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福岡発のフィンテック企業が、世界へ発信! ターゲットは銀行口座を持たない25億人。ドレミングが救う世界経済の未来とは?
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  • 2018.06.20
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福岡発のフィンテック企業が、世界へ発信! ターゲットは銀行口座を持たない25億人。ドレミングが救う世界経済の未来とは?

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ここ数年、IT技術を駆使した金融サービスとして注目を集めるフィンテック。昨年末には三菱UFJファイナンシャル・グループが独自の仮装通貨を今年度中に作ることを発表。最近では、6月にエイベックス・グループがフィンテック事業への参入することを発表したばかりだ。また、ベンチャーのフィンテック企業が海外進出するケースも増えている。

法規制はさておき、便利な金融スキームが次々登場し、競争が激化すれば、銀行の存在自体が不要になるとさえ言われている。ということで今回紹介したいのは、開発拠点を福岡に置くフィンテック企業「ドレミング」。

同社は、日系フィンテック企業としては初めて、世界有数のロンドンの金融セクターの中心にあるオフィスビル「レベル39」に進出。世界中にフィンテックの推進を進めるイノベート・ファイナンスに入会が認められたベンチャーとして話題になっている。現在、営業拠点を東京、ロンドン、サンフランシスコ、シンガポールほか2カ国に置くドレミング代表の高崎将紘さんに話を伺った。

構成・文:庄司真美

給料の“日払い” システム「My給」がフィンテック事業のきっかけ

―― 阪神・淡路大震災をきっかけに勤怠管理システムを開発するキズナジャパンを起業し、その後、さらに会社を新設し、勤怠管理をはじめ給与計算と振込のワンストップサービスを提供する「Doreming」を開発していますが、その経緯について教えてください。

高崎:そもそもドレミングの前身の会社であるキズナジャパンの創業者は父で、料理人から転身し、兵庫でモスバーガーのフランチャイズの運営を開始しました。やがて3店舗まで展開できた頃、阪神・淡路大震災に遭ったのです。従業員も常連客も大変な被害に遭い、混沌を極めるなかで売上も落ち込みました。

それから当時、経営者としてもっとも手を焼いていたのが、従業員の勤怠管理。手書きで集計するため、毎晩夜遅くまでかかる、とても非効率なものでした。それを一貫してできるシステムがあればいいなと考えて、アルバイトの勤怠管理システムの開発を始めました。

開発した勤怠管理システムは堅調に伸びましたが、2008年にリーマンショックが起こります。それにより、正社員だった人が職にあぶれ、家のローンさえ払えなくなり、ネットカフェ難民に陥る人が現れました。私たちが提供する勤怠管理システムのエンドユーザーにもそういう人がたくさんいたのです。阪神・淡路大震災のときの状況が思い起こされ、今こそ困っている人を助けられる仕組みはないかと考えました。

そんな状況下では、ほとんどの人が「給料日まで待てない」と口を揃えました。働いて得た日給でその日の生活費を捻出するような生活なのに、給料日までお預けです。でも、それはあくまで会社側の都合。本来であれば、労働者は働いた分の報酬を受け取る権利があるのです。そこで、働いた分だけ会社の口座から従業員がお金を引き出せるシステム「My給」を開発することにしました。それが、弊社のそもそものフィンテック事業の原点です。

世界の全人口の3人に1人は銀行口座を持たないという事実

紆余曲折の末、高崎さんは上述した「My給」を進化させて、勤怠管理や給与計算、振込をワンストップで提供するシステム「Doreming」を開発。そのきっかけは、ベトナムの企業にシステムを導入したときのこと。日本人にはピンと来ない話だが、世界には銀行口座を持たない人が25億人もいるという。世界の全人口が約70億人とすると、実に3人に1人は銀行口座を持たない人たちだ。高崎さんはその事実を知り、衝撃を受けたという。

高崎: 2013年に初めて「My給」のシステムを海外のクライアントに導入しました。そこは、ベトナムにある従業員4,000人を抱える半導体の工場でした。「My給」のシステムは銀行口座が必要ですが、そこでは、給料は現金手渡しが基本。なぜなら、従業員のほとんどが銀行口座を持っていなかったからです。このとき、日本では当たり前のことでも、海外では銀行口座を持たない人の方が圧倒的に多いという事実を知りました。

労働者救済のための「My給」開発にあたり、主要株主から猛反対に遭ったが、すべての株を買い取り、一気に1億円以上の借金を背負うことになってでも開発を敢行した。

日本の消費者金融の金利は18〜20%、イギリスではなんと800〜1,000%!

