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批判殺到「GoToキャンペーン」はどうすれば良かったのか。制度の改善策と「観光産業の生き残り戦略」を木下斉さんに聞く
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  • 2020.07.22
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批判殺到「GoToキャンペーン」はどうすれば良かったのか。制度の改善策と「観光産業の生き残り戦略」を木下斉さんに聞く

Photo By Shutterstock

政府が本日22日から開始する「Go To トラベルキャンペーン」。周知の通り政府・政治家の一挙一動すべてに批判が殺到し、賛成派と反対派の溝は埋まりそうにもない。

反対派の言い分も十分わかるが、その声が盛り上がれば盛り上がるほど「観光産業の事業者たちはどう感じているのか」という現場の声はかき消され、「どんな制度であれば問題点が減らせたのか」、「コロナ禍に苦しむ事業者はどのように生き残ればいいのか」という建設的な議論からは遠ざかってしまっているのも事実だろう。

そうした中、長年にわたって「補助金漬け」の構造を生む地方創生プロジェクトを批判し、自立した民間企業が地域再生を主導するための手法を説いてきたエリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏が、7月16日にnote記事「GO TOキャンペーンは、まずは地元割財源として都道府県に支給し、そのかわりに各都道府県は県内割に割り当てるはずの予算を別用途で活用させるのが良い。」を公開した。タイトルそのままの非常に興味深い提言となっており、ぜひもっと詳しい話を聞きたいと思い、緊急インタビューを実施した。

聞き手・文:神保勇揮

木下斉

エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

1982年生まれ。早稲田大学高等学院在学中に全国商店街合同出資会社の社長就任。早稲田大 学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。熊本、小倉、札幌、愛 知などで補助金に頼らぬ稼ぐ地域再生事業会社への設立支援や投資を行うと共に、政策立案、事 業連携を目的にした一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学等と開校、300名以上の修了生を 輩出、100以上の事業に繋がっている。著書に「地元がヤバい...と思ったら読む地域再生入門」「地方創生大全」「稼ぐまちが地方を変える」など。内閣府地域活性化伝道師なども務める。

「コロナにかかったら地元に住めなくなる」と思い詰める地域に今から旅行できるのか

木下斉氏

―― 率直に、Go Toトラベルキャンペーンをどう思いますか?

木下:すでに一部の自治体が先行して「県内割(地域住民のみが利用できる旅行クーポン)」を始めていたこともあり、最近では自分が知っている人気の宿だと、近隣エリアの人が車で遊びに来るような感じで徐々に予約が戻ってきたところがあったんですよ。この半年ぐらい、娯楽費をほぼ使ってこなかったという人も多かったと思いますし。

「県内割」の一例。北海道が実施している道民限定の「どうみん割」ではホテル代金や日帰りアクティビティなどの料金が割引となる

コロナ禍でダメージを受けた観光業界を救いたいという政策意図はわかるんですが、賛否両論が二分してしまった段階で旅行に行きづらくなり、むしろ逆効果になってしまっていますよね。自分なりに対策をしつつ「行きたい人は勝手に行く」というような枠組みだったはずが、普段より多くの人に行ってほしいと欲を出してしまったことで全員が行きたくなくなってしまったというか。

首都圏の人にとってはあまり実感がないかもしれませんが、例えば熊本市では7月20日に1カ月ぶりぐらいの陽性患者が1人出たんですけど、それだけで「市内のイベントを全部中止にしなきゃマズいかも」という議論が起こっています。そうした空気の中で新型コロナに感染してしまうと「地元に住めなくなってしまうんじゃないか」という危機感を抱いている人は少なくないと思います。

―― 通信社・新聞・テレビでも行政発表たれ流しなのか知りませんが、ほとんど個人特定ができちゃうだろうというレベルで感染者の職業・年齢・行動歴を報道してしまうメディアがあるのが本当に酷いですね。

木下:個人のプライバシーを完全無視することが正義で、SNSでは「心配だからもっと詳しく教えろ!」とまで書かれる集団ヒステリー状態になってしまってますね。

今回のコロナ対策では知事が堂々と「県をまたぐ移動をしないでほしい」などと言っています。感染症対策という意味では一つのやり方だと思いますが、人々の移動に関する権利などを踏まえると本来はナーバスな話にもかかわらず、テレビに出て堂々と発言し、それが喝采を浴びてもいるわけです。そうした政治家・メディアが発信するメッセージを浴びてきた地方の人たちがどれだけ不安に駆られ疑心暗鬼に陥ってしまっているかということを、おそらく政府の人たちは捉えきれていないんじゃないでしょうか。

次ページ:「その支援が新事業や経営改善に結びつくのか」という視点も重要

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