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ネットの「みんなの声」って本当に信用できる? 田代祭、川崎祭、コイル祭から得る教訓【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(12)
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  • 2020.05.22
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ネットの「みんなの声」って本当に信用できる? 田代祭、川崎祭、コイル祭から得る教訓【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(12)

リテラシーの高い2ちゃんねらーが見つける格好のおもちゃ

Photo by Shutterstock

2003年だと思うのだが、一緒に雑誌「テレビブロス」の仕事をしていた女性ライターが「これ、無茶苦茶面白いよ!」とPCの画面を見せてくれた。そこには多数の女性が並んでおり、投票された数字がついている。

クラリオンガールの投票事務局は、ネット投票を開始した。この頃は「ネットで投票します」と宣言すれば「すげー! 来てるね、未来!(ラーメンズのコント風)」となったものである。主催のクラリオン社としては、ネットユーザーの善意を信じたのだろう。だが、この女性ライターがゲラゲラと笑っていた理由は票数の多い人々を見たらすぐに分かった。

率直な言葉で述べるのだが、軒並み票数が多かったのは「デブ」「ブス」「女装している男」だったのである。もういちいち「ポリコレ的に問題」だの「差別」だの言って欲しくないのだが、明らかにそうなのだ。この女性ライターにしても、この3種類の人物への投票数が軒並多いことを面白がっているわけで、女性の視点からしてもこの投票は異常だった(面倒くせー、こんなことイチイチ補足するの)。

私も2020年の今、「デブ」「ブス」「女装している男」なんて言葉は書きたくはなかったのだが、2003年の当時はこの投票をめぐりネットでは散々嘲笑コメントは書かれていたわけで、あくまでも「時代性」ってヤツを報告していると思っていただきたい。

クラリオンが投票をネットにしたということは、「先端イメージ」を作りたかったことは容易に想像できるが、彼らはネットユーザーがいかにバカで暇かを分かっていなかったのだろう。ネットなんてものは、「遊び場」になればいいのである。だからこそ、2ちゃんねるで「クラリオンガールがこんな投票やってるぜ(笑)」「よーし、荒らしてやるか。ブスを1位にしてやろうぜ」といった動きがあったのだと思われる。このネット投票は最終的な判断にはつながらない、という予防線を張っていたため、結果的にこの3種類の属性の人物が受賞はしなかったが、もしも予防線がなかったら……。

実に面白い展開になっていたではないか!

何しろ当時のネットに書き込まれるものの多くはネットリテラシーが高い2ちゃんねらーによるものが多かったわけで、こうした「おもちゃ」を見つける能力は実に高かった。だからこそ「田代祭」「川崎祭」を(運営側の“大人の判断で覆す”ところまでは)完遂できたわけだし、クラリオンガールについても一斉に謎の一体感を発揮して特定の誰かを勝たせる直前まで持っていくことはできた。

私自身、2009年に自著『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)で、「ネットの民主主義や善意には期待するな」と述べたが、この3つの祭りを見てそのセオリーの端緒は分かったのかもしれない。

次ページ:投票企画する側は結果が偏るとおいしい

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