高崎氏はその後、その課題を解決するために、「My給」のシステムを応用して、従業員が働いた分の給料が受け取れる「Doreming」の仕組みを開発する。その開発の背景には、給料日前になるとベトナムの工場前に現れる怪しい風貌のインフォーマルベンダー(消費者金融)の姿を目にしたことだという。

高崎:彼らは銀行口座を持っていませんが、ケータイは持っています。給料日を待たずに働いた分の給与はいつでもケータイにチャージでき、それを街で生活費などの支払いに使える仕組みです。

開発の背景としてあるのは、まだまだ給与水準が低いベトナムの工員たちが、給料日前にインフォーマルベンダーからお金を借りずに済むようにすることでした。たとえば、家族が病気になるなど、まとまったお金が必要になったとき、銀行口座がなければ融資を受けられないし、クレジットカードも使えません。そうなると、インフォーマルベンダーから借りるしかなくなるのです。

ここで問題なのが、法外な金利です。今、日本で消費者金融からお金を借りると、平均的な利子は年利18〜20%。一方、ヒスパニック系の移民を中心に銀行口座を持たない人が多くいるアメリカでは、給与を担保にした“ペイデイローン(※)”で借りた場合、その金利は、なんと300%です。あり得ないですよね(笑)。つまり、3万円借りると、9万円返さなければならない計算です。イギリスの場合はさらに途方もなく金利が高くて、実に800〜1,000%です。

(※)ペイデイローン:失業者や十分な資金のない起業家、または貧困状態にあり、商業銀行からの融資を受けられない人々を対象とする、非常に少額なローンサービスのこと。

―― イギリスの場合、3万円借りたら、24〜30万円返す計算ですね……!

高崎:はい。さすがにそれではまずいだろうということで、今年、イギリスの金融庁は金利の上限を100%ぐらいに止めるよう求めたのですが、その後の英国フィンテック企業・サラリーファイナンスとの意見交換では、結局ペイデイローンの利用者は、平均600%の金利で借りている人が多数だという現実が明らかになりました。

法治国家のイギリスでさえそうした現状なのに、当局の管理が追いつかないベトナムの場合、法外な高金利や人身売買の温床になるなど、深刻で大きな問題です。まじめに働く彼らを助けるべく、そうした問題を解決できないかということが、私たちの事業の根幹にあります。

仮にどうしても銀行からの融資を受けたいとき、口座を持たない金融弱者は何の担保も持たないので金融機関からの信用が低いです。でも、「Doreming」にどれくらいまじめに働いてきたかという履歴をはじめ、平均月収がわかることで、支払い能力や融資の上限金額が見えて、融資するときの審査材料にもなります。

働いた分だけケータイに給料がチャージされて街でも使える「ドレミング」の画期的なシステム。

労働者に優しい給与システムが欧州の移民問題をサポート

―― ドレミングのシステムでは、どこから手数料を得るのですか?

高崎:前提として、「Doreming」は、そもそも労働者を救済するためのシステムとして開発した経緯があるので、彼・彼女らから手数料は一切取らないスタンスです。さらに、企業に対しては、労働者に優しい会社になってほしいという思いがあり、現在は使用料をとらずにシステムを導入いただくことを考えています。

収益源は、労働者が買い物をしたときの決済手数料です。デビットカードやクレジットカードといった金融機関もレベニューシェア(※)を通じて、銀行口座を持たない人たちにまで商機を広げられるメリットがあります。

(※)レベニューシェア:アライアンス(提携)手段のひとつ。支払い枠が固定されている委託契約ではなく、パートナーとして提携し、リスクを共有しながら、相互の協力で生み出した利益をあらかじめ決めておいた配分率で分け合うこと。




