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【2022/7/21 追記】トランス女性選手が陸上競技女子の枠でトップ独占し、生物学的な女性選手が苦境に。スポーツの公平性を訴える動画が話題に
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  • 2020.12.08
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【2022/7/21 追記】トランス女性選手が陸上競技女子の枠でトップ独占し、生物学的な女性選手が苦境に。スポーツの公平性を訴える動画が話題に

※2022年7月21日追記(FINDERS編集部)

文:滝水瞳

ゲイやバイセクシュアル、トランスジェンダーなどのいわゆる性的マイノリティに対しての理解が、少しずつ世間に広まりつつある。しかしここにきて、別の側面から公平性が失われていると疑問が呈されていることをご存じだろうか。

米国の右派・保守系メディア団体「PragerU」が先月16日に公開した動画が、大きな物議を醸している。タイトルは「女子スポーツの終焉」だ。

 “性別”に疑問「生物学的には勝てない」

米国コネチカット州に住むセリーナ・ソウルさんは、8歳の時から陸上競技をはじめ、家族やコーチの支えを受けながら鍛え上げ、2018年には高校女子陸上競技大会のトップ5に入るほどの実力をみせた。

しかしセリーナさんは、その年の州選手権である大きな壁にぶち当たる。セリーナさんを負かした1位と2位の選手が、トランスジェンダーの女子、つまり性自認は女性だが生物学的には男性とされた選手たちだったのだ。彼らは2年連続で女子の枠で1位と2位を獲得。結果、この2人は合計15種目の州選手権でタイトルを獲得した。

ここでセリーナさんの中に疑問が浮上した。「男性が女性と競い合うのは公平か?」。生物学的な性別の違いが競技結果に影響を及ぼすと考えた。

セリーナさんは、放課後や週末に友達と遊びたい気持ちを抑え、毎日2時間以上のトレーニングを欠かさず、週末は朝練や大会に出場した。まさに彼女の青春時代は、100メートル走と200メートル走でコンマ何秒を削ることに費やされていた。

仮にそのトランスジェンダーの1位と2位の選手が男子チームに出たとすれば、出場する資格が得られなかったレベルだったと話すセリーナさん。男性と女性の体力は生物学的な違いが明らかで、とてもかなわない部分があると語った。例えば、世界最速の女性陸上選手と称される米国の金メダリストのアリソン・フェリックス選手は、400メートル走の自己ベストが49.26秒だが、2018年のデータによれば、この世界記録を米国内の男子高校生約300人が追い抜かれるという。

「アスリートに公平性を」訴訟へ

今のままでは、女子選手が失うのはトロフィーやメダルといった栄誉だけでない。セリーナさんは、奨学金を得られるチャンスも減り、競う場さえもなくなると危惧している。実際、セリーナさんは2019年の選手権でトランスジェンダー女子が1位2位を占めたため、その後のニューイングランド選手権に参加する機会を失った。このために、トップコーチからスカウトされる機会を失い、奨学金を得る機会も失ったとのこと。

ここまでの現状を伝えながらも、「女子が強さやスピードの生物学的違いについて反対しようとするとき、それは偏見とみなされる」と考えていたセリーナさん。それでも、コネチカット州の2人のトップ女性ランナーと共に、公正な競技に女性の権利を求めた連邦訴訟を起こした。

動画はPragerU公式サイトの他、YouTubeでも配信され、現在80万回以上再生され大きな反響を呼んでいる。セリーナさんは「これは性同一性の問題ではありません。フェアプレーの問題です」という言葉で動画を締めくくっている。運動能力に対しての公平性はどう保つべきだろうか。

※2022年7月21日追記(FINDERS編集部)

主に民事訴訟に関する話題を取り扱うニュースサイト『Courthouse News Service』が2021年4月に公開した記事によれば、セリーナ・ソウルさんらが、キリスト教系団体のthe Alliance Defending Freedom(主にクリスチャンを対象とした権利保護を行う団体としているが、同団体のWikipediaには「LGBTQの人々の権利と保護を阻止することに焦点を当てたアメリカの保守的なキリスト教の法的擁護団体」との記載もある)とともに行った、2名のトランスジェンダー女性の出場禁止を求める訴訟は棄却となった。

訴訟を受けた2名の選手はすでに高校を卒業していることや、その他に特定のトランス女性の選手が現れておらず、そもそも今回のセリーナさんらによる訴えが成立しないためだ。

また、2021年開催の東京五輪では史上初めてトランス女性の選手が出場し話題を集めた。東京五輪開催から1年が経過した2022年7月16日、『日本経済新聞 電子版』に原真子記者による「トランスジェンダー競技参加に次々制限 東京五輪1年」「トランスジェンダー選手の優位性 科学的解明は道半ば」の2本の記事が掲載された。

両記事によると、欧米を中心に女性競技シーンからトランス女性を排除する動きが強まっているという。各競技団体はそれぞれ、完全排除の他、血中のテストステロン(男性ホルモンの一種)量による制限、女性ホルモンの投与を始めた年齢による制限、などの独自のルール策定を行っているという。

しかし、多くのトランス女性の体重は生物学的な女性と比較して重い傾向にあるデメリットであったり、トランス女性が女性ホルモン投与開始後、どの程度の期間男性と同等の運動能力を維持できるのか、といった研究が十分になされていないのも現状だという。そもそもトランスジェンダーかつアスリート、という条件を満たす人の絶対数も非常に少ない。

さらに『NPR』による2021年6月公開の記事によればコネチカット州の陸上連盟が2013年にトランス女性の参加を認めて以来、選考に参加したのはわずか11人のみだという。そのため、トランス女性の存在が女性競技シーンに対してなんらかの影響をもたらすか否かという議論をするには、まだまだデータが足りていないということは付け加えておきたい。


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