CULTURE | 2020/05/22

ネットの「みんなの声」って本当に信用できる? 田代祭、川崎祭、コイル祭から得る教訓【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(12)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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投票企画する側は結果が偏るとおいしい

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その後も、ネットでは「コイル祭」が発生。ポケモンキャラの人気投票を行い、得票数の多かったTOP3のキャラを壁紙としてプレゼントする、という内容だったのだが、どう考えても不人気キャラの「コイル」を1位にしようとする運動が発生。

この時は「Yahooきっずのポケモン投票でコイル一位にして消防ども泣かそうぜ」というスレッドが2ちゃんねるに立ち上がり、コイルに投票することにより「消防(小学生)」を泣かせようと呼びかけられ、多くの人がコイルに投票して結果暫定1位となった。運営側は途中から得票数を表示させない措置を取り、結果的にコイルは2位に。

この結果には多くの疑惑をもたらしたが、暇人が運営側と子どもたちをコケにしようと考えた大規模ムーブメントだったといえよう。あとは、アニメ『イナズマイレブン』に関する同様の投票では、「イナズマイレブンのキャラ人気投票で五条を1位にして子どもと腐女子泣かそうぜwww」が立ち上がり、明らかに悪役の「五条勝」を1位にする動きも開始。

提供される壁紙を五条にしたら「子供と腐女子」が泣く(※厳密に泣くわけではなく悲しんだりムカついたりすること)状況を作りたかったわけだ。

あとは2011年の「イケメンドミノ25コンテスト」もあった。これは、同社日本法人の25周年を記念し、ドミノの配達員とされる男性25人の誰から配達してもらいたいか、を投票してもらうもの。

No.15の太った男性が当初圧倒的1位になっていたが、これも前出・クラリオンガールと同じ状況だったであろう。その後、No.11のイケメンが突如として票を集める結果となり、不正投票疑惑が取りざたされた。同社はこれを否定したものの、その後「投票システムの不備」により、この投票を終了した。

ドミノピザについては「こいつらは“ネット受けを考えすぎている”」と以前ツイートしたらブロックしてきたので、このドミノのイケメンコンテストの不可思議な流れについては本当のことは分からない。実際にこの騒動は多数記事化されたため、No.15を意図的に入れたことと不自然なNo.11の躍進はPR的には“おいしい”状態だったかもしれない。

ドミノについては「壁ドン割り」など、「いかにもネットの皆さん好きですよね~」的な企画を次々と繰り出しているだけに、ネットに慣れたヤツが宣伝部にいるのだろう。まぁ、ほどほどに炎上しない感じで企画を立ててくれ。

ここで述べたいのは、正直ネットの投票企画というものは基本クソである、ということだ。こうした投票企画をする側は、結果はどうでもいいと考えている。偏った結果になればなるほど「おいしい」と思うし、「田代祭」「コイル祭」などを振り返っても、どうしようもないヤツがトップになればなるほどアクセス稼ぎはできるし注目度は上がる。

ネットの調査の精度が上がった――といった意見はあるものの、まだ2020年5月段階で私はあまり信用していない。


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