高崎:実際に、国内に5万人規模の コールセンターを持つ企業への導入実績がありますが、ここでは、経営者目線で公平に従業員を評価し、給与のやりとりがきめ細かくスムーズなシステムになっています。

たとえば、飲食店で働く人に対しては、ランチタイムなどの混雑する時間帯は労働もハードなので、ピーク時は給与を割増することも可能です。また、国内のコールセンターでは、せっかく従業員を雇って一から教育しても、クレーム処理をした直後に辞めてしまうケースが多いそうなんです。それならば、たとえばクレーム処理をした分、インセンティブを付与するシステムにすれば、従業員のモチベーションも離職率も変わってくるでしょう。

―― ロンドンで行われたフィンテックのグローバル・サミットで「Doreming」のシステムを発表したところ、欧州諸国からもかなり反響があったということですが、その背景は?

高崎:弊社では、世界で働く人の収入を増やし、貧困格差をなくすことを目的に始動していて、GDPの低いアジアやアフリカ、南米の国々への支援を通じて経済成長を促進したいというのが、理念です。そうした理念に共感いただき、世界にも例がない、労働者に優しい給与システムということで、国際連合やノーベル平和賞受賞者ヌハマド・ユヌス氏からも高い評価をいただきました。ロンドンのグローバル・サミットに参加後、欧州諸国からの問い合わせが殺到したのは、ちょうど難民問題をめぐる“ファイナンシャル・インクルージョン(Financial Inclusion)(※)”の気運が高まっていたからです。

(※)ファイナンシャル・インクルージョン:あらゆる人々が生涯にわたり経済的に安定した生活を営むことができるよう、金融の知識やノウハウ提供、金融サービスへのアクセスなどの支援を行うこと。

欧州に押し寄せた難民の多くは、銀行口座を持っていません。やがて職を得て自立することを考えたときに、「Doreming」のシステムが役立ちます。さらにまじめに働いて労働履歴を残せば、金融機関に示す信用材料にもなると考えています。

グラミン銀行の創設者としてノーベル平和賞を受賞した、ムハマド・ユヌス博士からも激励を受けている。

世界中のフィンテック企業が集まるオフィス施設「レベル39」に進出

グローバルに展開するドレミングは、ロンドンにも進出している。同社が入居する「レベル39」は、世界有数の金融セクターを持つロンドンの“Tech City”構想の象徴である、新金融街“カナリー・ワーフ”に位置する。その中でもひときわ目立つ超高層ビルの39階にあるコワーキングスペースが、「レベル39」だ。世界中のフィンテック関連企業からのオファーが殺到する「レベル39」に、ドレミングは日系フィンテック企業として初めてオフィスを構えている。


―― 「レベル39」にオフィスを構えることができた経緯は?

高崎:世界には銀行口座を持たない人が数多くいるので、「Doreming」開発当初からグローバル展開を視野に入れていました。それならば、世界金融をリードするイギリス、それもフィンテック企業が集まるロンドンの「レベル39」しかないと思っていました。もちろん、そう簡単に入居できたわけではありません。

実際、ロンドンのインキュベーションセンターを通じて物件を探していたときに、「どこでも紹介できるよ」といわれたものの、いざ「レベル39」の名前を挙げると、「ほかのところはいくらでも紹介できるけど、そこだけは紹介できない」とあっさり断られました(笑)。後々分かったのは、1万社以上の世界中のフィンテック企業からオファーが殺到しているとのことで、無理もありません。

半ば諦めていたところ、たまたまイギリス大使館が「レベル39」の公開視察を開催していて、それに参加しました。そのとき、「レベル39」を管轄するチームにたまたま会い、ドレミングのビジネスモデルについて直接猛アピールすることができたのです。その後、個別にチームメンバーとメールでやりとりして、ようやく審査に進んだ経緯があります。

最終的に決定打となったのは、金融弱者からは手数料をとらず、労働者の立場に立ったほかにはないサービスであったこと。当時、「レベル39」に入居していたフィンテックのスタートアップの事業は、富裕層向けのサービスばかりでした。金融弱者の労働者から手数料をとる仕組みがほとんどだったので、弊社のサービスがとりわけ目立ったのです。「まさかうちのような名もない会社が入れるなんて」と、私自身も驚きましたが、大手企業でさえそう簡単には入れないこともあり、日本の金融庁もからもお問い合わせをいただいたほどです(笑)。

―― 日本と海外のフィンテックの違いはどのあたりにありますか?

