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ヒカキンも石橋貴明も等しく「熱量」が成否を分ける戦場。YouTube放送作家 白武ときおが見つめるメディアのフロンティア
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  • 2020.09.18
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ヒカキンも石橋貴明も等しく「熱量」が成否を分ける戦場。YouTube放送作家 白武ときおが見つめるメディアのフロンティア

霜降り明星、ぺこぱ、江頭2:50、ロンドンブーツ1号2号、神田伯山、長州力、デーブ大久保……などなど、名前を挙げるときりがないほど、去年から今年にかけて多くの芸能人がYouTubeに参入、自身のチャンネルを開設し話題を呼んでいる。

若手からベテランまで年齢層も幅広く、お笑いだけでなく伝統芸能やスポーツ界なども巻き込んだ潮流になっており、直近だと今年6月にとんねるずの石橋貴明が「貴ちゃんねるず」をスタート。3カ月で登録者数130万人を突破し、YouTuberとしてもその存在感を示した。このまま、メディアの王様として君臨していたテレビから、YouTubeへと覇権が移っていくのだろうか。

テレビ、ラジオ番組に携わりながら、数多くのYouTubeコンテンツ制作に関わる放送作家、白武ときおが8月に発表した初の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)には、ムーブメントの第一線で活躍する著者の実感に基づく分析と、自身の仕事術が詰め込まれている。

新型コロナの影響も受けながら進んでいるメディアのパラダイムシフトについて、白武に語ってもらった。

取材・文:張江浩司 写真:加藤岳

白武ときお

1990年、京都府生まれ。放送作家。担当番組は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)『霜降りミキXIT』(TBS)『霜降り明星のあてみなげ』(静岡朝日テレビ)『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』(TBSラジオ)『かが屋の鶴の間』(RCCラジオ)。YouTubeでは「しもふりチューブ」「みんなのかが屋」「ジュニア小籔フットのYouTube」など、芸人チャンネルに多数参加

YouTubeは「片手間」がバレてしまう

白武が構成作家として関わっている、霜降り明星のYouTubeチャンネル「しもふりチューブ」の動画

学生時代から放送作家としてテレビ業界に飛び込み、23歳で年末特番「絶対に笑ってはいけない大脱獄24時」(日本テレビ)に参加。バラエティーのど真ん中にいた白武がYouTuberの存在を意識し始めたのもちょうどその頃だという。

「2013年くらいにヒカキンさんやはじめしゃちょーさんの名前を頻繁に目にするようになって、YouTube投稿を仕事にしている人がいるんだなと認識しました。その翌年に『好きなことで、生きていく』というキャンペーンが始まりましたよね。
自分の周りにも動画を投稿している仲間もいたんですが、そのプラットフォームがニコニコ動画からYouTubeに移行していくことを感じて、興味深く見ていました。ちょくちょくチェックしていたんですが、改めて見てみると、ヒカキンさんのヒューマンビートボックスの動画なんかはやっぱり面白いしクオリティがすごいなと」

白武自身は2012年頃からYouTubeへ動画を投稿しており、メディアとしての特性を感じていたそうだ。

「当時手伝っていた芸人のライブの幕間で流す映像を制作していて、それをYouTubeにアップしていました。ライブはその現場にいる人たちで面白さを共有するものですが、どうしても人数が限定されてしまう。その点、YouTubeはどこにいても好きな時に見てもらえる。『これは面白いことができそうだな』と思いました」

継続的に仕事として関わることになるのは、「SunSetTV」。静岡朝日テレビがスタートさせたインターネットテレビ局で、ブレイク前の霜降り明星やAマッソの番組をYouTubeで展開していた。全国的に見ても、テレビ業界ではかなり先見的な取り組みだと言える。

