り返しているうちに、「現実に関する客観的な認識」は遥か彼方に吹き飛んでいってしまいます。

結果としてそこに「陰謀論」が生まれていくことになる。

ではどうすればいいのでしょうか?

私たちの社会が、「陰謀論」に対する免疫力をつけるにはどうすればいいのでしょうか?

次ページ 2:「右VS左」から「現実派VS妄想派」への対立構図の変化に持ち込んでゆく

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