EVENT | 2020/07/30

「フリーランスは不動産を借りにくい」を突破する新サービス。楽しく生きるために「ツールとしての不動産」を活用すること|山本遼(株式会社R65)

2015年に「65歳以上の高齢者向け賃貸物件情報サイト」であるR65不動産を立ち上げ話題になった株式会社R65の山本遼氏...

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2015年に「65歳以上の高齢者向け賃貸物件情報サイト」であるR65不動産を立ち上げ話題になった株式会社R65の山本遼氏。そんな同氏がこの6月末に新サービス「フリーランス不動産」を立ち上げた。高齢者と同様に「賃貸不動産が借りにくい」と言われるフリーランス向けに特化した物件情報サイトだ。

いずれも「不動産を借りたくても借りられない人がいる」という社会問題の解決の一助となるサービスだが、山本氏は「社会的なニーズと自分のやりたいことが合致した結果です」と語り、「自分のやりたいこと」がまず第一にあるということを強調する。

その言葉を裏付けるように、R65は次々と物件を自社で借り上げシェアハウスとして運営し(同氏もそのうちの1つに住んでいる)、今年に入ってからは「スナックニューショーイン」も立ち上げている。「自分が楽しいと思うこと」とビジネスを直結させているタイプだ。

フリーランス不動産の話を聞くと同時に、山本氏がなぜ起業したのか、何をしていきたいのかという話もうかがった。

聞き手・文:神保勇揮

フリーランスが賃貸物件を借りにくい理由(はあるのか?)

フリーランス不動産の掲載物件

―― フリーランス不動産が誕生した経緯を教えてください。

山本:僕らの会社ではR65不動産をやりつつ、シェアハウスも管理委託物件を含め12棟運営しています。僕もそのうちの1つに住んでいるんですが、入居希望の人に話を聞くと「フリーランスだと賃貸物件が借りにくくて」という理由の人が2~3割いたんです。

駆け出しの人も5年ぐらいやって稼いでいる人も同様のことを言っていて、ニーズがありそうだなと思って始めました。

―― 現在の掲載物件数はどれぐらいですか?

山本:6月末に開始したばかりで、まだ東京メインの15物件です。すでに入居希望の人からの連絡も結構ありますし、物件を自主管理している大家さんからの反響も来ていますね。

―― 今回、フリーランスのITエンジニアと企業をマッチングするサービスを手掛ける株式会社Lbose(エルボーズ)と事業提携されていますが、具体的にどんなことをされるのでしょうか?

山本:サービス開始時に懸念していたのが「自分たちがフリーランスの皆さんに認知拡大できるか」ということでした。Lboseさんにはその面でお手伝いいただき、自分たちは物件開拓を頑張ろうという役割分担をしていきます。

―― 「フリーランスは賃貸物件が借りにくい」とさまざまなところで語られますが、その根本の理由がいまいちよくわかりません。一体なぜなのでしょうか?

山本:僕も正直なところ、「何が根本的な原因か」というのはよくわからないんですよね…。

個人的には「フリーランスという働き方」が具体的にどういうものなのか、という認知が不動産業界で進んでいないと感じます。大手の仲介会社でも「フリーランスの人が来たら断るか、敷金を1カ月分積み増ししましょう」みたいなマニュアルがあるとも聞きます。「フリーランスは特に家賃の滞納率が高い」というデータがあるわけでもないですが、担当者個人がたまたまフリーランスの方の家賃滞納を経験した時に「やっぱりフリーランスは会社員より面倒だな」という悪印象が強く残ってしまっているからかもしれません。

ただ、それでも自分たちとしてはそれよりもハードルが高いR65不動産を何年もやってきましたし、そこまで難しくはないだろうなと思ってやっています。

―― R65不動産の方ではNECと開発した見守り機器を導入したり、不動産オーナー・管理会社向けの保険サービスなども設けて不安解消のためのケアをしていますが、それでもやはり大家さんの理解を求めるのは難しいのでしょうか。

R65不動産とNECが共同開発した見守り機器

照明内の人感センサーで高齢者の動きを把握し、動きが長時間なければ見守り社にメール通知が届く

山本:そもそも「高齢者OK」という賃貸物件が市場全体の5%ぐらいしかないですし、入居希望の審査に出しても業界全体では通過率は30%を切ってしまっているのが現状です。R65不動産の掲載物件ですと通過率は80%ほどを保てていますが、サイトに掲載していない物件でも管理会社に直接連絡してつなぐこともあり、さまざまな物件をご紹介できるように努めています。

僕も一応大家の立場でもあるので、「できれば避けたいな」という気持ちもわからなくもないんです。今回のコロナ禍で、会社で運営しているシェアハウスの家賃支払いを少し待ってくださいと言ってきたのは確かにフリーの子たちでした。でも、大抵はその後ちゃんと払ってくれますし、そこまで大きな問題だとも思っていません。

―― 山本さんの話をうかがっていると、「お金にならないこと」でもしっかり取り組んでいるという印象を受けます。株式会社R65全体としては、どのように収益を上げているのでしょうか?

山本:R65不動産の掲載料や仲介手数料などで半分、自社管理しているシェアハウスからの売上が半分という感じです。忙しいですけど結構安定はしてきましたね。

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