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“ビックリ建築”が放つ現代社会へのメッセージ 白井良邦(ビックリ建築探求家)【連載】テック×カルチャー 異能なる星々(17)
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  • 2020.11.26
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“ビックリ建築”が放つ現代社会へのメッセージ 白井良邦(ビックリ建築探求家)【連載】テック×カルチャー 異能なる星々(17)

加速する技術革新を背景に、テクノロジー/カルチャー/ビジネスの垣根を越え、イノベーションへの道を模索する新時代の才能たち。これまでの常識を打ち破る一発逆転アイデアから、壮大なる社会変革の提言まで。彼らは何故リスクを冒してまで、前例のないゲームチェンジに挑むのか。進化の大爆発のごとく多様なビジョンを開花させ、時代の先端へと躍り出た“異能なる星々”にファインダーを定め、その息吹と人間像を伝える連載インタビュー。

すべての始まりは、“謎のUFO建築”との出合いだった。なんだこれは! 建築は決して、思い付きだけでは成し得ない。にもかかわらず、この地球上には常識を超えた実作が数多く存在している。球体が連なる泡状の家。『タイムボカン』シリーズのキノコ雲のような公共施設。巨匠の知られざる都市計画……。

運命の稲妻に導かれ、突如として拓けた“ビックリ建築”探求の道。ブラジル、キューバ、フランス、フィンランド、ジョージア(旧グルジア)etc.。二十余年に渡る旅の成果となる書籍『WONDER ARCHITECTURE 世界のビックリ建築を追え。』を発表したビックリ建築探求家の白井良邦に、“建築”に留まらない奥深き魅力と、同書に託したメッセージを聞いた。

聞き手・文:深沢慶太 写真:織田桂子

白井良邦(しらい・よしくに)

ビックリ建築探求家/編集者。1971年、神奈川県生まれ。1993年にマガジンハウス入社。『POPEYE』『BRUTUS』編集部を経て、『Casa BRUTUS』には98年の創刊準備から関わる。2007年~16年、同誌にて副編集長。建築や現代美術を中心に「安藤忠雄特集」、書籍『杉本博司の空間感』、連載「櫻井翔のケンチクを学び旅」などを担当。2017年より、せとうちホールディングス執行役員 兼 せとうちクリエイティブ&トラベル代表取締役。客船「ガンツウ」など瀬戸内海での富裕層向け観光事業に携わる。20年夏にアプリコ・インターナショナルを設立。出版の垣根を越え、様々な物事を“編集”する事業を行う。同年10月、著書『WONDER ARCHITECTURE 世界のビックリ建築を追え。』(扶桑社)が刊行された。

謎のUFO住宅『フトゥロ』との出合いが運命を変えた

ーー 白井さんは『Casa BRUTUS』で副編集長を務めるなど、建築やデザイン、カルチャー方面の編集者として活動してこられましたが、このたび“ビックリ建築探求家”という肩書きで、『WONDER ARCHITECTURE 世界のビックリ建築を追え。』を上梓されました。どのようないきさつで、ビックリ建築探求家を名乗ることになったのでしょう?

白井:まずは、私とビックリ建築の出合いからお話しします。すべての始まりは、フィンランドで60年代につくられたUFO型住宅『フトゥロ』の写真を目にしたことでした。1998年、まだインターネットが発達していなかった頃の話で、北欧デザイン特集のネタ集めのために図書館で洋雑誌をめくっていたのですが、一目で「なんだこれは!」という衝撃が駆け抜け、ぜひ実物を見てみたいという想いにとらわれたのです。

『WONDER ARCHITECTURE 世界のビックリ建築を追え。』紙面より、マッティ・スーロネン『フトゥロ』(1968年)© Matti Suuronen/Museum of Finnish Architecture 

ーー 『Casa BRUTUS』は当時、何号にもわたって『フトゥロ』の謎を追いかけていましたが、もしやそれは……。

白井:私の仕業です(笑)。私自身、『Casa BRUTUS』の立ち上げ当初は建築についての知識もなく、難しくてお固い世界だと思っていたのですが、「こんな得体の知れないものもあるのか!」と興味が湧いてきて、フィンランドで建築家や研究者に取材したり、日本に輸入された『フトゥロ』2軒のうち廃屋になっていた1軒を買い取って、見学会を開催したりもしました。

『Casa BRUTUS』での見学イベントを経て、前橋市のフェリカ建築&デザイン専門学校に移設された『フトゥロ』。写真:白井良邦

ーー それにしてもなぜ、こんな形をしているのでしょう。意匠を超えた、機能的な理由があるのでしょうか。

白井:『フトゥロ』が誕生したのは1968年、この年にはスタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』が公開され、その翌年にはアポロ11号が人類初の月面着陸を成し遂げるなど、スペースエイジのまっただ中でした。人々の関心は宇宙へと向けられ、家具・商業空間などでは、球体や曲面をモチーフとする近未来的なデザインが人気を呼びました。その時代を象徴する際たる例が、この『フトゥロ』なんです。実際、直径8メートルもの住居を実際に生産した例は他にありません。FRP(繊維強化プラスチック)のユニットを組み立てて、どんな所でも設置できるというコンセプトで世界中へ輸出され、40~100軒ほど生産されたようです。残念ながら73年のオイルショックでプラスチックの価格が高騰し、生産中止になってしまいましたが…。

次ページ:外観だけに留まらない、“ビックリ建築”の魅力とは

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