立ち上げから参加し、自由に番組を作っていくうちにYouTubeのもう一つの特性に気付く。

「YouTubeはアーカイブ性が非常に高い。テレビは面白ければパッケージ版になるけど、基本的には一過性で放送後は消えてしまう。YouTubeは公開したコンテンツが残っていくので、途中から見始めた人も歴史を遡って楽しむことができますよね。
自分が高校時代にお笑いにのめり込んでいったのも、過去の名作を大量に観ることができたからですし、YouTubeならアーカイブに触れるハードルはもっと低いです」
「例えば『水曜どうでしょう』は北海道テレビで放送された後に各地のテレビ局で再放送され、番組が終了してからDVDが発売されることによって人気が爆発しました。テレビ放送時の瞬間風速が重要視されがちですが、アーカイブ化することで遅れて人気が出るものもあります。『ゴッドタン』(テレビ東京)も、DVD化されたり、Netfixなどで過去回が見られるようになっていますよね。これからコンテンツの人気の出方がより多様化していくと思います」

フワちゃんに続くYouTubeスターは

現在ではにわかに信じられないが、つい数年前まで芸能人のYouTubeコンテンツはYouTuberファンの反感を買いやすく、うまく視聴者数を稼ぐことができなかった。テレビ制作者と組んだ、地上波で流れていてもおかしくないクオリティの動画が、1万再生もいかずに終わってしまうことが珍しくなかった。

「YouTubeは作り手の熱量がダイレクトに視聴者に伝わるので、『テレビの片手間でやってる』、『スタッフから言われたからやってる』というスタンスだとそれがわかってしまうんです。
カジサックさんのようにYouTubeに向き合い、高い熱量が伝わってくるものが増えたことで、芸能人のYouTubeがちゃんと見られるようになってきたんだと思います。
『作り手自身が楽しんでやっている』ということも大切で、ヒロシさんや広瀬香美さんの動画からはキャンプや歌に対する愛情が伝わってきます」

ぺこぱチャンネルのように、iPhoneで撮った動画をほとんど編集もせず公開している短い動画でもコンスタントに再生され、多いものでは100万再生を超えている。「丁寧に編集し、目立つサムネイル画像を用意する」というYouTuberの常識を覆しているチャンネルだ。

「ぺこぱさんは物凄い人気があるし、何より2人の空気感が動画から伝わってきますよね。撮った素材をそのまま編集せずに出すというのは、テレビだとドキュメンタリーでもありえないことです。テレビでよく見るタレントの素や裏側が見られることに価値があります。
テレビに限らず、野球でもプロレスでも、本気で戦ってる人の裏側は見たいですよね」

芸能人が人気を集める一方で、YouTubeはそれまで無名だった一般人が脚光を浴びるという夢がある場所でもある。芸能人が増えると、こういったYouTubeドリームが成立しなくなるのではないか。

「コンテンツが増えていく中で、どうやって目立つかっていう戦略はもちろん必要ですけど、フワちゃんだってガーリィレコードだってほとんど無名の状態からスターになった訳で、いくらでも可能性はあると思います。
例えば『Naokiman Show』(都市伝説やオカルト扱うYouTuber)をよく観るんですが、ネタのセンス、語り口調、構成など、流石です。やっぱり動画にかける熱量が一番なんですよね。
YouTube以前にも、塾講師だった林先生が急に引っ張りだこになったり、ティーンファッション誌から藤田ニコルさんが出てきたように、テレビはどこの世界からスターが現れるかわかりません。これからフワちゃんに続くYouTuberはもっと出てくるでしょう」

フワちゃんが顕著だが、知名度を得たYouTuberがテレビやラジオでも活躍することも珍しくなくなった。「既存メディアからYouTubeへ」という単純な構図ではなく、両者が相互に作用し、大きなムーブメントを作っている。

「人口のボリュームが大きい高齢者層に向けて番組を作って、視聴率を獲得するというのがこれまでのテレビの作り方でしたが、徐々に若者に向けられるようになってきています。YouTubeやSNSとの連携はもっと密になっていくはず。
また、今年の秋から民放キー5局がテレビ放送とインターネットでの同時配信を始める予定です。スマホで見られることがYouTubeにとって大きなアドバンテージでしたが、テレビもスマホで見られることを前提に作られることによって、また関係性は変わっていくと思います」

次ページ:高校生時代の自分が楽しめるものを作っていきたい

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