高崎:弊社は各国でのさまざまなテック系のサミットに参加していますが、日本も海外も、ベンチャーにそれほど大きな違いはないと考えています。サンフランシスコにも進出していますが、現地で感じるのは、本当に優秀なスタートアップほど閉ざされていて、自社の独自の情報網や人脈をたやすく開示しないことですね。

フィンテック事業の一番の鍵となるのは、レギュレーターである金融庁です。その点、日本の場合は前例のない提案をすると、まずはガチガチに規制で固められて、「そのうえでやってくださいね」となってしまいます。それではイノヴェーティブな仕組みは生まれません。

一方、世界金融をリードするイギリスでは、コラボレーションなどで柔軟な仕組みが作りやすいのが特徴です。新しい仕組みを作るときは、まずは特区として“サンドボックス(砂場)”を設けて、問題の有無を検証します。そこでなにか問題があれば、法規制を敷く流れです。こうしたエコシステムを世界に先駆けて始めたのが、イギリスなんです。この違いは、フィンテック企業にとってはかなり大きな部分です。

―― 誰もが銀行の個人口座を持つ日本での「Doreming」の需要についてはどのように考えていますか?

高崎:現在、日本では非正規雇用が急増していて、3人に1人とも言われています。2050年には2人に1人になる(※)という話もあるほどです。となると、ますます労働者向けの勤怠管理・給与システムの需要が高まると考えています。

※厚生労働省による2014年の「就業形態調査」では、民間事業者に勤める労働者のうち、非正規社員の占める割合は40.5%に達し、初めて4割の大台を超えた。

たとえば、アルバイト募集で好条件として響くのは、ランチの補助の有無。採用が売り手市場の今、どんなに時給を上げてもアルバイトが集まらずに困っている企業もたくさんあります。そこで、出勤した分だけランチの補助をスムーズにできるシステムを提示すれば、働く人のモチベーションにも、採用する企業にとってもメリットがあると考えています。

―― 昨年メガバンク3行が大規模なリストラを敢行したり、優秀なバンカーが外資やフィンテックのスタートアップに流れたりしていると聞きますが、今後の動向についてはどのように捉えていますか?

高崎:昨年12月に、三菱UFJファイナンシャル・グループが2018年度中に独自の仮想通貨を導入すると発表しましたが、ようやく本腰を入れ始めたんだなという印象です。

考えてみると、これまでの銀行の金融サービスは非効率なものでした。日本の場合、口座ひとつ作るにしても、手続きにはさまざまな書類が必要で、たとえば海外に送金するとなると、3営業日はかかるうえに、手数料も中間業社へのマージンが必要になるから、かなり割高です。

EUやイギリスの場合、今年からオープン・バンキングが義務づけられ、大手銀行がフィンテック企業とも連携し、ユーザーの利便性を高めています。たとえば、イギリスのメガバンクであるバークレイズの口座を持っていながら、より手数料の安い「TransferWise」を使って海外に送金することができるのです。日本でもそうした競争原理を上手に金融にも取り入れていかないと、銀行はいずれ消滅するでしょう。

日本では現状、給与は銀行口座への振込か現金手渡しですることが法で定められているので、給料日前になるとATMが混み合う状況は変わりません。弊社では、福岡市のグローバル創業・雇用創出特区で、ドレミングのシステムを実際に使ってみる実験も始めています。現在、サウジアラビアに滞在することが多いのですが、スマホで給与を受け取り、現金を持たずにそれをそのまま街で使えれば、もう暑い中、長時間ATMや金融機関の窓口に並ぶ必要もなくなります。


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